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普通の高校生とヴァンパイアの四季  作者: 湯西川川治
四季の小話
129/226

これを着るんですかわたしが 3

     3


「というわけで、今日から来てくれって」

 翌日美菜ちゃんにそう告げると、当然彼女は目を丸くしていた。

 急転直下、美菜ちゃんのアルバイトが決まった。別に僕はそんな気なしに相談に行ったのに、涼み亭の名取夫婦が美菜ちゃんに惚れ込んだ。すぐにでも来てくれとのことだった。

「えーと、涼み亭って」

「喫茶店というか甘味処というか」

「クラスの子から名前は聞いたことありますけど……」

 まだ行ったことはない様だった。いつか連れて行こうと思っていたけれど、お客さんじゃなくてアルバイトとして連れて行くとは思わなかった。

 ともあれ、美菜ちゃんも興味をしめしてくれたので、これから涼み亭に一緒に行くことになった。


「いらっしゃいませ〜!」

 涼み亭で出迎えてくれたのは、ウェイトレスの山井七瀬先輩だった。姉さんと同じ東京文化大学の学生で、元新聞部の先輩だ。高校時代からずっとここでアルバイトをしている古株で、バイトリーダー的な存在である。

「バイトリーダーって言っても、私しかいないんだけどね、アルバイト」

 僕が七瀬先輩のことをそう紹介すると、彼女は苦笑していた。

「でもこれで名実ともにバイトリーダーになれるよ」

「バイトが増えるのはいいことだね」

「よろしくお願いします」

「美菜ちゃんって呼べばいいかな。私のことは自由に呼んでね。元新聞部だし、未広くんのことも含めて何でも聞いてね」

「変なこと吹き込まないでね」

「わかってるってー」

 姉さんの親友だし、色々と僕のことを知っているから、何かと侮れない。

「美菜ちゃん、ジーっと見ちゃってどうしたの?」

「えーと、これを着るんですかわたしが」

 七瀬先輩の格好を見て、美菜ちゃんは呟いていた。目をキラキラ輝かせている。

「これが春制服。春夏秋冬制服があって、季節ごとに変わるんだ」

 和服をモチーフにしている制服は、涼み亭の魅力の一つだった。春は桜と葉桜をイメージした桃色と緑色が使われていた。なんか桜餅みたいだ。

「とりあえず着てみようか」

「はい!」

 美菜ちゃんは足取り軽やかに店の裏手へと消えていった。確実にあの制服に興味を持っているに違いない。

「大丈夫そうですね」

「良い人材をありがとうね、未広ちゃん」

 あやめさんはそう言って、あとでデザートをサービスしてくれた。着替えた美菜ちゃんはというと、似合いますか? と照れながら僕に尋ねてきて、僕のハートを射止めたのであった。

 かくして、後にメイドウェイトレスともなる涼み亭のアルバイトさんが誕生した。

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