第90話 ゲンコツを見舞っただとー!
えー。な、何を考えてんだ、あのすっとぼけ校長は。
とても正気の沙汰とは思えんぞ。もしかしてイザベルも三人同様、家が大破してしまったのか?
そんな馬鹿な。ありえないような偶然が二度も続く訳がない。
とすると、校長にはどんな意図があるんだ?
実に気になる所だが、とにもかくにも早くさっきの発言を撤回しないとまずいぞ。
なにせ、イザベルは我が家に住む気満々なんだからな。
「どうやら俺はとんでもない勘違いをしていたようだ。自分が恥ずかしくてしょうがない。にしてもしかし、校長はなぜお前を住まわせようとしてるんだ?」
「それは至って単純だ。どうも、監督者がいない事を不安に思ったらしい」
なるほど。案外まともな理由があったんだな。
少々驚きだ。というか、最初の時点で気付けよ。
呆れてモノも言えん。おまけに十七歳のイザベルをよこすなんてどういう了見だ。
そりゃ優秀なのは認めるが、コイツも立派なお年頃なんだぞ。
その事を分かってるのか、ハゲ親父は。
「不安なのは分からなくないが、イザベルにも拒否権があるハズだ。どうか丁重に断って欲しい。さすがのお前も他人の家なんかに住みたくないだろうからな」
「いや。あながちそうでもないぞ。少なくとも、私にとってはプラスだと考えている。なぜなら、待望の女友達が出来るかもしれないんだからな」
うわ……
まさかの肯定発言が出てきやがった。どうする?
今のままじゃ、確実に断りを入れにくいぞ。
と言っても受け入れる訳にもいかない。
これ以上、トラブルが増加するのは真っ平ごめんだ。
何か最もらしい理由を並べて諦めて貰うしかないだろう。
「気持ちは分からなくもない。だが、四人にまだ何の話もしてないからな。俺が認めても、暮らせるかは分からないぞ」
「フフ。心配は要らない。奴等には既に話をしておいたからな」
なにー!一体、いつの間に。
スピードが尋常じゃないではないか。
「そ、そうか、手が早いな。ハハハハハハ。で、どのような反応が返ってきたんだ?」
動揺しつつも、どうにか言葉を続ける。
「えっとだな。リビングで話を行った所、赤月と麻宮に関しては嬉しそうにしていた。よって問題はないと判断した」
そうか。俺には何となくだが、奴等の笑顔の理由が分かる。
おそらく麻宮は、イザベルが俺を体良く始末してくれると考え、そして赤月の方はというとただただ住人が増える事が嬉しかったんだろう。何だか対照的だな。
「一方で残りの二人は不服そうにしていた為、説得を試みていたのだが、途中で星名が発情コウモリの言う事など聞けないと言い出してな。たまらず、ゲンコツを見舞ってしまった」
はー?何してんだよ!
よりにもよって最も厄介な女に手を出しやがって。
八つ当たりされたら、どうしてくれるんだ。
「頼むから、むやみに暴力を振るうのは止めてくれ。後が怖くてしょうがないじゃないか」
「なぜ貴様が恐怖を感じる? これは私と奴の問題だぞ」
「形式上はそうかもしれないが、怒りの矛先を向けられたら、どうしてくれるんだよ。言っとくが、あいつは危険極まりない奴なんだぞ」
「なるほど。ならば、私のそばにいるといい。私が全力で守ってやる」
あ、その手があったか。
確かにイザベルがいれば、さすがの先輩もたやすく手を出せないだろう。
なんてたってコイツは強い。フッフッフッフッ。
あ、あれ?俺はてっきり、イザベルが自分の負担になるとばかり思ってたが、むしろ逆ではないか?
おそらくとてつもなく恐ろしいイザベルがいれば、奴等の問題行動にも歯止めがかかるに違いない。
それは俺にとってもプラスなハズ。もはや、居候を断る理由はどこにもない。
フフ。このまま何もなかったかのようにコイツを引き入れてしまおう。
「そりゃ助かる。恩に着るぞ」
「そ、そうか。私も友達である貴様の役に立てて嬉しい。こらからも大いに頼ってくれ。だが、そ、その代わり……と言っては何だが、私に友達が出来るよう協力してくれぬか?」
イザベルが何とも恥ずかしそうに顔を赤らめ、体をもじもじと動かす。
ああ。
照れてるコイツは本当にいいな、




