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普通の高校生とヴァンパイアの四季  作者: 湯西川川治
最期の冬の話
150/226

職権乱用させてもらいました 2

     2


「美菜ちゃんはどうするの?」

「わたしはコーンスープで」

「でもなんだかおなかも空いた気もする」

「じゃあ自販機じゃなくてコンビニ行きましょうか」

「いいね」

「わたしは肉まん買って食べます」

「それ乗った」

 自販機までの散歩のつもりだったけれど、コンビニまでの道を歩くことにした。相変わらず雪は降っているけれど、だいぶ昼間よりは収まってきた。

「美菜ちゃん、滑らないように気を付けてね」

「先輩こそ」

 今日はローファーじゃなくて長靴を履いてきていた美菜ちゃんは、雪の積もった道をしゃくしゃくと音を立てて進む。

「積もりましたね」

「転びそうだなあ」

「こういう時に限ってやらかすのが人生です」

 そう言いながら、さっそく美菜ちゃんは滑ってその言葉を身体を張って証明していた。転びはしなかったけれど、苦笑いしていた。

「手、引いて行こうか」

「良いですそんなの」

 と言いつつ、今度は転びそうになる美菜ちゃんの手を取る。

「おとなしくついてきなさい」

「……はい」

 美菜ちゃんはおずおずと僕の手をギュッと握りしめて、顔を赤らめさせた。もちろん僕だって恥ずかしいんだから。

「先輩、ひとつ聴いていいですか?」

 コンビニまであと少しと言うところで、美菜ちゃんが不意に聞いてきた、

「なに?」

 僕はその先を促すと、後輩は真面目なことを僕に問いかけた。

 

「……先輩は私が死んじゃったら、どうしますか?」


 突拍子も無いことを真顔で告げる後輩に、僕はどんな顔をしていただろうか。本来だったらその質問は、僕が美菜ちゃんにした方がしっくり来るものだ。

「もしもの話です。今すぐにどうこうなってたまるかっていうんですよ」

 仮定の話。今すぐに美奈ちゃんが死んじゃうわけではないらしい。

「先輩だってそうですしね」

「うん」

 肯定の返事をしておいて、胸中は晴れない。だって、もうすぐどうこうなってしまう身だから。まるでこの雪空のように、深々と雪が降り続いている。

 美菜ちゃんには今の僕がどう見えているのかわからない。でも、僕には美菜ちゃんが明らかに悲しさのような寂しさのようなものを兼ね備えているように見えるから、きっと隠し切れていないんだろう。そんな僕に、美菜ちゃんは泣きそうな顔で伝える。


「もし先輩が死んじゃったら、わたしは泣きますよ」


 いくら鈍感な僕でも、なぜ美菜ちゃんがそういう質問をしてくるのくらいはわかる。もしかしたら美菜ちゃんは。

「あ、未広ちゃーん、美菜ちゃーん!」

 千佳子先生の能天気な声が、口を開こうとした僕と僕たちの微妙な空気を遮る。

「先生が来たから、先生のおごりでいいですよね」

「ちょっと何言ってるのかな美菜ちゃん」

「とにかくみんなの分の肉まん買えばいいんです」

「わけがわからないよ」

 とりあえず財源を確保してコンビニへ向かおうとして、隣を歩く美菜ちゃんが突然立ち止まった。かと思えば、雪積もる地面に崩れ落ちた。

「美菜ちゃん!」

「ちょっと、美菜ちゃん!」

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