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普通の高校生とヴァンパイアの四季  作者: 湯西川川治
最期の冬の話
174/226

生徒会長がいないってどういうこと 2

     2


「美菜先輩お勤めご苦労様! おかえりなさい!」

「おかえりミナ」

 学校にたどり着いて新聞部の部室に向かうと、鮫ちゃんとエミールがクラッカーを持って待っていてくれた。手厚い歓迎だ。というか病人にクラッカーはいいのか。

「ご心配おかけしました」

「無事で帰ってきて何より!」

「ケンコーダイイチ」

 頭を下げる美菜ちゃんに、どうってことないと言う風な新聞部員たち。いつもの新聞部が戻ってきた気がして、なんか安心した。

「というか退院初日から学校に来るなんて」

「タフ」

「本当だったら明日からと思っていたんですが、誰かさんが迎えに来てくれたので」

 美菜ちゃんが向けてきた視線をふいッと交わすと、軽く踵を蹴られた。

「想い人の導きならば、行かないわけにはいかないしね」

「べ、別にそんなんじゃ……ないとも言えないですけど……って誰ですか」

 いつの間にか隣に神宮寺さんが立っていた。美菜ちゃんが怪訝な目を向けていた。どっから沸いたんですか。

「あ、お初でした」

 美菜ちゃんのそんな様子を見て悪戯っぽく笑っていた神宮寺さんは襟を正した後、深々とお辞儀した。

「数学教師の神宮寺藍華です。よろしくね、七山美菜ちゃん」

「わたしの名前まで知ってます」

「春日井くんが補習の時に『美菜ちゃんのお見舞いが』って良く言ってたから」

 再び美菜ちゃんの視線を逸らしつつ、神宮寺さんに問うてみる。

「神宮寺先生は何しにきたんですか」

「新聞部に見たことない顔がいたから顔出しに来ただけ」

 それだけ、と言って神宮寺さんは部室の出口へと向かって行った。

「それじゃあね春日井くん。演習問題、明日までにやっておかないと補習ですからね」

「わかってますって」

「七山ちゃんのお見舞いがなくなったから、心置きなく補習ができる」

 恐ろしい言葉を残して。嵐のようだった。

「先輩あの人」

「美菜ちゃんがいない間に入ってきた数学教師さん」

「新聞部の副顧問にでもなったんですか?」

「確かにしれっと居たけど、あれただ遊びに来てるだけ」

「自由な先生ですね」

 生花研究会の件の後、すっかり打ち解けた神宮寺さんはよくうちの部室に遊びに来るようになっていた。

「ああ見えて吸血鬼なんだよ、神宮寺さん」

「へえ……ってまた!?」

 美菜ちゃんの驚きの声はもはや呆れを通り越していた。

「……今度は何が起きてるんですか」

「美濃部さんたちの件の後処理、とかかな多分」

 とんでもない方便で誤魔化しておくと、なるほど、と美菜ちゃんは神妙に頷いた。こんなにあっさり納得するなんて思わなくて、少し面食らった。

「じゃあわたしたちの味方なんですか?」

「そうとも限らないかも」

「じゃあなんなんなんですか」

「それは僕が訊きたいかな」

 もはや色んな人としたお馴染みのやりとりで、所感を述べるまでもなかった。

「まあ、悪い人そうではないですけど」

「そう見える?」

「お悩み相談に乗ってくれそうに見えます」

 美菜ちゃんのその言葉にハッとした。お見舞いの時に確かそんな流れになって途中になっていたような……

「未広先輩を助けてくれればいいですね」

  そう言って、美菜ちゃんは小さく舌を出してから踵を返して、僕の視界から消えた。ああ……やっぱりバレてるなこれ。うーん、いつどのタイミングで言うかは戦略を立てなきゃ。って言ってるうちにタイムリミットが来ちゃうかもしれないけど。どっちにしろ怒られそう。ひどく怒られそう。

「……まったくもう」

 頭を抱えている僕を見ているらしい美菜ちゃんの小さいため息が、ノートパソコン越しに聞こえてきた。

「よっし、部長も帰ってきたし新聞書こうよ!」

 見かねたのか鮫ちゃんが高らかに宣言して、僕は顔を上げる。美菜ちゃんはというと、パソコンの画面を見ながら頷いていた。

「今週号は生徒会の新体制紹介なんでしたっけ」

「でもまだ会長の取材ができてない!」

「シーカ、放課後になるとニンジャみたいに姿を消すんだ」

 美菜ちゃんが入院している間に新生徒会メンバーの取材をしようと決まったものの、生徒会長の取材が難航していた。なぜだかとにかく生徒会長が掴まらない。毎日どこ行ってるんだってくらいに会えないのだ。

「椎香はあいさつ回りとか何かと忙しいって言ってました。そんな中でもお見舞いにも来てくれましたし、本当に生徒会長なんだなって」

 美菜ちゃんはしみじみとして言った。身近な存在すぎて、いざ偉くなっても実感が湧かないとか言うやつなんだろうか。

「と、他の4人の取材は済ませてありますね……って、なんかみんな名言っぽいことを」

「最後に一言、って感じでお願いしたらみんなそれっぽいこと言うから」

 それから、不在の間のことを埋めるようにみんなで雑談しつつ、生徒会メンバーの個性が出ている取材の時の様子を、美菜ちゃんに語り始めた。

【第39代生徒会役員名簿】

〇新生徒会長:影森椎香かげもりしいか

〇新生徒会副会長:城崎みやび(きのさきみやび)*再任

〇新生徒会副会長:暮沢みちる(くれさわみちる)

〇新生徒会書記:気仙沼美花けせんぬまみか

○新生徒会会計:高麗川水乃こまがわみずの

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