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普通の高校生とヴァンパイアの四季  作者: 湯西川川治
最期の冬の話
146/226

先輩のバカ 一

     一


 未広先輩が部活にやって来ない。

 部活に出られないときは律儀に何かしらの連絡をくれるのに、今日は全く音沙汰もないし、LINEも既読にならない。

「どこ行っちゃったんでしょうね、まったく」

 独り言をつぶやいても、誰もいない部室の壁からしか返ってこない。他のみんなも今日はやって来ず、わたしひとりでのんびりと座っていたら小一時間が経っていた。

 確かに今日は企画会議の前の月曜日だし、みんなの集まりが悪いのもわかる。

 鮫ちゃんは弓道部に行ったし、エミール先輩は生徒会に呼ばれて意見交換会という名のお茶会だそうだ。生徒会長の椎香がぜひともじっくり話を聴きたいそうで。

 と、所在の分かっている2人はいいとして、問題は未広先輩だ。先生にでも掴まっているんでしょうか。受験シーズンだし、補習を受けている可能性もある。なんだかんだ言って、未広先輩たち先輩方の受験まであと1ヶ月ぐらいだし。

 だなんて考えていたらさらに30分が経った。

 まったく未広先輩は。本当に何も連絡なしにどこ行ったんですか。しかもメッセージも既読にならないし。もしかしたらいつかのようにスマホ家に忘れたとかかもしれないけれど。

 ただでさえ心配なのに、これ以上心配かけさせないでください。

 ……なんて、未広先輩の前では言えないけれど。

 こうも連絡が付かなくなると、一抹の不安が沸き上がってくる。いや、平時なら良いんですけどね。ただ。


 ただ、先輩がいきなり消えてしまう可能性があるってわかったから、私は不安になるのです。


 なんだかこのまま一人でいるのが少し寂しかったし、じっとしているのも少し滅入ってしまいそうだったので、未広先輩を探しに行くことにした。


「はい、これ料理部からのバースデーケーキ」

 家庭科室の扉を開けた途端に待っていたのは、サリー先輩だったとホールケーキだった。

「いやあ、ちょうど持っていこうと思っていたところだったんだよね」

「誕生日、覚えていていただいたんですね」

「そりゃそうよ、大事なうちの部員の誕生日を忘れるわけないからね」

 そう、何を隠そう今日はわたしの17歳の誕生日なのです。お祝いされるとなんだかんだうれしいもので。

「今月は春日井くんの誕生日も待ってるから大忙しだよね」

「今年はどうしましょう」

「私たちが一緒にお祝いできるのも最後なんだし、手作りのケーキでも作ってあげれば? 美菜ちゃん株ダダ上がりだよ」

「別にわたしは株を上げようとしているわけじゃ。って未広先輩の話じゃなくて」

 いや、そうだ、わたしは未広先輩を探しに来たんだった。

「いややっぱり未広先輩のお話です。料理部に来ませんでした?」

「春日井くん? いや、今日は来てないよ」

「そうですか」

 宛が一つ外れた。

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