反感
「失礼します」
「......どうした?」
「先程、シーナ護衛隊長率いるシーナ第一部隊が都市に接近したと報告がありました。
都市警備隊が捕獲を目的とし攻撃をしましたが謎の雷撃魔法により逃げられたと.....」
「雷撃.....か」
「シーナ隊は少数であったと.....いう報告から集団詠唱は不可能だったという見解ですが、、、」
「......至急全部隊を招集しろ」
「ぜ、全部隊ですか?しかし、、、全部隊となると、、、」
「時が来た、、それを各隊長に伝えろ、全員集まる」
「は!」
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「ここが、、、パルムクル区、、、」
レンは思いがけず息を飲む。
「はい、そうです。ここが私の管理区、パルムクル区です。」
あたりは何といっていいのかわからない。ただ、古いボロボロの家が立ち並んでいた。
そこに住む人はボロボロな服を着ている。その目には光がなかった。
「レン様、ここからは歩いていきますので馬車を降りていただけますか?」
「ああ、なあ、シーナ、、、これはどういう、、、」
「レン様、ここではあまり喋らない方がいいです。あとで事情は説明します。あと、すみませんが、私の近くを歩いてください。」
シーナの顔はどこか険しかった。
「それと、これを、、、」
シーナは布に包まれたものを差し出してきた。
レンはそれを片手で受け取ろうとした。が、思ったよりも重くすかさず両手に持ち替えた。
恐る恐る布をめくるとそこには普通に日本で生きていたら触ることもないものが自らの手にあることに気づいた。
「6mm拳銃です。万が一の時にこれを、、、ためらわずに撃ってください。」
「何で拳銃、、、これから何かあるのか?
ここはお前の統治している区域なんだろう?」
するとシーナはうつむきながら何も話そうとしない。
「わ、わかった、、身を守るために貰っておく」
「ありがとうございます、事情は後で説明します。」
レン達一行はボロボロの家が立ち並ぶ細い道をゆっくり歩いていた。その一行をじっと見つめる人たちはどこか睨んでいるような感じであった。
シーナだけではなく他の護衛もどこかしら身構えているようにも見えた。
なぜ、こんなにも身構えるのか、この人たちは自国の人ではないのか、とレンは考えたが
、先ほどの襲撃を行ってきたのも同じ国の人間、ということで警戒しているのかもしれない。
実際、同じ仲間と思っていた兵士に攻撃をされたのだから。
この国は複雑なのだろう、と思った。
これが日本だったら、、、、、
法があり、道は整備され、人が活き活きと生活している、これが当たり前だと思っていたがこうして別の世界だが目の当たりにすると、平和というのは遠い存在なのかもしれない。
仲間、敵、区別のつかない世界、誰を信じればいいのかすらわからない、それが一番怖いのかもしれないと思った。
「レン様、あと少しで私たちの本部である城が見えてきます、もう少しです。」
「わかった、近くまで来れたならもう大丈夫なのかな?」
「はい、もうすぐですから!」
その時だった、今まで道端でじっとみていた住人が一斉に一行を取り囲むように道を塞いだ。
「な、何の真似か?そこをどけ!」
護衛の一人が叫ぶ。
「、、、、、あんたら、どのツラ下げてここに戻って来た、、、」
住人の1人がポツリと囁いた。
「あんたら何で戻って来たんだ、あの時は俺らを見捨てて、見殺しにしたってのに、、、」
また誰かが囁く。
「それはあれか、俺らが奴隷だったからか?
元区長のお前の父親様は俺らを解放してくれて、ここに住んでいいってそう手を差し伸べてくださった。とても嬉しかった!人としてみられて来なかった俺らをあの方は人として接してくれた!なのに、あのお方が死んでからといい毎日のようにこの区は襲撃される、、、それをお前は見捨てるように去っていった!親と子でここまで違うのか!」
住民は口々に言い放っていった。
「.......黙れ」
「この人殺し!」
「.........黙れ」
「お前が区長なんて認めないぞ!」
「...........黙れ、黙れ、黙れ、黙れ!」
シーナは息を荒げた。
「父親がいい人だった?、、、、そうですね、あなた達にとってはそうかもしれませんね、だから私にもいい父親だったと?
毎日、あなた達のために駆け巡っていた父があなた達を守るために国に無残に殺された、
あなた達さえいなければ、あなた達さえいなければ、、、、あなた達は奴隷!それには変わりない!言葉に慎みなさい!」
「なんだと、、、そうかわかった、エセ区長様本性が出たぞ!倒してしまえ!」
一人の住民が鉄の棒のようなものを持って襲いかかって来た。
とうとう村人と護衛がぶつかり合ってしまった。
しかし、武器を持った護衛に勝てるわけもない。すぐに住民は取り押さえられた。
「この野郎、、、クソが!」
「こいつを牢へ入れておいて」
淡々とシーナは命じていた。
「クソが!」
やがて、男は連れていかれた。
「、、、、レン様、、行きましょう」
「、、、、ああ」
頭がこんがらがっていたが何か事情があったのだろう、今シーナに聞くのはよしたほうがいいと思った。
再び歩き出そうとした瞬間、
「ドン」
鈍い音がしたかと思うと、レンの腹は赤く染まり始めた。
「!」
一瞬のことだった。力が徐々に抜けていった。
そして、地面に倒れた。
「レン様!、、レン様!レン様、、、、」
薄れていく視界の中、ニーナが涙目で叫ぶのが見えた。