serve16
こけもも酒を造ろうと思って街の外に出たのは本当に気まぐれだ。
決して一中隊程度のオーク連中を探しにきたわけではない。
ファンタジーものの基本事案・スタンピードというほどの被害は出ないだろうが、その構成はいろんな意味で悪名高きオークである。
ちなみにうちンとこでもくっ殺案件だ。捨ておけない。
被害を被る場合、その大半はビキニアーマーじゃなくって街の娘らなのである。
うちのお客さんだって対象だ。素材集めはドワーフ街新人たちのお仕事だがそれは安全が保障されているからこそだ。
「さて」
仕方がない。街の入り口の衛兵に連絡を取るのがめんどくさいのでここらで片づけておくことにしよう。兄らには一発でバレるだろう、私のやり方で。
ヒトと同じくモンスターにも水要素はある。
そう、生体の7割は水でできている。そうじゃないのもいるけど肉が残るようなのからは血が出るから。つまりできるのだ。
その水分を沸騰させることが。
窒息も可能と思うんだけどそちらは試したことがない。
実はそれに関しては首吊り自殺の話を聞いたことがあるからだ。あいつらもメシを食うのである。そしてそれは消化されてはカスが出る。あとはお察しください。
とりあえず水が湯となったとしてもH2Oであれば私の領域。
タンパク質の凝固温度は42度。水銀体温計の目盛りにある限界はそのまま生存限界を物語る。その道理はなんでか基本的なモンスターでも変わらない。炎を吐くような連中はまた別だろうけれど。体温からすれば10度にもならない温度差に魔力の消耗は少ない。火をぶつけられるのとは違う。文字通りの直接攻撃。
――点火。
「アホの子かおまえは」
「ひっどい兄様。陰の功労者よ私は」
「オークのミイラなんつーもんができちまう人間が問題なんだよ」
誰にでもできるのに。すくなくとも水魔法を使えるなら。
そういったら人間にもできるから問題なんだよと返ってくる、めんどくせ。
「周囲はいっさい燃えても濡れてもいない。水分が奪われ乾燥しその肌にいくつもの火膨れを残している武器痕跡のないオーク。それを人間に応用するとなるというまでもなく暗殺余裕ってわけだよな」
言われて否定はできない。
むしろサイズが小さい分オークより簡単だろう。ただヒトの場合はわざわざそこまで面倒なことにはならないと思うのだ。
だって自分は元とはいえ日本人。この世界にいくらなじんでいても割と倫理観のリミッタースイッチが固い。
うちの店が被害にならないならその辺無茶はしないだろう。たぶん。
「まぁ必ず殺さなくても、足だけとかツブすのも可能ですね。気づいたときにはもう遅かったりするし」
「そんな危険なノを放っておけるかって、騎士団まで出張ったの知ってるか?」
「え」
「え、だよ。せめてひととなりは確認せんと怖くて仕方ないんだろう」
人間だからなと言う人間。なんという皮肉だろうか。
それにしても騎士団かぁ。実家の保護でどうにかなるかな。
「なったらここに説教しにくると思うか?」
「うわぁん」
わたしは、わたしはくっころあんけんを止めたかっただけなのに。
「いやなんだよそのクッコロて」
さすがにいやんあはん系なので黙っときます。すまん兄様。
偽翼の英雄様とかおしえてくれるよ?多分。
「まぁ多分大丈夫だ」
「たぶん」
「おまえ自分トコの客どんなの抱えてるか自覚あるか?」
「まぁいちおう」
ピンキリデスネ。
ただ発言権の高い人がちらほらいることは承知しているつもりですよ?
「そうだな。ただまぁちょっと当分おとなしくしといてくれ。オークの連中はすべて片づけたんだな?」
「そりゃ間違いなく」
「ならいい。なんで外でたんだ?」
「かー様の好きなこけもも酒造ろうかと」
「市で買えよ!」
「熟してちゃだめなんだよ!」
その辺はこだわりですのことよ。ふんす。
かわいい妹の頭殴んなよ兄。
一部ラストでやっと外出た主人公




