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普通の高校生とヴァンパイアの四季  作者: 湯西川川治
最期の冬の話
178/226

生徒会長がいないってどういうこと 6

高麗川水乃生徒会会計(イメージCV:緒方佑奈)

     5


「あ、未広さんじゃないですか」

 座っているのは高麗川水乃こまがわ みずの会計だけだった。

「高麗川さん、しれっと僕のことを下の名前で呼ぶよね」

「他意なしです。ただそう呼びたくなる名前なだけです」

 高麗川さんは顔色変えずにそう言ってのけて、手元のタブレットの画面をフリックしてから、机の上に置いた。決して堅物とか鉄の女とかではないんだけれど、感情表現が乏しい時がある。笑うと可愛いんだけども。

「会長なら今日もいないので、私が取材を受けるように言われました」

 4回目ともなると取材の存在は完全に知れ渡っているらしく、高麗川さんは原稿まで作って準備万端みたいだった。

「この原稿そのまま渡す形でもいいんですけど」

「堅いこと言わないで取材受けてください」

 僕がソファーの対面に腰掛けるなり、タブレットを渡そうとしてきたのでやんわりと押し返した。せっかく来たんだから取材させてください。

「まあ、暇だから構いませんけれど」

 高麗川さんはそう呟いて、押し返されたタブレットを操作しだした。

 美濃部さんの後釜である生徒会会計は、これまた部費増額のハードルが高そうなメガネ女子だった。にっちもさっちもいかない堅物メガネ女子、というわけでもなくとっつきにくいわけでもないんだけど。とにかく予算はくれなさそうな人だった。


「僕もあだ名で呼ぼうかな」

「みっちゃんはダメですよ」

 先回りされた。

「わたしには似合わない名前なので」

「かなあ」

 取材の途中、くれちゃんが話していたあだ名のことを振ってみると、高麗川さんから即ダメ出しを食らった。

「じゃあ水乃さんで」

「妥当な線です」

 即座にリテイクしてみると、納得言ったに頷いた。下の名前だったらいいのかい。

「じゃあ改めて、文学少女の水乃さん」

「に、見えます?」

「文庫本が似合いそう」

 黒髪メガネ女子と言えば文学少女の香り、というのは良くある話。図書室に入り浸っていたという情報もくれちゃんから聞いていたし、そうだろうと思っていたら。

「残念。わたしは電子書籍派なんです」

 否定された。

 そう言ってタブレットの画面をフリックして操作した水乃さんはにこりと笑いながらその画面を僕に見せてきた。

「ここにあらかた入ってますので」

 電子書籍リーダーアプリらしき本棚には、僕も知っているような作者さんの本がたくさん羅列されていた。

「やっぱり文学少女だ」

「もっとデジタルな呼び名がいいですね」


 冗談ぽくそう笑った高麗川さんから、タブレットの中身のことを色々と聞いた。依存気味なくらい、肌身離せないらしい。そして生徒会だから、ということで生徒たちのことのデータも最近入れ始めた、としれっと怖いことを言うのだった。

「えーと、先輩は」

 画面を見ながら手をスライドさせた水乃さんは、また小さく微笑みながら言った。

「いつまでも後輩に告白できないヘタレ男子の先輩、とデータにはあります」

 ……何でそんなことが筒抜けになってるの。

「夏祭りでも文化祭でも2人きりで歩いたのに、何も進んでいないとは」

「本当になんでそこまで知ってるの」

「安心してください。このタブレットにみなさんのデータはあらかた入っているんです」

 いや、全然安心できないって。

「無論、美菜ちゃんのデータも入ってます。知りたいですか?」

「知りたいけど絶対ダメ! 倫理的にダメ」

「まあ知らずとももう恋心は知ってるので、後は未広さん次第なんですけどね」

 ぐさっと刺さる言葉を頂きつつ、その先の吸血鬼っていうところが出てこないかひやひやしていたけれど、それ以上に何か情報を隠しているようにも思えなかったので、そこは一安心した。誰から聞いたの、って言う情報はこの他にもあったけど。


「データによると、新聞部はもっと支出を抑えていただきたいと」

 こりゃ、永遠に新聞部にこたつはやってきそうもなかった。

『それでは最後に、生徒の皆さんに一言お願いします』


『生徒会の財政も私のお財布もキツキツですが、少しでも知恵を出し合っていいお金の使い方をしていきたいと思いますので、よろしくお願いします』


 話し合いで少しでも部費を絞り出せればいいなあ、と思った。


「というわけで金欠なのでどっかに連れていってくださいな」

「御意です」

 断るとデータが流出しそうなので、涼み亭に連れていくことにした。

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