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ドワーフ街のバーテンさん。  作者: ほうとう。
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いつも以上に雑学全開。

シャルトルーズ、という酒を知っているだろうか?

とある修道院でレシピが門外不出の扱いをされている薬酒である。

もちろん向こうの世界の話だし、法律の関係である程度はその中身もなにも公開されている部分はある。そういえば某髭のおっさんチキンのとこはスパイスを3カ所で分けてつくり秘密保持してるんだったっけか。元はコカの葉なコーラの味も秘密なんだったっけ。配合的なものはともかく。

そういえば成分表ってとりあえず一番多い量の食材から並べられてるそうだからちょっとその辺気にすると好みの味に逢いやすいかもしれない。

それはともかくとしてこのシャルトルーズ。薬酒とはいうが普通にカクテルなどにも利用される普通にフレイバーリカーだ。

もちろん自分には再現は不可能。そもそも飲んだことはない。

なのでウチでは適当な薬草を洗って乾燥させてつめつめ漬けたのをそう呼んでいる。

薬事法に近いもんがあるのも理由だ。素人の手がけた薬程恐ろしいもんはない。

かのイタリアは時の王より王の地位にいたメディチ家もすちゃらか医術がひとつ瀉血で稼いだ一族だ。あの丸6つの紋章は人の血を吸ったガラス玉である。あれ?串刺し卿より吸血鬼してない?

それはともかくルネッサンス文化という城の石垣には不衛生な医療行為の被害者達による怨みツラミにまみれた悲鳴が埋まっている。

それはともかく実質はハーブ酒といった方がいいだろう。なにせ気分とタイミングによって毎回味が違うくらいなのだ。

勿論「本職」に比べたら効果などないに等しい。味がすべて。

酒が百薬の長と呼ばれていたのは今は昔なのだ。いやこっちではマジの意味で生命の水になるわけだけど。


そんなシャルトリューズもどきことハーブ酒を好むのは「魔女」のお姉さまだ。

どちらかというと錬金術に近いタイプのインドア派魔女ことゼビーチェ嬢。御年おいくつかは知らない。エルフさんの年など人のそれと一緒に考えてはいけない。

「嬢、これさー持って帰りたいー」

「だめですよー」

美しい金の髪にペリドットの瞳。

透き通るような白い肌に無駄に整ったお顔とぴょこんとヨコに飛び出すとがった耳。

とまぁ全体的に色素が薄いせいかやたら現実味のない美人がジョッキサイズの酒をぐびぐび飲むというのは現実みがない。

長身でスレンダーな彼女に出したおつまみは半分ほど減っている。

ぺらぺらの薄切りにした人参でつくったグラッセが本日である。レーズンも入れていてちょっと甘め。ほぼお菓子。

「だって実家の妹にのませたいよーねー」

「妹さんお誘いされたらいくらでも」

「だーめ。妹巫女やっててさぁ。いっつもまっずい酒のまされてんの」

「まずい酒?」

巫女さんで美味いわけじゃない酒というとぽっと出てくるのは口噛み酒だがアレは巫女が作る方だしなぁ。

「そう。まっずい酒。あたしも巫女候補だったから口にしたことあるんだけどまーまずいんだわ」

「なんのお酒なんです?」

時代問わず世界問わず、酒というのは神と結びつけられる事がおおい代物だ。

口噛み然り、救世主の血然り。多分酩酊状態というのが幻視の糸口となるのだろう。

好奇心だけで問いかける。エルフの秘酒、気になる。

「そっれが聞いてよ。ワインにハーブ入れたのを火であぶって出てきた湯気を冷やしたものらしいんだけどこっれが味がないっていうか酩酊感はすごいンだけどのどに刺さるというか」

「蒸留酒?」

なるほど、なるほど?え、マジで?

「じょーりゅーしゅ?」

「うちのブランデーと基本作り方一緒ですよ」

ただハーブその時点で入れたら香り付けの意味なさそうだなぁ。

いやそれより苦みとかでるかもしれない。どのみち美味いやり方ではないだろう。

詳しい説明はせんけど、それこそ歴史の中で築かれた知恵のようなものなのだろう。

「へ?だって嬢のブランデー透明じゃないしおいしいしよ」

ありがとう!オーク材の代わりみつけんのマジ苦労しました。

「樽に詰めて香りをつけてますからねぇ。新鮮じゃなきゃだめなんです?そのお酒」

「儀式だからねー」

じゃぁウチの酒もっていってもだめじゃん、と想うのだが「口直しって大事じゃない?」とのゼビーチェさんの主張。まぁわからんでもないが酒の口直しに酒って。

「味ごまかしたいだけなら口にする前にこっそりレーズンでもしこんどきゃいいじゃないですか」

「あ。いいねーそれー」

いいんかい。飲む前に口上とかないのかな?

「なんていうのかなぁ。そもそもで酒を美味くしようって発想がないんだよねぇ。

あって当たり前、存在して然るもの。年の出来良し運次第」

「あーまぁうん」

温度管理だの何だのこだわっていてはつたない技術では半分も飲めない。

私の店にあるものが道楽として成立するのは、そういう「当たり前」が土台にあってこその話なのだ。

「だからおいしいハーブ酒っていいなーって」

「あちょっと順番入れ替えるだけなんですけどねぇ」

蒸留酒でなければ漬け込み酒はあまり美味くいかない。カクテルならばまた事情は変わるけど。

「あとはそーですね。器の底に凍らせたレモン張り付けておくとか果汁凍らせておくとか」

「嬢の発想いつもおもしろいねー!」

カラカラ笑う魔女の仕事はそのハーブを使うことを主とする。

所謂ポーションとかそういうのを開発・製造販売するプロなのだ。

まぁ味が二の次になったのは酒もポーションも変わらない……ということで。

「あー、そういうのならありかもねぇ」

しみじみと呟く彼女の様子は悪戯をもくろんでいるようにもみえた。

エルフだって生きている。

俗世を愛して楽しんでいる。

……祭っていうのはその地域での不満解消、ストレス解消を大きな目的にしていると聞いたことがあるが、それ以上に「なぜそうするのか」と考えた時、それはその地に人を留めるためという考えも出来るだろう。

彼女の妹さんは、どんな風にその立場を想っているんだろう?

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