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ドワーフ街の「作品」を買ってくれる商人さんは数あれど、うちの店を住人から直接紹介されたのはこの行商人のロックウェルさんくらいだろう。
この人は元々冒険者だったものの、お使いイベントを好んでやっていたせいか最終的に地方に良心的な価格で生活用品を売り歩くという移動販売がメインになったという変わり種である。
街のB級品や型遅れのもの、弟子達の作品をちょっとだけ融通利かせてもらって買い上げて必要な人の元へ届けるというスタイルは、当初プライドの高いおっさん共を激怒させたが目的と意図は誠実なものだ。B級品であることを証明する刻印を残す形で迷惑な転売を押さえることを条件に、ロックウェルさんは物資の流通の為にと尽力した。
まぁB級品っていっても素人にはわからない程度、そしてこの街にいる以上その技術者はトップクラスだ。まぁつまりあくどいことを考えようとおもったらいくらでもどーにかなるのであるから親方達の反応もさもありなんというものだ。そしてロックウェルさんもその辺を承知で知恵を絞った。人間一つの山を一緒に越えると信頼や友情が芽生えるものだ。まぁごくごく一言に単純ともいう。
そんなわけで仲良くなったら呑みにけーしょん――が成立するのはこの街、いや世界に娯楽が少ないからだ。商人と職人が対等なのもあるだろう。というわけで彼は度々うちにお邪魔してくれるようになった。
「ミードのソーダ割りを」
「かしこまりました」
いい取引ができたのかにこにことしているロックウェルさん。
人族で五十代くらいのおっさんだが、物腰は柔らかくて元貴族じゃないかと踏んでいる人もいる。同世代の父様ならわかるかもしれないがまぁ無粋だろう。
お通しは大根とコカトリスの塩煮。さすがに素人の魚醤じゃ合わないので醤油系味付けは涙を呑んだ。ショウガ・ニンニク・タカノツメは入ってるけどね。
もはやBARというより小料理屋のメニューな気もするが割と腹に溜まるので好評です。そもそもお通しって概念がないからね。
「ところでメイさん、ちょっと商品を見てほしいんですけどね」
「はて?なにかおもしろいものでもありましたか」
さてどうでしょう、とロックウェルさんが差し出したのは麻の袋。手のひらですっぽりしまえてしまうほどの大きさのそれを私に差し出す。にこにこにこにこ。若干怖い。
「えっと」
「意見がいただけたらと思いまして」
土の中の木の実と呼ばれています。
これはある村に自生している植物の実だという。ほとんど村での消費になるが、ロックウェルさんは商品になるのではとみているそうだ。彼はただ提供するだけではなく、首都の需要を村に伝えることでWINWINな関係になることを意識している。ただ不思議なことにそっから先、村側の商売が軌道に乗り出すとさっさと手を引く。もっと大きな商店や信頼の置ける商人に権利をポイと渡してしまうのだ。
勿論トラブルにならないよう、最大限の配慮をした上でのことだが、一人でできる限界があると彼は笑う。そんな人が目につけた一品だ。拝見します。
「む」
んん?みたことのある形の種だった。そう、商品なのに種。そしてみっしり。
「生ですか?」
「えぇ」
「少しいただいても」
「メイさんにお持ちしたものですから」
オーライ。
「村での食べ方は?」
「茹でてましたね」
「なるほど」
絞って油に、とかは考えないか。勝手もわからなかっただろうし今私の手元にも道具がない。
手っ取り早く茹でてるっていうからソレと、炒めるのと、あとはキャラメリゼにするか。くそぅ、チョコレートほしい。
「えーっと、というわけでこれが村で食べているというもの、塩をちょっと入れてみました。こっちがバターで炒めてやっぱ塩。ラストのが生クリーム入りの飴で絡めたものですね」
さすがに茹で加減とかわからないからいくつか途中味見したが、思った通りの味がしたし油分もやっぱり多そうだ。つまり栄養価が高いのでおそらく村では重宝されていただろう。薬という側面もあったんじゃないだろうか?
砕いてアイスに入れるのもいいな。スモークしたのも美味かったなぁ。
「びっくりしました。あっという間にこんなに」
「あ、つい」
知らないはずの木の実でこんなにさっさか作る様子は変態だっただろう。
油を絞る、というのはピンとこなかったらしく首を傾げられたが、とりあえず乾燥させれば日持ちする旨を伝えながらいざ改めて実食。茹でたピーナッツってちょっとおもしろい味するね。
「バター、あいますね」
定番だからね!カロリー?知らん。
「飴も、そんなに甘ったるくなくてカリカリしているのがいいアクセントですね」
お気に召したようで?まぁ生クリームは完全に自分の趣味で入れた。これにさらにコーヒーフレイバーの入ってる商品が好きだったのだ。他の木の実と併せてクロッカンて手もあるか。
「村である程度の加工、帝都で菓子店なんかの直売場とかあれば喜ばれるかなと思います。茹でたものもハマる人はハマるでしょうね」
おいしかったですし、といいながら内心でちょっと困っているのが本音。
ピーナッツ。そう、アレルギー源である。
(まぁいいか)
体の不調に関しては状態異常回復魔法もあるこの世界だ。なんとかなるなる。たぶん。
それいったら葡萄とか蜂蜜とか、本当になにも食べられなくなる。
「あとはそうですね、塩味のクッキーに混ぜるとか」
「なるほどなるほど」
栄養価も高いから冒険者達の携帯食にもいいしなぁ。カロリーバーとかどうだろう。
むしろ食べ過ぎることが肥満につながる方が怖いかもしれない。
その辺りを言い含めるといくつもの村を回ってきただけあって確かにとロックウェルさんはうなづいた。みかけの栄養状態よかったんですね。うん、酒も木の実も適度適量。
「あぁあとピーナツバターとか作れたらいいかな」
「バターですか?」
「バターもどきですけどね。これだけ油分が多ければひたすらすりこぎって、砂糖いれてもいいし」
バターを混ぜるタイプもあると聞いたことがあるが、元々が油分のあるものだ。ひたすらすりつぶしてけば十分。ただし砂糖は入れないと少ししぶいと思う。味と保存のために塩は入れたいな。パンに塗ってあぶって、あぁバナナものっけたい!ないけど!
なるほどなるほどとロックウェルさん。
私がこの人にぺらっぺらしゃべるのは酒米をみつけてくれたのが彼だからだ。
つまり崇拝対象なのである、といったらさすがに言い過ぎか。それでも彼がこんなことをしているもんだから私も自分の提案からスラムで仕事になりそうな類を積極的に動いてもらうようにと口利きするようになった。上がいくら潤っても根っこが乾いていればいつかは枯れるのだ。焼け石に水かもしんないけどさ。
「やはりメイさんに相談するとスムーズですね」
「食い意地張っててすいません」
なんかいっこもほめられてる気になれません。
とはいえとりあえずはピーナツ砕いてロッククッキーもやってみるか。
そういえばピーナツバタークリームでつくるクッキーあったよなぁ。
あぁしまったドレッシングに入れるという手も。甘いものばかりに目がいくのは私の悪い癖だなぁ。
「はは、メイさん用の試作にはサンプルが少なかったかな」
……マサカソンナコトー
主人公、移動能力がないので




