理由
「レン様、レン様、、レン様!」
「!?」
「レン様、、やっとお目覚めになりましたね、、、わたし、、、もう、、」
シーナは今にも泣きそうな顔でこちらを見下ろしていた。
あのあと、気を失ってしまったみたいだが、随分時間が経ってしまったのだろう、あたりは暗闇だった。
そして、レンはというと、、、、
シーナに膝枕をされていたらしい。
「うわぁ!シ、シーナ!すまん!ほんとそのすまん!」
勢いよく、立ち上がろうとするが、ふらついてしまった。
「レン様!そんなに勢いよく立つとお体に障ります!今はちゃんと寝ててください!」
そういわれると、レンの頭をシーナは自分の太ももに置いた。
「気にしないでいいですから!レン様は休んでください!」
少し照れながら、シーナは言った。
「あれから、、、どうなった?」
レンは静かにシーナに尋ねた。
「あれから、、レン様のおかげで追手はありませんでしたので逃げ切ることができました。また、爆発を引き起こした敵にも遭遇することはありませんでした。」
「そ、そうか、、それはよかった。」
ここで、よかったと思っていいのか戸惑う。シーナの場合は敵を目の前で殲滅されたのだから、、、
「レン様、、、一つ聞いてもよろしいでしょうか?」
「あ、ああ」
「レン様のあの力はいったい何なのですか?レン様は魔法のない世界で生きていらっしゃったのにどこであんなものを、、、あれほどの魔法は相当な魔法師でなければですことは容易ではありません。」
シーナは俯きながら尋ねた。
「実は、、お、俺にも、、よくわからないんだ、、」
「え?」
「よくわからないんだ、、、小さいときに交通事故に巻き込まれたことがあって瀕死の状態だったんだが、誰かに助けられて気づいたら無傷だったってことがあるんだ、、、俺が覚えていることといえば、けがを治してくれたものこそ魔法だったってことぐらいだ。手から光のようなものがでて、その光が当たった場所の傷がなくなったのを覚えている。」
「その、、交通事故というもので命を落とされかけた時に魔法で助けられた、、、ということですか?」
「ああ、たぶんそういうことだ。その時に何らかの力が入ったのかもしれない。現にこの力を使うのは2回目なんだ。1回目は橋から飛び降り自殺をしようとした友達を助けることができた。」
レンは静かに語った。
本来は誰にも語ろうともしなかった真実。
誰に語っても信じてはもらえないと心のどこかでは思っていた。
しかし、シーナは真剣な眼差しで話を聞いていた。
こんな、魔法がある世界が本当にあるのかは疑問だが、現実今この瞬間、レンは自分の世界とは違った別の世界にいる。
この事実は何を持っても変えることができなかった。