表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

オーパーツな彼女

 その家に着いたのは、ノインが通りから外れてしばらく走った後だった。

 通りの脇の木造の家をいくつか抜け、そこに隣接した比較的大きな畑を抜け、人の手が入っていない草原を抜け、幅の狭い川を飛び越え、町の外れというよりも、町から外れていて、とても町の一部とは思えない場所にあった。


 しかし、家は町で見たそれよりも、はるかに立派であった。

 町の家は、「住めればいい」というものであったが、ここの家は「いかに快適にするか」を追求しているように思える。


 全体的に精巧に作られており、見る限り、隙間があるようには見えない。

 家自体は少し高めに作られており、その玄関までに勾配を減らすために階段が付けられている。その玄関のドアにも、簡単ながらも細工が施されており、ノック用のドアノッカーも付けられていた。

 家の周りや、庭と思われる場所には、雑草も生えていない。また、庭には細工がされた木製の座りやすそうな椅子と、テーブルが置いている。


 それに隣に作られた畑など、その広さに圧巻である。

 家と比べての数十倍ともいえるほどの広さがあり、とても一人で耕せる範囲とは思えない。


 ノインは思う。


 『オーパーツのおかげだ!』


 そんなノインの目に入ったのは、畑の一部に突き刺さっている、身の丈はある、【大剣】だった。

 その途端、ノインはその大剣に駆け寄り、その隅々を観察する。


 第一印象は、重厚。

 その圧倒的な質量感、迫力、目の前に立つだけで、圧迫されるように感じる。

 幅はノインと同じくらいあり、高さはノインの背よりも高い。

 全体が土で薄汚れてはいるが、所々が銀色に光っており、金属でできていることに間違いはない。

 全体的な装飾は少ないが、柄には細かな装飾が入っている。持ちにくいようにも思うが、もしかしたら滑り止めのためかもしれない。


 ノインが感嘆しながら、その大剣の周りをぐるぐる周りながら観察していると、ふと視線を感じて、家の方を向く。

 すると、家の窓の隙間から、ノインを覗く目が見えた。

 ノインは走り出す。


 「ひいっ!」


 覗いていたであろう家の中の人は、そんな悲鳴をあげ、急いで窓を閉めた。

 だが、ノインはお構いなしに、その窓に走りより、乱暴なノックをする。


 「こんにちわ! 僕、ノインです! オーパーツについて詳しく!」

 「ひいぃぃ…」

 「お名前を! 是非、お名前を!」


 鼻息荒く叫ぶノインに、中の人は引きすぎる程に、引いていた。

 家の中から、か細い悲鳴が聞こえる。


 ノインの荒い鼻息と、か細い悲鳴だけが聞こえる時間がしばらく続く。


 そうして、いつまでも続く鼻息に耐えかねたのか、か細い悲鳴が止まった。

 中の人は、恐る恐るといった様子で、少し窓を開ける。

 ノインの目と、中の人の目が合う。ノインの爛々とした目に、中の人が少し引いたように顔を歪めたが、何もしてこないノインの様子に少しだけ、軟化したように口を開いた。


 「…フィーア」


 中の人は、【フィーア】と名乗った。声の様子から、どうやら女性のようだった。

 ノインが、反応する。


 「フィーアさんっていうんですね! 僕はノインです! オーパーツについて、外の大剣について詳しく!」


 同じ台詞を反復するノインに、中の人は警戒したように、少しだけ顔を顰める。だが、何もしてこないノインに、フィーアは訝しげに眉間に皺を寄せる。


 「あの…、あなたには使えない、ですよ…?」

 「そうなんですか!?」

 「その、すごく重たくて、持てないらしいです。私は、普通に持てるんですけど…」

 「持ってみてもいいですか!?」

 「はあ…、いいですけど」


 気だるそうな承諾の言葉を聞いた途端、ノインは大剣に走り寄り、両手を薄汚れたズボンでゴシゴシと汚れを落とす。

 そして、期待に満ちた目で、ゆっくりと両手で大剣の柄を、握った。


 そのまま両手に力を入れる。


 「ぐっ」


 だが、大剣は微動だにしない。

 ノインは何度か、全身を使って力一杯に大剣を持ち上げようとしたが、やはり動くような様子はなかった。


 じわりと汗をかいたノインは、フィーアの方を向いた。


 「本当ですね! ピクリともしないです!」


 ノインは、フィーアが警戒していることが馬鹿馬鹿しくなる程、無邪気に笑っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ