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始まり

「おい!!貴様!!目を覚ませ!!なに奴だ!!」


勢いのある怒声と共に、雷都は喉元へと剣をつきけられた。


「いえ、あの、急に光に包まれて、気付いたらここにいたんです。本当です。」


俺、殺されるのか?だとすれば、恐らくここは現実の世界とは違う、つまり、異能を行使しても大きな事件にはならないはずだ。いざとなれば・・


銀の鎧を纏った男は、この意味の分からない発言を聞いたにも関わらず、剣を収め、至って冷静だった。


「そうか、またか。」


また?

何故だ、俺以外にもここへ来た奴がいるのか?

まさか家族や里奈たちもここへ?


「あのー、俺以外にもここへ来た奴がいるんですか?」


「そんなことはどうでもいい。急いで城に来てもらう。いいな?」


「わかりました。」


こうして雷都は、銀の鎧を纏った男によって連行された。


「シャディール姫!城外の草原にて、怪しい人物を発見致しました!」


「そうかラミアス、ご苦労であった。もう下がってよいぞ。」


あの鎧、ラミアスっていうのか。。



そこには、王女にしてはあまりにも若く、そしてあまりにも美しい黄金色に輝く髪を拵えた女性が座っていた。


「お主、名前は?」


「瀧川雷都です。」


「そうか、雷都か。ライと呼ばせてもらう。いいな?」


意外とフレンドリーな姫だな・・・


「はい、ところで姫様、俺以外にもここへ急に現れた人間はいませんでしたか?元々家族と友人を探してここへやって来ました。」


ここで雷都は、里奈を友人と呼んでいる事に気付いたが、その思考は頭の中で片付けた。


「姫様などと堅苦しい、シャディールでよい。そうか、ところでアナザーの家族・・」


シャディールは何か深く考える様子で、沈黙した。


「あのー・・何か知りませんか?」


「まずは、らいのご家族とご友人の事だが、信用して良い情報かどうかはわからないけど、思い当たることはあるわ。でと、その話をする前に、このアルス大陸な事を少し話しておきたい。ご家族の事にも影響する話よ。」


「アルス大陸?ここはそういう場所なのですね。是非教えてください。」


雷都は不安になりながらも、事の真相を知るべく冷静に振る舞った。


「まず、このアルス大陸では、ライの様に急に現れた存在をアナザーと呼んでいる。普通の人間と変わりはないのだけれど、様々な文化や知識、それらを持ち込むことで、この大陸にも繁栄が続いている。だけど、それをよく思わない種族もいる。」


「種族?人間以外にも何か別の生き物がいるという事ですか?」


「そうよ。この大陸では、身分制度が存在している。我々人間はヒューマンという呼称で呼ばれている。序列にすれば1番下の存在、序列を並び替えると、ヒューマン<エルフ<ドワーフ<ダークエルフの順番で序列が決まっている。」


「なるほど、つまりシャディールはこのヒューマンの女王といったところでしょうか?」


「そういう事になる。それと、堅苦しい言葉遣いはよして、私はらいと友人になりたいの。」


こういう積極的なところ、誰かさんにそっくりだぜ。


「じゃあ、その序列と俺の家族と友人にどう関係しているんだ?」


「先程アナザーと呼ばれている我等と同じ人間の話をしたでしょ?それを良く思っているのは我々ヒューマンだけなの。確かに、アナザーのおかげで大陸は反映したけど、ほかの種族達は、このアナザーの存在が引き金となり、ヒューマンが上の序列に食い込んでくる可能性を消すため、現在は迫害を続けている。」


「それってまさか・・・」


ここで、雷都の嫌な予感が的中してしまう。


「そう。現在我々ヒューマンが治めているのは、アルス大陸の中の、このヒルデという国だけなの。当然のことながら、序列の影響で蔑まれた生活を送っている。そういった不満からクーデターが起こらぬ様、それぞれの種族は1つ下の種族の監視をする事になっている。これも全てダークエルフが決めた事なの。つまり、先日エルフの視察団がこのヒルデに訪れたの。単刀直入に言うけど、その視察団に友人とご家族は連れ去られた可能性が高い。」


「そんな・・・俺があの時、一緒に帰ってれば。」


「そして、アナザーを見つけた場合、上の種族に順番に受け渡していくことになっている。順当に行けば、ダークエルフが治めている国のどこかにいると考えられるわ。」


「え、それじゃあ、俺もエルフに引き渡されるということか?」


「いえ、それはないわ。運が良いことに、この事を知っているのは、私とラミアスだけよ。それにアナザーは貴重な人材、我々ヒューマンにとっては失うには惜しい。」


急いで行かないと、みんなが・・・


雷都の顔に焦りの色が出始める。


「ライよ、そう焦る事はない。情報を引き出すために、殺される事はない。幽閉が良いところよ。ただ、ダークエルフとドワーフは友好関係にあり、非常に好戦的なの。行っても返り討ちにされる。」


「じゃあどうやって!!!俺を唯一信じてくれる人間なんだ!頼む!行かせてくれ!!」


ドーン!!!

あまりにも大きい轟音が城の中全てに

響いた。


「何事じゃラミアス!」


「ハハッ。エルフの襲撃です!おそらく、先日の魔鉱石輸入の拒否による報復だと思われます!!」


「何と・・直ちに迎撃せよ!!この城が落とされてはヒューマン存続の危機に関わる!!」


「おいおい、何がどうしたんだよ次から次へと・・

シャディール!一体何が起きてるんだ!」


雷都は突然知らされた、悲報について考える時間もなく混乱していた。


「エルフの襲撃である。魔鉱石の輸入にのる税の撤廃を拒否したの!おそらく敵は、エルフの中のアサシン部隊だと思われわ!ライは隠れているのだ!」


くそ、こんな若い女の子に守られるってのも、良い気分じゃねえよ。何が何だかわからねえがやってやるか。


ダーン!!

その瞬間、勢いよく扉が開いた。


「やあ、シャディール姫。要件は分かっているな?」


扉の先には、黒装束を身につけ、ダガーを装備した耳の長いエルフが10人ほど立っていた。


「えぇ、わかっていますわ。けれど、我々ヒューマンにとって魔鉱石は唯一、他の種族と渡り合える代物です。そう簡単に要求を飲む事は出来ません。」


「では、覚悟を決めてもらおう。お主の代わりなど、いくらでもいる。エルフの権限により、次は我々エルフにとって都合の良い王女を擁立するまでだ。覚悟!!!」


その瞬間、リーダーと思しきエルフがシャディールに斬りかかろうとした。


「きゃぁぁぁあああ」


シャディールは恐怖のあまり目を閉じる。


ビビビッ

スバァーン!!!!


そのリーダーの目の前に一瞬で移動し、その勢いで膝蹴りを決めたのは雷都だった。


「ぐぉぉええええ。」


エルフのリーダーはあまりの威力にうずくまる。


「女の子1人を10人がかりで脅すのは、エルフってのはとことん弱いものいじめが趣味のようだな。俺が相手になってやる、かかってこいよ。」


「ライ、あなたは一体・・」


あまりの、一瞬の出来事にシャディールは気が動転してしまっているようだ。


シュン!ズバン!ビビビッ!


雷都の体が稲妻を纏いながら、筋肉を強化し、目にも止まらぬスピードで、残り9人を片付けた。


それから3時間後、事態は収束した。


「シャディール姫!エルフの者達を地下に幽閉致しました!」


「ありがとうラミアス、それにライ、今回の騒動で私が今ここにいるのは、あなたのおかげよ。本当にありがとう。感謝するわ。」


「あ、いや、これくらい朝飯前なんで。」


雷都は初めて異能を駆使し戦った高揚に、身を焦がしていた。


「ところでライ、あなたには、このヒューマンという種族を変えて欲しい。この見くびられ蔑まれた我々という存在に革命を起こして欲しい。ライにはその力がある。」


「いえ、俺は家族と友人を助けに来ただけだし、そもそもそんな大変な事、出来るわけない・・」


「そうね、だけど、このままではダークエルフに囚われている事を考えると、あなた1人の力では難しい。ダークエルフは先程のアサシン部隊とは比にならないくらいの手練れの集団なの。」


「そうか、ダークエルフに対抗するには、地位と勢力がいる。それを得るには、ヒューマンという存在を世に知らしめる必要がある。そういう事だな?」


「えぇ、そういう事よ。」


「わかった。やるよ。ところで、その序列ってのはどうすれば入れ替わるんだ?」


「その種族の主要拠点を落とせば良いの。ここヒューマンのヒルデも正直、落ちるのも時間の問題なの。そうなれば、もう・・分かるわよね?」


「なるほど、わかった。まず俺は何をすれば良い?」


「まず、ライには貴族の称号を与え、我々ヒューマンが率いるダンデ騎士団の分隊長をお任せするわ。」


「え、そんな大きな仕事、俺なんかで大丈夫なのか?」


「当然!あなたは私を守ってくれたの、その権利と力が充分にあるわ。」


急に馴れ馴れしくなり始めたシャディールの

口調を雷都は気にする事なく話を進める。


「わかったよ。家族と友人を助けるためだ。協力する。」


「ありがとうライ!それでは、あなたにはこの城近くの家を与えます。当面はそこで生活してもらうわ。専属のメイドも用意しておくので、今日は一旦そこに帰ると良いわ。」


「わかった。」


雷都は素っ気なく答えた。


「ラミアス!ライを家まで送ってあげるのです!」


「ハハッ!」


そして城から20分程で家には到着した。


「ふー、今日からここが俺の家かー。」


大きい屋敷に、石畳みの広い庭、周辺は自然に覆われ、家と呼ぶにはあまりにも贅沢だった。


雷都はそっと屋敷の扉を開ける。


「ご主人様!お帰りなさいませ!私の名前はユーリと申します!本日からライ様のメイドを務めさせていただきます。」


や、やばい、かわいすぎる・・

細く伸びた足、髪型は茶色のツインテールで、目は髪の毛よりも茶色く見える。



雷都は心の中で、喜ぶのであった。


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