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ドワーフ街のバーテンさん。  作者: ほうとう。
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※カレー回です。



こんな話をご存知だろうか。

体調不良を感じるようになったらカレーを食え。

いやむしろカレーを食べたくなったのなら体調不良を疑え。

カレーの話である。

何十というスパイスがぶちこまれ、その半数以上が薬膳に通じる、かのカレーである。

人間、その時食べたものこそ体が欲しているという理論である。

疲れたときに甘いもの(=ぶどう糖)と汗かいたらスポドリ(=塩分と水)とか。

ちなみに某しゃぶしゃぶ食べ放題店舗にて薬膳だしなるものを口にした際「これカレーやん」とツッコミをいれた人間がいるとかいないとか。おいしかったです。

カレー、本来はインドの煮込み料理全般を指し示す言葉であった筈だが、ヨーロッパでカレー粉なる基礎を築かれ、日本人がカレールーなる絶対たる味わいを生み出したとされている。そういえばスパイス関係、どこぞのメーカーが独占しているせいでカレーチェーンそのものが少ないという話を聞いたことがあるけどあれ都市伝説だよね?

都市伝説といえばもうひとつ、船の上で揺れるもんだからしかたねぇとろみで対応だ!と海軍がカレーにとろみをつけたという話もあった。

なんにせよ、それだけでイベントが開催できるくらいにはみんな大好きカレー。ファミレスのオプション食べ放題の中にぶちこまれていたりいなかったりする店舗もある。

ただしもちろん例外あり。まぁそこは不思議な話ではない。なんにせよ好みというものがある。友人は某カレーチェーンのふつうが辛いと半泣きになった。元気だろうか。彼女のカレーはそういえばタマネギが大量だったと思い出す。

あぁそういえばどこぞの野球選手が朝からカレーしてるとかいって一時話題になったこともあった。

カレーは飲み物、なんて名言はおそらく今日もどこかで誰かが使っている言葉だろう。この世界にはなかろうが。そういえばとある漫画家がことあるごとにカレー中毒を主張していたがアレは治ったのだろうか。薬、薬膳。それはつまるところ、中毒性の恐ろしさをほんのすこし、確実に抱えている。ごはんにうどん、パスタにそば。ピザもパン類もどんとこい。

つまりは今回、そんな話。たぶん。


「え、マジで」

「はい」

思わず素がでてしまった。カウンター越しの目の前には荷物持ちくん改め自称外弟子少年。SSランクがひれ伏すスパイスの村からイベントリ持ちを見込まれ冒険者として生き抜きながら最近飯担当になったことでパーティーから大事にされているドラマティックな人物である。こっちの方がずっと主人公っぽいな。

そんな彼がしょんもり身をちぢこませ、割にやっかいごとを伝えにやってきた。

そうやっかいごとである。

「ごめんなさいししょー」

「師匠じゃないけどね、まいったね」

私の言葉も割と無理はないだろう。だってカレーは私が「持ち込んだ」料理だ。

過去ちらほらといたかもしれない転移者や転生者が作ったこともあったかもしれないが、少なくとも一般に定着していなかった。一応貴族籍のこの私でさえこの前彼からもたらされたスパイスで暴走してつくったカレーが今生初のカレーだ。世界を渡り歩いているアザミさんも同様とのこと。

が、予想だにしていなかった展開が待っていた。というより持ってこられた。

カレーのレシピはわが家門外不出である!と貴族がいちゃもんつけてきたというのである。すげぇなカレー庶民の味から随分ランクアップである。

もちろん彼は商売できるほどの資金は貯まっていない。

それでも創意工夫をして故郷で一旗揚げたいと斡旋所バンクの食堂で時々カレーを振る舞っていたらしい。店をするならばたしかに大量生産ができる腕は必須だろう。悪くない選択である。そしてさすがカレー。大人気になった。ここもわかる。

人気になれば面倒も増える。レシピおせーろだの引き抜きだの。

ただよかったのかアレなのか、今彼が所属しているチームはそれなりに名が通ってたらしく――だから斡旋所もGOサインを出したのだろう――なんとかよけいなことはされずにすんでいた。はいそこに貴族登場!門外不出だってんなら存在自体知らんがな、という少年のツッコミなど聞く耳持たず、なんとも法外な「使用料」を求めてきたらしい。

貴族が!こどもに!カツあげ!

レシピについては私の許可を得て(面倒だっただけなんだが)彼の名で登録済みだったために登録していない(なにせ門外不出なので)貴族の主張は一端お引き取り願うに至ったが、先方はご納得されていない様子とのこと。こっちが納得できんわ。

レシピの確認をしたい、こちらは師匠が自分のためにつくってくれたものだと(いつそんな話になったんだ?)割と強気で主張する少年だったが門外不出のそれをみせてやれば垢がつくとか拒否られた、と。

「垢て」

「愉快ですよねぇ」

遠い目をしながらぽつり、と言う言葉に「愉快」の色味はない。

強くなったなー。

斡旋所バンクの方からその師匠と相談してこい、と」

その様子では貴族の主張とやらも怪しいと向こうもみているのだろう。それもそうだ。

「どうしましょう?師匠」

「向こうさんの主張にもよるけどーーあぁそうだ。添えてるのってニョッキだよね?」

「あ、はい」

ふむぅ。彼の場合ニョッキからのカレーって展開だったから自然なんだけどもし先祖の人がやるとしたら、パンかうどんだよねぇ?多分。




斡旋所バンクにおいて私の知名度は低い。

そりゃそうだ。まず用がない。

自称弟子は例外として、客として何人か通ってくれている冒険者もいるが、ほとんどの人が店の雰囲気に合わない客を伴うことはほぼない。のんでのんでくってくってハイハイハイハイ!みたいなノリじゃないからねウチは。察してもらえて心からうれしい。

というわけで客もいないんですけどな。HAHAHA。

そういえば客の質を上げるには高めの値段設定、とは聞いたことがある。清貧を幻想とはいわないが、声高な低次元は確かに目立ち、存在していても埋もれるのだろう。図書館のような例外はあるがあそこは騒げば居心地が悪い空気がある。まぁようはTPOというやつだ。

で。いわゆる冒険者ギルド、その帝都故に大型といっていい本部その一角。

私は好奇心で生きている辺境伯の次男坊、つまりは二人いる兄のうち下の方、のちぃ兄を引き連れてその場所にいた。報酬はカレー、そしてアップルパイにチーズパイも約束している。安いものだろう多分。何人か片手で足りる知り合いや事務員たちは若干不思議そうにわたしを……いや、普段はボリュームと安さが売りの厨房をみている。

自称弟子くんを助手にし、久しぶりに炊き出しレベルの料理を開始。

ふっふっふっ、腕が鳴るぜ。

とはいえなれない厨房、ぬぅ勝手が難しい。

地元ではなにかと辺境騎士団に作っていたから手慣れたものだ。やってたのはすいとんとか豚汁もどきとかだけど。味噌がなかったので。

王子様ヅラの貴族が小麦粉こねてるというのはシュールかもしれないがうどんはちぃ兄の方が美味い。そうカレーうどん。アザミさんのおかげでこんぶだけどだしもしっかりとれるし醤油はまだちょっと時間かかるけど魚醤は悪くない仕事をするだろうから和風カレー。油揚げ入れるのが京都風だっけ?ネギがほしい。九条ネギがほしい。

そういえばネギって関西が青いとこ、関東が白いとこを好むという話をきくが、薬効成分が全く異なることをご存じだろうか。どう違うかは忘れたけど。風邪の時引きはじめと真っ最中で求めるものが違うらしい。加熱しすぎでは意味がないらしいが。くたくたになったの美味いのにねぇ。

にく・じゃが・たまねぎ・にんじんと王道組み合わせにしても個人的にはじゃがいも・にんじんは別ゆで派。溶けるくらいジャガイモやわらかくしてもったりしたのも嫌いじゃないし今回は食べる相手が万年欠食児童な冒険者さんたちなのでたっぷりいれますじゃがいも。すじ肉とかドライフルーツのペーストとかどんどかぶち込んだので栄養もうまみもたっぷりだ。チャツネ作るのが面倒だったというだけなんだけど。

トマトも入れた挽き肉もっさりドライカレーは試験販売中のチャパティに挟み込む。

ピーナツバターは手には入ったのでこいつをいれたバターチキンカレー。そう。世界一おいしい料理として発表された際「なにそれ?」とカレー狂の日本人が首を傾げたマッサマンカレーも仕上げる。ココナッツミルクないけど。あー、グリーンカレーはちょっとクセが強すぎるので今回はパス。代わりにトマトカレーもやろうか。ほぼトマトとタマネギの水分。いうまでもなく甘口だ。

さて察しのよい方はご理解いただけるだろう。

コレ全部レシピもってるとか言い出したら腹抱えてわらってやろうとかそういうアレである。カレーと一口にいっても千差万別。さて?

「めーさん」

「はいはい」

別のが先に釣れてしまった。

「冒険者の方たちが仕事にいかないのです。主にめーさんのせいなのです」

「カレーのせいですよ、私じゃないです」

「めーさんのつくるかれーのせいなのです」

ぷんすこ、という擬音が似合うふくれっ面で怒ってくるのはカプラゼア。ホビットの女性で少女という年ではないのだが少女にしかみえない小柄(種族的に当たり前だが)な女性だ。私の腰あたりまでしかない身長をきゅんとのばして私をにらみつけている。お持ち帰りたい合法ロリだ。甘いものいっぱい食べさせて幼少期に自分が着せられたフリルの鎧としかいえないドレス着せたい。既婚者で時々旦那さんと店に来てくれるけど。

「ただですらかれーは人気なのです。そこにきてめーさんのかれーはいつも以上に興味ぶかいのです。色でけーえんしてたひとたちもこれならというのもあるのです」

そんな風にみられていたのかカレー。どこにいっても宿命だなウコン(ターメリック)。

「じゃぁ討伐証明と整理券引き替えるか。規模は問わず転売不可。一人一品まで」

よく通る声でちぃ兄がいう。

あくまで提案だった筈だが、場の空気が変わった。

遠巻きに「開店です」という声を待っていた人たち、カプラゼアが困っていた人たちともいえる。いやぁあつくるしい。

「じゃぁ種類も1枚ごとに先着で選んでもらいますか」

あっという間に人口密度が下がったのはいうまでもない。

「さて。次はカレーパンだ」

「まだつくるのか」

「嫌がらせですからねー。ニンニク効かせて練りパイも焼きますかねー」

さくさくしたヤツ。さくさく。

「おまえ今度騎士団でこれつくれ頼む」

命令口調なのに下手に出すぎてる兄ちゃんの言い方には笑わざるを得ないのだが。

釣り上げたいのはそっちじゃないんだ。

「めーちゃん!揚げナス入れよう揚げナス!」

「そっちでもない!なにしに来たのアザミさん!」

突然飛び込んでくるSSクラスランカー。

せっかく斡旋所バンクをでようとしていた連中が笑顔全開のいける伝説に注目している。

「カレーたべに?」

「真顔か」

この世界の基準でいえば若造にしかみえない御仁は確かに手にナスを持っていた。あざやかな紫色だ。割り箸の四肢をさして牛にすればさぞ立派に違いない。

「ローゥエンさんが教えてくれた」

「あのおっさん」

大方メイの奴がおもしろいことするみたいだ、とでもいったのだろう。そして私がやるときは大概食べ物である。

「メイ、彼は?」

「SSランカーの冒険者のアザミさんです」

ちぃ兄に言ったのだがおぉおお、と周囲がどよめく。しまった私の言葉で確定だったか。

カプラゼアがにらんでくる。こなくそかわいい。

「あぁあの偽翼竜?妙になんていうか」

対してちぃ兄は不思議そうに自称弟子少年に敬意を払って最敬礼している中年手前の男性を眺めている。あぁうん神認定だからあの子。あの人の中で。

改めて参拝が終わったアザミさんはニコニコと兄ちゃんに頭を下げる。

「はじめまして。サチBAR専属のプラントハンター希望のアザミともうします」

「すでに非公認だと思う」

思わずボヤく。非公認にして貢がれている身としては複雑だ。

「そうなのか」

ちぃ兄はわりとさらっと受け入れ?て私をみた。

「シナモンみつけてくれたのは彼です」

「君が我らの英雄だったか」

「同類か」

思わずつっこむ。アップルパイ好きな二人の兄にシナモン入りが基本だからと焼いて渡して感涙されたのは記憶に新しい。

苦手な人もいるものなぁシナモン。ただシナモン、いわゆる日本のニッキとちょっと本来は違うらしい。日本ではよくあるよねそういうの。

アザミさんがみつけてきたのは甘いやわらかさを持っていたのでたぶん「本来」のヤツなんだろう。営業面でちぃ兄を前にニコニコし、カレーをみてはニコニコしている。トマトカレーにナスぶちこむかな。

「ラードで揚げたナストッピングのトマトカレー。いいよね?」

「はいはい」

女の子の敵みたいな代物だけどね。肌にはいいのにカロリー的に。


とまぁこんなことしていたらそろそろ近いところのチームが帰ってくるかなー?って時分に件の貴族様がいらっしゃった。

いらっしゃったのはいいんだけど思わず「誰ぞ」とつぶやいてちぃ兄をみることになった。一応貴族様なので一通りの顔と名前は一致させている。

そう、聞いてた名前と顔が合ってない。代替わりだろうか。

少なくともかの家は没落寸前であのように太れないだろうに。

あぁでも貧困家庭の方が太るって話もきいたな。野菜より肉のが安上がりだからバランスが悪くて、と。いや現代日本とは事情が違いすぎるか。

「ありゃこの前貴族になったばかりの商人だ」

「あぁ金で買った系」

ちぃ兄のことばに納得する。最近の事情までは知らなかった。

買われたのが地位そのものなのか、それとも確かいたはずの令嬢の夫という立場なのかまではわからないが。

ターゲットは自称弟子に絞っていたのかその人物、人だよな?オークじゃないよね?あれ。っていうかあれ攻撃した方がいい人?神様になにしようとしてるの?

混乱している私とブチ切れそうになっているアザミさんを押さえてちぃ兄がずいと少年オークもどきの間に入る。

元、なのか今もなのか商人のまず必須スキルは見極めとその記憶力である。横柄な面構えが一瞬でアイスクリームもかくやととろけたのをみて私とアザミさんは抱き合って飛び上がりそうになった。だってほら不気味で!

「すごい。アニメみてるみたい」

「現実だけどマジかよ作画変わった」

阿呆な会話をしている間に向こうの話が進んでいく。

果たして辺境拍の次男坊。商売をしない理由はない。

まぁつまりアレだ。商売人の顔だ。

果たしてその顔が「うちにあったレシピを再現できそうな冒険者にその譲渡を引き替えに再現してもらった」というちぃ兄からの話を聞いてがっちがちに固まる様は愉悦と言うにふさわしい。

「あ、麻婆豆腐たべたい」

うっさいですよ食いしん坊ランカー。

「え、だって愉悦って」

ちょっと、理屈がおかしい気がするんですがそれは。

いくら貴族といえどもランクはある。

ウチの実家は最高峰枠。御三家とかトップ5とかに名前があがる。

なぜか。王家への覚えがいいからだ。国境を任されるということは謀反の可能性なしとみられていることと変わらない。

故に発言力もある。国境なのだから私兵もつよい。ちなみに領民からも信頼は厚い。財政も豊か。末娘が趣味に生きれるくらいにはその地位は盤石。うっわ、うちの実家チート過ぎ?

で向こうさんはといえばガキにカツアゲするアホである。

ウチが出所ってことにして反論できないくらいには行き当たりばったり。

嘘はいっていない。先祖代々ってわけじゃないだけで。

オーク貴族、オー族は自称弟子くんをにらみつけて「なぜ言わなかった」と八つ当たりをしている。だっていっても信じないでしょあんた。

「今日はほかにもあったレシピを同時に再現してもらったんです。せっかくですから市民にも広まればと思いまして」

辺境拍の次男にして辺境騎士団の頭が演説めいた声を上げる。

自分は脅迫の話などひとつもきいていませんがなにか?とばかりの王者の態度。ちゃちいことには目も向かない上から目線。

よろしければ卿も味見をとか超マウントをとるところでぶるふるふるえる体がいえ、体調が優れませんで、と逃げに入る。一安心かな?

「妹のカレー美味いのに」

ぽつりとつぶやいたちぃ兄の言葉が妙にすねているというか残念そうでどうも誘ったのは本音らしいと気づいてため息が漏れた。

てかいつ食べたんだあんた。そんな時間はなかったはずだぞ。


盛り上がりませんよ。酒も絡んでないのに。

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