第8話 がり勉ぽい癖にえげつない魔法をぶちかましてきやがって
げっ。まさか、ここまで人がいるとは。
軽く数百は超えてるんじゃないか。はー。何だか頭が痛くなってきた。
「お、対戦者が来たぞ」
う……
もう俺に気付いたか。
「石野すざくだってさ。なんだ、Eランクだってよ」
「こりゃ、期待出来そうにないな」
なんで奴等がそんな事を?
対戦者名なんて一切告知されてないハズだぞ。
あ……
そういえば参加者が身に着けるゼッケンには、個人情報が刻まれてるんだったな。
緊張のせいかすっかり忘れてた。相変わらずバカだな。
というか、あいつ等め。さっそく人を見下しやがって。
「おーい、Eランカー。死なないように頑張れよー」
「Eランクでも頑張ってね」
たく。少しは黙れないのか。
いつまでも調子に乗ってると雷でも落とすぞ。
なんやかんやありながらも気持ちを切り替え、教官が待つ真ん中付近をただひたすらに目指す。
おっ。校舎から同じ服装の男子生徒が出てきたぞ。
どうやら、あいつが相手らしい。見た所、眼鏡をかけていて体も細いな。
フフ。もしかしたらいい勝負が出来るかもしれないぞ。
程なく俺達が所定の場所に到達すると、審判を務めるであろう若い男性教官が右手を高く上げる。
「只今より、一-E、石野すざくと二-A、シャールクエールの魔法戦を行います。対戦に先駆けましてまず防御シールドを張らせて頂きます」
え?実戦で使うようなのをたかが一授業ごときで使うのか。
ちょいとばかし意外だ。とは言え強固な壁さえあれば魔法が内部に放たれたり、外部に放出する事はまずない。つまり、存分に戦えという事だな。
「我らの盾となり、礎となれ。フェアリーウォール」
教官が呪文を唱えると、中央を囲むように黄色のシールドが発生する。
おー。校庭のほぼ全域、そして上空二十メートル程までバリアが張り巡らされたぞ。
もちろん内部にいる人間も三人だけだ。加えて色が黄であるという事は、他に緑、赤と存在する中で二番目に強力であると言える。よって余程の魔法でなければ、打ち破る事は不可能だ。
さすが、教官。
名前すら知らないけど。
「それでは準備が整いましたので両者離れて」
ふー。いよいよか。
ちょいと緊張してきたな。
「……始め!」
よーし。行くぞ!
あ、あれ?なんだ、あいつ。
ボーっとした表情を浮かべたまま一歩も動かないぞ。
ひょっとして舐めてるのか?そりゃ、EランクなんてAに比べたらクズだ。
そのくらい自覚しているつもりだ。だが、まだ何も始まってないのに小ばかにするとは。
断じて許せん!こうなったら、渾身の蹴りでも食らわしてやる。
覚悟しろ!
「穢れなき業火で敵を排除せよ」
お、おい……
あら、呪文じゃないか。しまった。
まさか、ちゃっかり集中力を高めていたなんて。
全く気付かなかった。正に一生の不覚。
悔やんでもくやみきれないが、チャンスは少なからずあるハズ。
決して諦めないぞ。再び走行を開始しようとするも空に浮かぶ無数のファイアーボールが目に入り、思わず足が止まる。
こりゃ、どういう事だ?普通一回の詠唱で発生する球は一つのハズだ。
なのに、どうしてあんなに?もしかして魔力が強い事と関係しているのか?
うわっ。どうしよう……
「いけ!」
ひー。極めて最悪な事に赤い悪魔達がまとめてこっちへ来やがる。
およそ数は全部で五つ。一つ目のうしろをくっつくように縦に並んでいる。
とりあえず直前まで引き付けて回避しよう。三、二、一、今だ!
全速力で横へ移動し、何とか難を逃れる事に成功する。
ふー。助かった。
おそらく奴等は、先頭主導型で前を走る球にうしろがついていくんだろう。
ひとまずは特性も理解した事だし、そろそろ反撃に出るとしよう。
「いけ!」
ちっ。またかよ。ほとほとしつこい男だ。だが、今度も同様に縦型タイプに違いない。
きっと、大丈夫だろう。身構えた瞬間、列が突如崩れ、並びが一気に不規則となる。
お、おい。すっかり自由自在に動き回ってるじゃないか……
こら、まずい。逃げろー!
全速力で後方へ走ると、まるで後を付けるかのように火の球が追いかけてくる。
えーい。めんどくさい凶器共が。こうなったら、最高まで速度を上げて立ち止まってやる。
そうすれば連中もストップ出来ずに地面へ衝突するハズだ。予定通りにスピードを上げ、程なく限りなく低い体勢で体を伏せる。その刹那、前方で大爆発が発生する。
うわっ。なんて凄い爆音なんだ。
音だけでも恐怖心を植え付けられる。
きっと、予想以上の威力だったんだろう。
ファイアーボールが直撃したせいで下に大きなへっこみが出来ている。
当たりでもしたら間違いなく、大けがをするのは必須だ。
そう考えると実に不安だが、どんなに破壊力抜群でもヒットしなければ意味はない。
最後までよけきって必ず反撃に転じてやる!それからもただひたすらに攻撃をかわし続け、あっという間に数分の時が経過する。




