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四季の小話~プロローグ
春日井未広。
彼について知っていることはいくつかある。
人間界に所属する、南柄高校の3年生であること。
同校新聞部の元部長であること。
私たち吸血鬼を知っている存在であること。
かつて恋していた幼なじみが吸血鬼になったということ。
女性吸血鬼と一つ屋根の下で過ごしたのにもかかわらず、手を出さなかった男子であること。
そして、
――総裁自らが手を下した、吸血鬼もどきであること。
総裁が吸血鬼界の掟を破ってまで手を下すほどの人間を、私は不思議に思った。そして興味が湧いた。だからあらゆるものを駆使して、彼のことを調べた。そして、彼について知っていることをまとめた。
そんなレポートまでとは言えない代物は、総裁に上程するわけでもない。事が全て終わったら、燃やしてしまおうと思っている。
あくまでそれは興味の範囲内であり、誰にも見せるものでもない。しかしながら、私は記す。
春日井未広を取り巻く世界の報告を、記していく。
もしこれを見ているものがいるのならば、閑話休題的に見て貰えばいい。





