第77話 モンスターを倒しても首輪地獄はこれからが本番?
勇んで魔法を放とうとした直後、爆煙の中からいくつも小さい玉が飛び出し、マル
キューリ達を一斉に捉える。
えー。ウッソー。
先輩の攻撃は不発に終わったんじゃなかったのか。
やがてマルキューリの体は完全に溶け、そのまま灰と化した。
かっけぇ。魔法発動からモンスター撃退までの流れがまるで一つのストーリーみたいだった。
もちろんドキドキハラハラはしたが、とてもいいモノを見せて貰ったな。
うんうん。
ただ、それとこれとは話が別だ。
リードを持って走る行為は決して許される事じゃない。
こうなったら、スピードを上げてとっつかまえて……
ああ、やっぱりパンティー最高。
しばらくは今のままでいいや。
あいもかわらず先輩のうしろを走り続けている間にいよいよグランダール商業エリアへ突入する。
ふー。ついに町まで来たか。
現在の所は幸い、首に異常はない。
かつ家にも徐々に近付いてきてるのだから、申し分のない状況と言えるだろう。
だが、俺としてはいささか不安だ。なにせ、町には人がたくさんいる。
そんな所を首輪装着状態で走れば、皆の視線が集中するのは一目瞭然だ。
というか、もう既に入り口付近であるにも関わらず好奇の目を向けられているような。
はー。こっから先の事を考えるとはてしなく憂鬱だ。
残念ながら状況が変わる事は一切なく、とうとう武具屋や交易品売り場が並ぶ密集地帯に到達する。
う……
やっぱり人が多くいる。
頼むから、こっちを見ないでくれー。
「ねえ、ママ。あそこに首輪をした人がいる」
前方から歩いてくる幼女が、俺を指差す。
ぎゃー。なんて事だ。
よりにもよって、あんな小さい子供に見られてしまうなんて。
もう生きていけない……
「ちょっとサーシャ、見ちゃだめよ。」
「えー。どうして?」
「どうしてもこうしてもないわ。あれは変態さんがする遊びなの。まだ小さいあなたには刺激が強すぎるわ」
ちっがーう。
変質者は前を走ってる女だけで俺は断じて違う。
「でも、首輪をしているからといってそうとは限らないんじゃないの?」
よし。よく言った幼女よ。
その調子でがんばれ。
「何言ってるのよ。首輪をしている彼をよく見てごらんなさい。明らかに変態な顔をしてるでしょ」
「あ、うん」
うんじゃないわー!
なんだ、変態みたいな顔って。
人を馬鹿にするのもいい加減にしろ!
怒りと羞恥心を抱えながらも、二人の横を通り過ぎる。
くっそ。おかしなモノを首に巻いてさえしてなければ、恥ずかしい思いをしなくて済んだのに。
あのバカヤロー。絶対に呪ってやるからな。
なんやかんやありながらも走り続け、ようやく森林エリアに足を踏み入れる。
精神的にかなり参ったが、あとは人のいない森林エリアをまっすぐ進み、二番目の十字路
を右に曲がれば我が家だ。一気に行くぞ。
やがて問題の十字路が早くも見えてきたのだが、あろう事か先輩が見向きもせず、道をまっすぐ
進んでしまう。
「バッカヤロー。何やってんだ! 右にいかなければ、いつまで経っても家に帰れないぞー」
「…………」
はー。もしかして延々と走り続けるつもりなんじゃないだろうな。
言い知れぬ不安が漂い始めた中、前方にまたもや十字路が見えてくる。




