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ドワーフ街のバーテンさん。  作者: ほうとう。
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最近ちょっと忘れがちではあるが、わがサチBARの主たる客層はいわゆる職人たちである。

芸術性の高いものから実用性重視までその範囲も技術もお値段も多岐にわたる。

量産品にオーダーメイド。場合によっては複数の職人による複合芸術に発展する場合も多々ある。

宝石研磨師のケイリーと防具鍛冶師のカジェがデコをつきあわせて相談しなければならない案件がちょいちょいあったりするのもわかる。うん。

「なんでウチでやるんですか」

「腹減ると喧嘩になるから?」

「暴走してもメイが止めてくれるしな」

わたしゃ委員長か。

にぎわっているって店じゃないから別にいいんだけどさ。

羊皮紙を真ん中に、野郎二人が喧々囂々。

なんでもどこぞの貴族のぼっちゃんが騎士団入るからって親御さんが奮発したらしい。

命を守りたいからと魔石まで使うってんでこの状態だ。

過去の確認になるが、魔石を「装飾」に使うのには資格がいる。

実用性が高いため、アクセサリーだけではなくこんな風に武器や防具の一部に組み込む場合も少なからずあるのだ。

が、そこは複雑。起死回生の一手になるとはいえ、その為に本来の安全性を犠牲にしていては意味がない。

使った直後ぽっかり鎧に空いた穴に矢でもぶち込まれたら本気でわけがわからないよになることだろう。

成仏できそうにない。あれ?こっちでも成仏っていうんだろうか。往生?

で、魔石。いうまでもないがでかい方が威力は高い。

あと研磨のしかたによっても熱伝導ならぬ魔力伝導が影響するのかいろいろアレらしい。どれ。

「今回の場合見栄えだって要求されるわけだろ?」

「それならでかいのひとつ、周りに増幅系のを配置するか?」

「そうなると使った後穴ぼこだらけだよなぁ」

「その穴の周りに細工彫るとか」

「ぼっちゃんの得意魔法とあわせると」

「予算が」

大変なことで。

「はい、根詰めすぎるとと頭痛くなりますよー」

とかいいながら用意するのはしっかり冷えたビールと本日のお通しは枝豆。

そう、枝豆。大豆があるなら枝豆もある。もやしもできる。

豆乳からの豆腐もそこから発展する油あげも藁もあるので納豆もできる。

過去、とあるマンガで「日本人は豆しかくっとらんのか」とつっこまれていたが割と暴論ではなかった気がしている。豆の加工品多すぎる。豆腐の味噌汁と納豆に醤油かけて大豆ミートの唐揚げとモヤシの大豆油炒め。豆乳かんてん。完璧じゃなかろうか。果たしてその中でももっとも贅沢な食べ方ではなかろうか、枝豆。未成熟な彼らを積み上げ塩でその身をこすり洗い、ゆで上げる。調理法って言い方かえるだけで若干ホラーよね。

しかしこの辺にはないものなので二人はきょとん、としている。

「え、なにこれ」

「あぁそうだった」

失敬失敬、と私は一つをつまんでぷにゅっと中にある緑の宝石を押しだし口に入れる。

うむ旨い。この手のものをはじめ、酒米とかこの辺にはない農作物は実家に有り余っている土地で人を雇ってつくってもらっている。

量がそれなりにできたので刻んでクリームチーズと和えてカナッペなんかもいいかもしれない。だが一番美味いのはやっぱこの塩ゆでだろう。

あぁもうかみしめるこの味わいが泣きそうになる。おいしい。

「とまぁそんな感じで食べます。殻はこっちの小皿に」

割と無駄にこだわってきたウチのお通しラインナップにおいて、究極に楽な部類に入るがシンプル故に美味いというのは究極な贅沢といえる。

見よう見まね、力加減わからなさそうに枝豆をぷっ、と取り出すお二方。

豆である。だが一般に出回るような乾燥させて保存を優先させたものではない。

だからその食感と味に二人とも驚いたようだった。

「青臭いもんかと思ってた」

「香りもいいな。美味い」

そうでしょうそうでしょう。

「ただ腹にはたまらないな?」

「豆相手に油断しているとひどい目にあいますよ」

確かに食べ応えに限って言えば仙豆とはいくまい。

だが豆だ。そのみっちり感は枝豆とて変わらない。

メリットデメリット隠さない意見はありがたいけどね。えだまめごはん食べたい。

「あーなぁ、ここんとこ開閉式にしたらどうだ?」

「開閉式?」

「こうさやに豆入ってるみたいにさ」

「ロケットみたいなものか。面白そうだな。状況に応じて魔石の組み替えが可能とか」

アタッチメント構想かぁ。

――えだまめデザインとかにならないことを祈ろう。

「必要に応じて魔石を組み替えられるって構想面白そうだな」

「別に鎧である必要もないな。ベルトとか小さいのなら腕輪とかも応用きくんじゃないか?」

「小さいのならご令嬢の護身用とかも手になるかもな。いいじゃないか。元々取り外しを想定しているのなら使い捨てよりもずっと手をかけられる」

「使い捨てのに手をかけるの嘆く人もいるしなぁ。カナリヤにも声かけてみるか」

失恋体質の宝石細工師の名前もでた。宝石研磨師とは切っても切れない腐れ縁である。

てかなんか割と一大プロジェクトになりつつないか?メイン忘れてないよね。

「新技術の提供というだけで相手は喜ぶだろう。そうすりゃ宣伝になるしな」

「となると留め金細工の応用かぁ。ロズウェル親方に助力願いたいとこだな」

商工会の青年部みたいなこといってる。いや首をつっこんだことはないけど。

今度は金属加工師のエルフという究極の変人まで出てきた。この二人にはこういうところがある。当初の予定からどんどんアイディアがでては脱線するのだ。

「盗難防止も考えないとならないから割とコストかかるぞ」

「なぁマスター、ほかにリスクってある?」

「特許的な?」

別にリスクという程ではないけれども。

ただそんな複数人数でやろうとするとなると大変ではなかろうか?

「ドワーフ街の名前で特許とるから大丈夫だとは思うけどな」

街の名前で特許とは?と首を傾げる。

なんでもこう広い範囲での複合技術案に関しては街全体での無尽会に帰属することになるそうだ。方向性としては互助組合の色合いが強く、たとえば労災やら結婚祝いやら見舞金やらはここからでる。

「そういう意味じゃメイちゃんも一口噛んでいるからなー」

「だなぁ。お、こいつめちゃくちゃビールにあう!」

「マジか」

そりゃあ定番だし。

っていうか目線も考えもあっちこっち大丈夫かなぁこのひとたち。

羊皮紙のメモにはちゃんと今言ったことがかかれているあたり、仕事に関しては真剣なんだろうけれども。

サービス残業という考えはこの世界には当然ない。

労基法など定まっていないのだから無理もないだろう。

奴隷制度はないけど雇用制度はわりとしっかりしている。

それでも職人は趣味と仕事の境が曖昧で、貴族の屋敷などで働く人も住み込み二十四時が当たり前だ。ただ週に1、2日シフト制で体調がすぐれない時など休みたい時は休めるし、実家に帰るといって例えば2、3週間の長期休みをどかんととることも可能だ。

移動にはどうしたって時間がかかるからだ。

話がズレた。

とりあえず寝てもさめても自分の手元のことしか考えない連中でなければこの街では暮らせない――とまぁ、そういう話である。

「さぁ、ある程度話がまとまったらしいところで注文有りますか?呑まないで本格的なデザインに入るってんなら流石に帰ってもらいますよ」

そしてそれは、酒を主たる人生の基準にしている私にもいえることなのである。


平成ライダー的な(


補足

無尽会、は元々山梨周辺における独特の集団組織です。昔は他の地域でも行われていたとのこと。

井戸端会議拡大版とでもいいますか、仲間内で定期的に飲み会ついでにお金を集めて積み立て、新居やケガ、なにかあった時に放出したり貯まったらそれはそれで旅行資金にしたりします。同窓会的な要素だったりご近所だったり仕事仲間的な要素だったり集まり方は様々です。

歴史の授業でやっただろう相互監視・連帯責任を主とした五人組ほどの絶対性はありません。

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