serve8(後)
さて、例の事件?が思わぬ厄介事に展開したのだと知ったのは翌日のことである。
開店準備をしていたところに姉様が現れ、おもむろにカウンターにどっかりと座ったかと思えばさーて困ったことになったわよー、と朗らかにいう。
すごく楽しそうな貴族の娘が実にあだっぽい仕草でカウンターに寄りかかる様というのはなんというか目の暴力だ。
もっともその辺はふんわかもふっもふスカートではない。
その役職に見合った、男装の麗人である。かの名を持つこの姉が女王陛下の守護騎士の一人になったと知った時の私の衝撃たるや。
「ちぃ兄様が殺人未遂、ですか」
「そう」
だから一時的にでも身内である姉様は任務をはずされたということらしい。
実際状況証拠しかに上に地位的にはウチの方が高い。
「で。私のお酒に毒が盛られていた、と主張していると」
「そーね」
だから調査のためにきたのだという。
どう聞いても調査って態度ではないような。
「殺す必要があったような悪党ならわざわざ暗殺する必要ないですよね?」
「それくらいの権限はうちにはあるからね」
カラカラと姉様が笑う。金色のふわふわウェーブ髪をかきあげ、妖艶な唇をつぅっとゆがませて。引き締まった足を組み、傲慢なまでの立場を自覚する。
まさにこれぞ貴族である。
ふと私は気になったことを聞いてみることにした。
「反応は発疹と呼吸困難?」
「って聞いてるわね」
ふむ。姉様の瞳がきょとんと丸くなる。驚いたのだろう。驚いても無理はない。
症状なんて一言も話してなかった、そうですね。
「その人普段からワイン飲んでます?」
「へ?飲んでるんじゃないのかしら。今回はミードだけど」
わかりやすいのがきた、と私もまた思わずほくそ笑む。
「はちみつの方か」
「なんの話よ」
「その人にふつうの蜂蜜食わせてやればわかりますよ。アレルギーだと思われます」
「あれるぎー?」
先日懸念したものがそのまま転がり込んでくるとは。
「病気、っていうより身体の過剰反応かなぁ。平たくいえばたまたま身体が嫌いすぎて勝手に暴れるようなもの食べちゃったから死にかけたんですよその人」
「つまり他の人は平気なはちみつでつくったミード飲んだからそうなったけど本人がそもそも自覚ないから一人で大騒ぎしている、と」
「有り体にいえば、そうですね」
知らないのだから混乱するし、命がかかっているのだ騒ぎもするだろう。
身も蓋もない言い方になってしまったのはこちらが被害者だからだ。
「身体が病気になった時、熱だしたりするじゃないですか。アレも身体が病気を追い出そうとしている作用なんですけど、その反応が露骨すぎてフレンドリファイアかましてるのがアレルギーの人の、過敏症という症状です」
「それを証明するためにはちみつ食べさせればいい、と」
「今度こそ死ぬかもしれませんけど」
とりあえず浄化魔法が効いたようなのでなんとかなるだろう。
どういう効果があったのか全く想像できないけど。
「ほんとメイはなんでも知ってるわね」
「知ってることだけですよ」
なんでもは知らんですのことよ、オスカル姉様。
しかしまぁこれが当たって検証実験の結果ちぃ兄様は解放されて姉様は忙しい日々に戻ることになる。
ちぃ兄様が感謝とともに泣きついてきたのはいい迷惑だったことだけ追記しておこう。
みじかいじゃん!!




