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普通の高校生とヴァンパイアの四季  作者: 湯西川川治
最期の冬の話
163/226

うなぎ登りですね 2

     2


「神宮寺先生、教え方うまいよね」

「正直助かる」

「数学苦手な私たちに舞い降りた神様だよねー」

 放課後の補習中、隣の席に座っていた北砂さんがひそひそ話を持ち掛けてきたので、僕は問題を解く手を止めてのんびりと興じていた。

 悔しいけれど、神宮寺先生の数学の指導は的確だった。隣のクラスの北砂さんもこの褒めようである。古風な美少女教師爆誕、と噂になっていたけれど、名実ともに素晴らしい先生をやっている。

「入試では解ける問題を解いて、それ以外は捨てる覚悟で行ってくださいね」

 だなんて、もっともらしいことを言う姿は本物の教師みたいだ。

 スラスラと黒板に数式を書いて問題の解説をしている神宮寺さんの姿を見ながら、僕はその問題ではなくて、神宮寺藍華が解せない、ということを考えていた。

 結局、彼女の意図が分からない。

 僕を吸血鬼にしないために監視するのであれば、僕を助けてくれるというはずだ。逆なら『吸血鬼にしない』だなんて言わない。それに、僕の周りの人間の安全まで保証する。


 それに。


『私を殺してください』


 挙句の果てには、それが出来なければ自分を殺せ、と言う。

 最終的に何が目的なのか。僕を吸血鬼になるのを見届けることか。それとも、助けてくれるのか。そもそも敵なのか味方なのか。彼女にとって僕たちはどう言う存在なのか。その辺りは全て、あいまいなままだ。

「春日井くん、これ解ける?」

 そんな僕の思考を遮るようにチョークで黒板を差したのは、脳内で絶賛噂中の神宮寺先生だった。得意な加法定理の問題だったのですぐに答えを言うと、神宮寺さんはうん、と頷いた。どうやら正解らしい。

「正解。やるじゃない」

「神宮寺先生の教え方が上手いからです」

「褒めてる割には片言なのどうしてかな」

 神宮寺さんは褒められてる気がしないんだけど、と言いたげな顔をしている。

「それはともかく、これが解ければ東文も大丈夫でしょう」

「神宮寺先生のお墨付きがあれば安心です」

「棒読みなのはどうしてかな」

 相変わらず納得いってそうな顔をしている神宮寺さんは、やれやれとボヤいて、チョークを置いた。

「ちょっと休憩。みんな質問があったらどうぞ」

「はーい」

 真っ先に手を上げたのは北砂さんだった。

「はい冴里さん」

「藍華先生は大学どこなんですか?」

「私? 私も東文」

 しれっと母校を明かした神宮寺先生は、北砂さんを含めた東文志望の生徒たちに質問攻めを受けたのだった。

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