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学校イベで山に登ってたら雨降ってきたんだけど、教師が登るってうるさい

作者: ゆむ

「雨降ってきたよ!」

 女子の声に、私は空を見上げた。


 一時間くらい前まではキレイに晴れていたのに、今はどんよりどよどよと厚い雲に覆われている。

「一体どこからこんなにたくさん湧いて出てきたのよ?」


「雲は湿度が高い空気が上昇すると発生します。山に当たった風が上空に吹き上げただけだね。それくらい、習ったでしょう?」

 岡島は私の漏らした声に一々反応してご高説を垂れやがる。

 正直、ウザい。


 見上げた頬に雨滴が当たる。

 マジで降ってきたよ。仕方ないなあ。

 私は折り畳み式の傘を出して広げる。


「小島! お前、何してる!」

 森下がなんか喚いてる。けど、まあいいや。取り敢えず無視しとこう。


「聞いてるのか? 小島!」

 森下が喚きながら私の前までやってきた。マジウゼェ。


「何? 何か用?」

 目の前でウルサイし仕方がないから、聞いてやる。


「何か用じゃないだろう! 何してるんだって言ってるんだ!」

「何してるって、何が? 意味分かんないんだけど」

 いや、本当にマジでコイツが何を怒ってるのか分かんない。


「ねえ、何でこいつキレてるの?」

 ワケ分かんないから、近くにいる近藤に聞いてみた。


「さあ? ウンコでも踏んだんじゃない?」

「あははは、バカだ。ウケるー」

「って、コジちゃん、その傘ダサくね? って言うか服もダサくね?」

 木下とバカな話で盛り上がっていた近藤は、やっぱり私の恰好の事を言ってきた。


「だって、山だよ? オシャレして、汚れたり破れたりしたらヤじゃん。」

 さっき、服が汚れただか破れただか騒いでいた三島を指して言う。

「てかさ、虫に刺されたくないし、集られたくないし、そっちの方が重要じゃね? あちこち刺されて赤くなってたら超ダサだろ」

「うわああ! そこまで考えてなかったよ!」



 そんなことを言っている間にも、雨が本格的に降ってきた。

「うお、雨だよ!」

「さっきから降ってるって」

 近藤と木下も傘を出して広げる。


「お前ら、フザケンナよ!」

 森下が激怒りだ。まだいたのかコイツ。


「だから何の用?」

「何の用じゃないだろう! 何してるんだって言ってんだ?」

「は? 登山してるんじゃん。何言ってんの?」

 何を言いたいんだかマジで分からん。誰が翻訳してくれ。


「お喋りが五月蝿いってことじゃね?」


「あー、そうなの? そうならそう言えって。バカなの? ボキャ貧なの?」

 バカは無視に限る。関わってもロクなことにならない。もう相手にしないようにしよう。


「待て!」

 森下が私のリュックを摑む。

「……触んなよ」

 傘を振って追い払う。汚い手で触るなっての。

 マジでキショいわ。ありえねえって。


 って、雨の勢いがやたら強くなってきたよ。

「おいおいおいおい、大丈夫か? これ。」

 いつの間にか霧もかかっている。


 ゴゴゴゴゴゴゴ……


 うおお、雷鳴だよ。

 はあ、もう帰りたい。


「戻ろうよ。しばらく晴れないよ、これ。」

「山の天気は変わりやすいって言うだろう? よくある俄雨なんだよ。直ぐ止むって、こんなのは」

 岡島は知ったようなことを言いやがる。ヒョロ眼鏡のモヤシ野郎に山の何が分かるんだよ。


「直ぐって何分後?」

「はあ? そんなの分かるわけないだろう?」

「じゃあ、何で直ぐ止むって分かるワケ?」

 岡島はマジでアホだ。ネットで見たことを、ただ適当に言っているだけだ。よく色々と蘊蓄たれてるけど、その知識を全く使えていないんだから意味が無い。


「いい加減にしろ!」

 ドドドーーーーーーーーー……


 やべえ、雨めっちゃ降ってきた。そこらじゅう滝みたいになってる。

 全く、高校生にもなって登山イベントなんて要らないって。


 っていうか、これ、ヤバくね? 前見えないよ?


「おーい! みんなちょっと止まって!」

 吉田が叫んでる。

「この先、道が狭いし、めっちゃ滑るから止めた方が良い!」


「何仕切ってるんだよ! さっさと進めよバカ!」

 川上が半ギレで叫び返してる。アホだコイツ。ああそうか、バカだから高いところに登りたがるんだ。


「アホくさ。帰ろ帰ろ。雨だし、もう中止で良いじゃん」

 私は大きめの声で周りを煽る。


「勝手な行動をするな!」

 森下が喚いてる。うるせえよバカ。

「バカとは何だ、小島!」


 やべえ、声に出てた。


 森下が喚きながら近づいてきて、すっ転んだ。

 うわー。泥まみれだよ。ダッセえええええ。

「超ウケるんだけど」

 指差して笑ってやる。


 森下は顔を真っ赤にして起き上がった。

「と、とにかく! 勝手なことをするな。お前ら、登るぞ」

「登んねえよ」

 森下より大きい声で言ってやる。


「あんた本当にバカだな。何で登るの? 予定外のことがあったら、取り敢えず登るのをやめろってテレビでもやってるでしょ? ニュース見たこと無いの?」

「おお! コジちゃんニュース見る人? 凄ええ! 賢いじゃん!」

「いや、お前らニュースくらい見ろよ」


「まあ、でも帰るの賛成! なんで雨ん中、山なんて登らんきゃならんのよ」

「無理な登山、事故の元~」

「帰ろうぜー」


 良かった。みんな帰る方向になった。

 他のクラスも中止ってことで納得してるし、万々歳だ。事故なんて起こしたくないだろうしね。


 暫く歩いていたら、叫び声が聞こえてきた気がした。けど、気のせいだろう。

 そして、森下は帰ってこなかった。



『続いてのニュースです。今日、学校行事で赤岳に登山をしていた札幌稲浜高校の教師の森下樹さんが予定時間を過ぎても下山しておらず、現在、遭難として届けが出されました。生徒は全員、無事とのことです……』


 本当に遭難するか? 温泉でのんびりとか楽しみにしてたのに、中止とか涙が出てくるわ……

 部屋で大人しくしていろって酷くね? お風呂くらい入ったって良いじゃんよ。


 まあいいや、大浴場行ってこよう。

感想いただけると幸いです。

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[良い点] 森下先生かわいそすwww
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