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ドワーフ街のバーテンさん。  作者: ほうとう。
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「メイ、久しぶり」

「おぉアーノルド。おひさ」

「えっと、麦茶くれ」

夜遅く、頬を赤くして顔を出したのは幼なじみの青年だ。

伯爵位の5男、いうまでもなく跡継ぎ要員ではないためさっさかと騎士団に入った王道キャラだ。しかしみてくれは熱血主人公系なのに本人の性格は至っておとなしく、しかも剣よりも魔力の増幅で動く機械類こちらでは魔器機の開発調整の方が趣味であり乱暴者の多い騎士団にあってエンジニアみたいな立場になっていたりする。魔工技師だねといったら自称するようになったくらいには気に入っているのが幸い、なのかな。ただ周囲からは技術の要であるものの名から鉱物屋と言われている。

酒場とて別に酒を飲まなければならないわけではない。

単独で入ってくる場合はどうかと思うが顔なじみならば仕方がないし、その顔は真っ赤だから今まで呑んでいた……多分呑まされていたと解釈する方が正解だろう。

氷室で冷やしておいた麦茶を、氷はなしでアーノルドに出す。一気呑みの様子に自分の予想が確かだったことを確信した。

「騎士団に常備しておきたい」

アーノルドはアルコールが苦手だ。

ぜんぜんダメ、というよりも細かい作業が好きな為に悪影響のあるアルコールの酩酊感を嫌っている。根っからの技術バカなのだ。

しかしそんなアルコールの恐ろしさはあまり知られていない。

みんなが呑んでいるわけだし、そもそも酒精は低いから自覚が薄い。

人類どころか世界皆アル中。怖い。そう考えるとマジこわい。

「持ってく?大麦煎っただけだからそんなたいそうなもんじゃないし」

そういえばどんなまずい水でもどうにか飲めるからと軍のレーションにはインスタントコーヒーが必須だとかいう話を聞いたことがある。水を呑むという習慣があまりにないこの帝都にも麦茶って結構有効じゃなかろうか、とそんなことを考える。

っていうか騎士には麦茶ばっか出してるな。

「食い物かと間違えて食いそうなバカしか思いつかん」

「ホラーか!」

「ほらー?」

「あー、うん」

そうか。まぁ麦だもんな。不条理にアーノルドが怒られるのもなんかやだしなぁ。

「煮出したのを持ってくのも手だけど。騎士団に氷室あったっけ?」

「俺が作ったのがある。あぁ、隠し扉作ればいいか」

なにその世の主婦様方がほしがりそうなシステム。

っていうかただの修理屋がなぜ開発に携わっているのか。

「騎士様って大概貴族の次男坊以下なのにそんな脳筋なの?」

「気位が高いつもりでいる奴の方が基本的に脳筋に発展し易い気がするな。結果、インテリ脳筋になる」

「わけがわからないよ」

なんだインテリ脳筋って。

クラスチェンジ先として絶望のにおいしかせん。

「インテリ脳筋は怖いぞ。会話が成立しないからな」

「そうだろうねぇ。アーノルドはそれから回避できてるの?」

「多分な」

怖いな幼なじみ。

だがそれより体育会系怖い。洗脳っていうやつ。マインドコントロール。

「ちなみになにを美しいって思う?」

「ロズウェル親方のつくる螺子」

大丈夫なのか大丈夫じゃないのか判断しにくい即答だ。ロズウェル親方は魔器機の為の部品、金属加工をメインとするこのドワーフ街におけるエルフの加工技師だ。

エルフと金属とか対極すぎる気もするが本人は気にしていない。周りも気にしない。それがこの街だ。

まぁうん、アレだ。筋肉が美しいとか言い出さなくてよかった。いや美しいと思うけどさ筋肉。思うにも種類があるというか。

「まぁわかった。麦茶つくるよ」

「ありがとう」

麦茶は腐りやすって聞くから本当は出来立てのがいいんだけど仕方がない。

麦茶はカリウムの含有量とかも含め、汗を流す騎士団には向いてるんだけど、まぁそれはお節介か。

「食べてきた?」

「あんまり。お通しなに?」

「今日は茹で鳥」

ささみを沸騰したショウガと塩入りお湯に入れて火を止めてそのまま冷ます。

それを冷めた茹で汁の中でほぐすとしっとりふわふわにできあがるのだ。

あとはネギと塩ぽん酢とタカノツメのソースをだばぁして出来上がり。完全にお酒あわせだったけどまぁいいか。うちはBARだっての。

「おなか空いてるなら細目に切ったうどんも添えようか?」

そうめんには油分が入ってるからうどんとは厳密には違うのでうどんとしかいえない。法律上の違いは直径の太さだけが基準だったらしいけど。まぁそこんとこはいいや。

「うぉ、助かる」

うんうん、ちょっと待ってなさいな欠食児童。

「なに、そういう集まりってやっぱり酒メインなの?」

「まーそうかな。しかもここの店の味知ってればつらいぞ」

まぁ騎士様といってもさっきも言ったが殆どが次男以降の「予備」連中だ。

金が潤沢なわけでもないし量もほしいからとエールが主体となる。

うちのキリっと冷えたビールを呑んでたら確かにやってられなかろうなぁ。

「だからあんま呑まないだろ?呑まないと目を付けられるだろ?」

「あるはらか!」

「あるはら?」

「アルコールハラスメント。お酒の席で本人が望んでもいないのに強要したり酔っぱらった勢いだと言い訳して攻撃したり酔ってたから忘れたとかホザくことの総称、でいいかな」

残念かなこの主張が理解されないだろうなぁという現実はわかってる。

この世界は年齢よりも立場が全て、それがないと成立しないほど脆いのだ。

「この店じゃ絶対許さなそうだな」

「そうね。悪い酔い方するお客さんを笑顔でいなせるほどできてないもの私」

正直に言えばいいと思うぜと返ってくるのがありがたい。

まぁアーノルドもだからうちの店にきたんだろうけど。

よし、うどん?も良い加減になった。水と氷魔法で締めて水を切り、茹で鳥とソースをだばぁ。茹で汁で少し延ばすのも忘れない。ちょっとだけレモンを絞る。マヨネーズはパスね。カロリー的な意味で。

「へいおまちー」

「わーい」

アーノルドはフォークで器用に冷やしとりうどんを食べ始めた。幼なじみ特権でうどんを食べ慣れてるせいか、食いやすいなとつぶやいてる。あのときの私は配慮がなかったなとその一言で実感してしまった。ごめんちゃい。

「ほういへばぱふた」

「食ってから言えい」

パスタのことだな、とは思うけど。

「んぐっ、パスタ。お前だろ」

「だいたいあってる」

実際は大体どころではないけれど大体と言うことにする。

決めたのはじじぃ様なんだからその目やめて。白い!痛い!

「それ用の乾燥機つくれって命令がきてな。温度ややり方で形の変形なんかもあるから結構面倒だったぞ」

「あぁなるほど」

魔法でばばーん、というわけにはいかなかったのか。

まぁ魔器機の方が効率はいいだろうなぁ。騎士に依頼する仕事じゃないのはわかるんだけど。

「ただまぁ、遠征時の食生活には潤いがでそうだ」

「そりゃよかった。っていうか遠征ついていくんだ」

「魔器機は多いからな。下手すると一番忙しい」

なるほど。扱いが乱暴だからね。仕方ないね。


この帝都における遠征は基本的に戦争のためではなく討伐のものが多い。

討伐、魔物だ。モンスターだ、ファンタジーだ。

どうも魔法が使える=魔法を使うための元素的なものがある=その元素が吹き溜まりのような場所で集まり固まっていくと魔物になるという構図がこの世界にあるらしい。勿論一度実体を持てば膨らみ、凶暴化し、台風のように四散することはないとされている。つまりは対応しなければならない自然災害に近いのだ、魔物というのは。

なので定期的に事は起こり、それに対策するためにと公的私的問わず剣は魔法は発展していった。

帝国は支配したわけではなく、助けることで領土を得ていった形になる。因みにその始まりとなる初代の帝は知恵回る黒髪の小柄で不思議な剣を操る傭兵だったそうだ。今は血筋(帝家)に面影すらなさそうだけど平たい顔だった可能性が高いと私は読んでいる。ちくせぅなぜ米に力を入れなかったんだ。

まぁそんなわけなので、成長する驚異に対して食事程度で志気が上がるなら悪いことじゃないよねと考えることにしよう。うん。


「本当は麦茶もいいんだよな。現地の水を煮沸して飲めばかなりの荷物軽減になる」

未練多すぎだろうお前ちょっと。ただまぁいいたいことはわかる。

遠征は体力と節約の戦いだ。水分なんてとにかく邪魔くさいし重い。

「味のついてない白湯、確かに苦手だろうなぁ」

「そうなんだよ」

アルコールというより「味付きの水分」が当たり前なこの国だ。間違いなくミネラルウォーター飲み比べ経験なんてないだろう。

状況からしてできれば塩麦茶が望ましかったりするが、味付きとはいえアレはさすがに好み選ぶ。とはいえコーヒーもないしなぁ。

っていうか任務中の酒って純粋に不謹慎だと思うわ。あくまで自分の感性だけど。

「けど酒の必要性もわかるんだ。酒でテンションでも上げなければ恐怖に食われる」

「え、そっちの流れなの?それもはや麻薬扱いじゃん?!」

「まやく?」

酒が一般化しているせいか麻薬って概念がないんだよなぁ。WW2の頃なんかはいわゆるヒロポン(覚醒剤)常用で恐怖心を除く、というよりも抉って戦ってたそうだけど。常習性って意味じゃあんまかわらない気もする。

「あー、なんでもない。てか魔物相手だといくら騎士達でも怖いんだね」

「騎士だから怖いんだろう。中には戦闘狂もいるけどさ」

幼なじみはそういって小さく笑った。

なんていうか、どうとでもとらえられるしどう考えても皮肉にしか聞こえないそんな笑い方だった。


をたくの幼馴染はをたく

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