四季の小話~エピローグ
私は、最後の一文字を書き終えて、コーヒーを一口飲んだ。少し苦味が目立ったので、角砂糖をもう二つ入れる。
春日井未広の物語は、ごく普通の学校生活の羅列になっているかもしれない。
けれど、吸血鬼もどきになりながらも、平穏な学校を楽しんでいるのは確かだった。
もちろん、その裏で他の吸血鬼を助けたり、人間に戻る方法を探っていたりするのは確かではあるのだけれど、どちらかと言えば彼は前者ばかり行っている気がする。
それは自分が今置かれている状況から逃避したいがための行動か。
いや、それでも春日井未広は吸血鬼を助けるだろう。
自分のことを棚に上げてでも、彼は吸血鬼が困っていたら手を差し伸べるだろう。他者を助ける精神は感心するけれども、少しは自分のことをもっと顧みてもいいのではとも思った。
しかし実際、吸血鬼もどきを元に戻す方法は私も知らない。長年総裁に仕えている私でさえ知らないのだ、探すのは至難の業だろう。
それが見つかって欲しいと思うか? 私にそんな慈悲はない。あくまで傍観者として、彼の行く末を見守るだけだ。
春日井未広に、私はこれから会う。
会うと言っても、約束を取り付けているわけでもないので、ゲリラだ。脅かしに行くわけでもないけれど、側近の私が行くのだ、脅しになるかもしれない。それは彼次第である。
そして、吸血鬼になる彼を見届けるのか、吸血鬼にならない彼を見届けるのか。それは神のみぞ知る話である。





