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普通の高校生とヴァンパイアの四季  作者: 湯西川川治
最期の冬の話
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ドーピングでもなければ、恋仲になれないかもしれません 2

     2


「でもそれだと、神宮寺さんがあの鍵をつくったことに」

「総裁の側近なんですし、造作もないでしょう」

 首を傾げる僕に対して、影森ちゃんはそう言い放った。

 彼女の言い分としては。

 ヨモギグラスの箱に鍵をかけたのは神宮寺藍華。その鍵に使われたのはうちの生徒会印。どうしてかといえば、自分が載った新聞にそれが押してあったからだと。

「どうやって持ち出したのかなどは事情聴取の必要がありますが、それは未広先輩が助かった後でも足ります」

 神宮寺さんの仕業だという方向で話を進める影森ちゃんに、僕は待ったをかけるべく言った。

「じゃあ、神宮寺さんは敢えてそれを知ってて僕たちを転がしてたと」

「そうなりますね」

「本当にそうかな」

「先輩はあの先生の肩を持つんですか」

「いや、そうじゃないけれど」

「情が湧きましたか」

「いや……」

「犯人に情が湧く。立て篭もり事件とかの常道ですね」

 神宮寺さんのことを、味方ではないけれど、どこか敵とも思いたくない自分がいることがわかった。僕たちの邪魔をする存在が、神宮寺さんでなければいいのにな、と。

 神宮寺さんは吸血鬼もどきを人間にする方法を知っていながら、それを隠し、封印した。そして悩んでいる僕たちの前に現れた。もしかしたらその様子を見て笑っているのかもしれない。

 けれど、僕にはその可能性があまり高いようにも思えない。それは、少しでも一緒に過ごしてきてこそ感じることだった。

 最近の神宮寺さんはこの学校にもう何年も前から居たかのような馴染みっぷりで、千佳子先生すらもう信用している。外面はそんな感じだ。じゃあ内輪ではどうかと言えば、僕の周りの人を吸血鬼にしない、つまり巻き込まないことを公言している。


『私を殺してください』


 もしダメだった場合にそんな条件をつけてくる人間が、僕たちを陥れるわけがない。そう信じたかったのかもしれない。

「でも、その犯人が人質を利する方向に考えるかもしれない。という可能性も全くないわけではありませんけど」

 僕の心中を知ってか知らぬか、影森ちゃんは神宮寺さんを庇うようなことも付け加えた。影森ちゃんも、超然としているように見えて僕と同じ気持ちなのかもしれない。

「とまあ、今までの話はあくまでも推論です。真に受け過ぎて引っかからないでください」

 とはいえ、事実関係としては大いに可能性がありそうな話ではあったので、食いついておくことにした。

「とりあえず持って行ってみようか」

 影森ちゃんをチラリと見ると、彼女は自分を指差した。

「私もついてこいと」

「勝手に持ち出したらダメでしょ」

「先輩にだったらお任せできるんですが」

 そう言いつつもちょこんと後ろをついてきたので、城見吸血鬼研究所へと連れ立って行くことにした。


 城見先生に歓迎され、早速現物に朱肉をつけて押してみると。


「うそでしょ……」


 本当に開くとは思っていなかったらしく、影森ちゃんは目を丸くしながら驚きの声を漏らしたのだった。

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