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ドワーフ街のバーテンさん。  作者: ほうとう。
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醤油がそうそう簡単にできあがる筈もなく、塩わさびとか魚醤わさびとかな通な刺身メインの食事だけで微妙にお預けをくらった同郷さんは(半年くらいかかるから仕方ないね)「使えそうな食材探し」の旅に出た。ちなみにかれの移動能力チートは転移ではなくて移動手段だ。魔導飛行機なるアレな魔道具を超古代遺跡で発掘して使っているのだという。なので割と急ぎ便の依頼も多いのだとか。

そのついでにプランツハントを引き受けたということになる。プラントハンターというのは(向こうの)現在でも存在するという「新種探し」の植物探索者のことだ。まぁこの世界ではあんまり意識されたことはないのだろうが、科学的にもまた園芸的な技術でも割と需要があったりする仕事だろう。私みたいな開発者枠に立つ人間には重要な相手である。まぁ今回の場合プラント限定じゃないんだし、慎重にしないと植物にだって病気はあるのだが。あ、なんだろう。フードハンターのがいい?

しかしありがたいけど、SSランクかぁ。厄介事フラグが乱立してるなぁとかのんきに思えたのは何日くらいのことだっただろう。


「ここにSSランクハンターのアザミが滞在していると」

「してません」

飲みにはくるがそれだって一週間に1、2度だ。

「いやだが」

「してないし窓口じゃないので」

伝言も受け付けないとけっぱらったのは貴族然としたおっちゃんだった。

たぶんどっかのぱーちーで見かけた気がする。気が。残る気なかった貴族界の連中なんて覚えちゃいないってば。王族くらいはそりゃ頭にたたき込んだけど。

「お前ーー様にっ」

興奮した声と共に仕えている騎士が剣を手に掛ける。マジか。アホだ。

ちなみに興奮しすぎてる上に早口で貴族の名前は聞き取れなかったが危ないのは好きじゃないのでちょっといじる。柄の部分を水で濡らしたのだ。慣れない感触にびくっと騎士が目を見開く。本当ならびしょぬれにしてやりたいところだがいたずら程度で十分だろう。

切って当然とでも思ってたのか、普段の短気が押さえれたことをほめたいのか、それともこちらの魔力に気づいたか。正直相手の反応は全く読めないまま、困ったなとあんまり困ってない調子でつぶやく。

さてむしろこちらが困った。うちの店で飲食しない客は客ではない。神にも足り得ない単なる迷惑な通りすがりだ。

「アザミさんは確かにうちの常連ですがただそれだけです。ドコに住んでるかもどういう稼ぎかも一から十まで聞いているわけではありません。ただまぁうちのご飯とお酒を気に入ってよくきてくれるだけです。なにか?」

さぁここが飲食店だと言うことも伝えた。最終通告だけどどうですよ?ミスター。

とか思ってたら入り口から「すまないが退いてもらえないか?」と声がかかる。

やっぱり騎士がかみつこうとしてその勢いが急激にしぼんだ。声からして予想はつくが露骨すぎやしなかろうかといった声色だ。

「あぁグルーナクさん。おつかれさまー」

「ん?あぁメイ。ちょっと聞きたいことがあってな」

ぐいっと入り込んでくるその人は騎士団服だ。所属を表すライトブルーに金糸がすごく似合う。

「はい?」

「鉱物屋に聞いたんだが麦茶買えるそうだな」

「そっちか」

鉱物屋は幼なじみにして騎士団所属、整備班単独トップのアーノルドのことの筈だ。

騎士団どころか城内の魔器機のたぐいをほぼ100パーセント把握している伯爵領の五男坊である幼なじみはなんだかんだと有名なのか。

「まぁ酒じゃないんで売れますよ」

「くれ」

「買え」

「買うよ、売ってくれ」

「どのくらいです?」

「とりあえず1kg」

「おぉぅ。作り方知ってましたっけ?」

若干コントめいてやりとりをする自分たちを貴族様方は信じられないとばかりにみつめている。ここで露骨に今気づいたように上帝直轄騎士団長は邪魔な連中をじろりとみつめた。

「おや。この店に貴族は立ち入り禁止ではなかったか?メイ」

「立場を隠されてる人なら入れますよ。尋ね人のようですからそこまでは拒否しません。知らないですし」

「そうか。みつかられましたか?」

「い、いえ」

ひっくり返ったような声が聞こえる。いやぁベタい。浅見○彦並にベタい。それがいい。

そっからはもうさくっと帰って行く貴族メンズを超絶笑顔で見送りお客様をおもてなす。裏はキュウリか。そんなわけで牛肉しぐれとキュウリとモヤシの和え物どうぞ。勿論麦茶も。食事休憩である団長殿にはさて何を用意しようか。

しかしいつもぼっちでしかもいいタイミングの時にくるよなこの人。いやいいんだけど。

んー、どうしよう。生パスタの仕込みがあるからラビオリにするか、それともラザニアにするか。ラザニア食べたいがミートソースとホワイトソース、両方をつくってる時間はない。ラビオリにしよう。うむ、自分の飯ではないんだけどな。

キノコと挽き肉を刻んでチーズ入れてハーブも入れて、挟んでカットして茹でてその間に刻んだ生トマトとミントのソース。へいおまち。

「これもパスタか?」

「保存には向かないタイプのですけどね」

向こうではゆでるだけ状態で売ってはいたが。

はー、と関心した声を上げながらスプーンで一口。美味いと言ってもらえて光栄です。

「しかしバリエーション豊富だな」

「ソレが売りなんで。またきてくれればほかにもいろいろ用意しますよ」

近い内、根性見せたSSランク冒険者が米をみつけてくるだろう。なんとなくそうと確証している自分がたしかにいる。

「商売上手なもんだ」

「引き出しがある内が花なんですよ」

あと食材。

「そういえばグルーナクさん。アザミさん知ってます?」

「偽翼竜のアザミか?」

「そんな二つ名が」

三〇すぎた日本人男子の感性にはキツかろうな!

「移動に長けていてなおかつ強いからな。みかけはそんなに強くみえないにも関わらずに能力はまさにドラゴンだからな。そんな風に呼ばれていると聞いたが」

「へー」

すごいなにっぽんのさらりーまん。

「その手のものには興味がないと思っていた」

「実際あんまありませんよ。ただまぁ利害の一致ってヤツです」

「彼と?」

「いんにゃ。ごはんです」

らしいなという声が耳に痛い。そんなこたぁ自覚している。むしろ誇りだ。

「しかし思ったよりもアザミさん大人気でびっくりですよ」

「そうだな。仕事は誠実、報告も丁寧で生態系関係の研究者たちがありがたがることが多い。足の速さはおそらく世界1だ。鳥人すら彼にはかなわない」

機械つかってのことらしいが、だからこそか。

「荷が届く、ということはそれだけでアドバンテージだ。戦争するにもな」

「なに、クーデターの可能性でも?」

「滅多なこと言わないでくれメイ」

よけいなことを言ったのは自分だろうに、苦笑いして肩をすくめるというのもどうなのか。絶対的な自信が伺える。

国同士が戦い奪い合うようなものはなかなかこの世界にはない。

基本的に魔物という共通の敵がいるからだ。どこの国も基本的には「人の拠点」以上の意味はない筈である。

だがこれが内部となるとちょっと事情が変わる。権力欲というものはどうにも中毒性があるらしい。井の中の蛙たちによる相撲大会。面倒な話だ。

「めったなことにならないことを祈りますよ」

誰にかはわからないが。

「メイが祈るなら効果がありそうだな」

……お供えでもすればいいかな?



「それにしてもアーノルドとのつきあいあったんですね」

「今城でいなくなったら困る人間トップだろうな。国王とかすっとばして」

「あうとぉおお、逃げて幼なじみ!割とマジで!ブラックのにおいしかしない!」

「なんだブラックって」

この世界に労基法は存在しない。

しかしだからこそ声を大にしていいたい。

「己の限界を越えて働いて感謝も謝礼も得られない状態になることです」

「こっっわ!あぁでもアレは楽しそうだぞ?」

この怖いと思える感性を持っててね兄も。あんた実質人事のトップなるでな。と心の中で貴族街の方に祈る。効果あるかもしれないらしいので。

「今はですね。でも人間ていうのは増長するんですよ。あれができたならこれもできるとかあっちも追加でとかついでにあの辺もとか平気で言い出すんです。そうしたら本来の仕事が結果的に遅れて、どうなると思います?心が壊れます」

上に立つものは努々気を抜く事なかれですよといえばさすがに向こうも棒を飲み込んだような顔になる。小娘が言う内容じゃないのはわかっていたがついつい。

「本来の質忘れる事なかれ。貴族はふんぞり返るのが役目じゃないっていかほどの人が覚えてるのやら」

元々貴族というのは武勲を上げたものの地位だ。つまり貴族=戦士であるのが本来の構図である。

「貴族であることをやめたお前がそれ言ってるんだから世話がないな」

「そんなもんですよ」

思い入れがないから言いたい放題いえるところはあると思う。

「やめれてよかったと思いますよ」

深い意味はない。ただただ、性に合わないというだけの話だ。




「というわけで麦茶なんだけど俺の分とだんちょーの分とりにきた」

「よけいな仕事さすなっていったばっかなんですけーどーねー?なんであんたがおつかいなんかしてんのよアーノルド」

「よけい?なんかそういえば上帝騎士団長が息抜きいってこいっていってたな」

「あ、そうなんだ」

「うん」

あー、配慮の方だったのか。

ちょいちょいとこうやって顔出した時にはちょっと時間がかかるおやつでも用意してあげようかな。とりあえずたこ焼き食べる?中身ベーコンチーズだけど。


上司の配慮もあれやこれ

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