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普通の高校生とヴァンパイアの四季  作者: 湯西川川治
最期の冬の話
201/226

笑顔で祝われちゃってください 4

     4


 美菜ちゃんが去った後、今度は鮫ちゃんがやってきた。

「何この世の終わりのような顔してるんですか」

「僕にとってはもうこの世の終わりだから」

「まったくもう、人のことばっかり構ってるからこんなことになっちゃうんだよ」

 おっしゃる通りで、ぐうの音も出ない。でも、鮫ちゃんが続けてとても明るい声を出してきたので項垂れた顔を上げると、彼女は胸を張っていた。

「まあそれが未広先輩のいいとこ。あ、私は説教するつもりないんだよ?」

 てっきり怒られるものだと思っていたから、少し拍子抜けする。

「みんなを悲しませないように、って、先輩は頑張りました」

 それどころか、いきなり僕のことを褒め始めた。

「調べても、動いても、全然手立てがなくて、自分のことよりも周りの吸血鬼のことにかかりきりで、私たちに頼ってくれないでひとりで何とかしようとして」

 鮫ちゃんから聞いたことのないような声で包み込まれて、動揺しつつも、少し震えるその声を察して、僕は受け入れた。


「——ひとりくらい、そんな先輩を労ってあげてもいいじゃないですか」

 

 破顔一笑。そんないつもの鮫ちゃんは、言葉通り、僕を心から労う。それは見方を変えれば弔いのような。


「ひとりくらい、そんな先輩を送り出してあげたっていいじゃないですか。だって、ずっとずっとつらかったんだから」


 鮫ちゃんの表情が歪んでいく。いや、視界が歪んでいるのは僕だった。ぼやける視界の向こうで、鮫ちゃんが笑っている気がした。

「未広先輩の泣き顔、スクープもんですね」

「号外禁止だよ」

「私の心のアルバムに仕舞っておきます」

 ハロウィンのこともあるから信じ切れはしなかったけど、でも、それこそ鮫ちゃんだからそれでいい。鮫ちゃんも美菜ちゃんもみんなも、最後までいつも通りで。それは本当にありがたかった。嗚咽を我慢しても涙は頬を伝っていって、鮫ちゃんはそれを指で拭ってから、僕に向かって宣言した。

「私は言うまでもなく、明日の誕生日に派手に祝う準備は出来てるから!」

 きっと有言実行だろうなあ、と思いながら、思わず笑った。そんな僕を見て鮫ちゃんもまた破顔した。

「まったく、私も恋愛感情くらいあった方が良かったのかな」

「あったら新聞部が修羅場と化すからやめてほしいな」

「でも美菜先輩にだったら勝てる自信あります!」

「根拠は」

「私の方が明け透けで積極的!」

「美菜ちゃんがいじけるからやめてほしいな」

 僕が苦い顔をして見せると、鮫ちゃんはからからと笑ってみせた。

 だから私からはこう言います。そして彼女はそう前置きをして、僕を送り出してくれた。


「——取材行ってらっしゃい、未広先輩」

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