表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/195

第7話 今日が魔法戦の日だったなんて……ついてないな

 トホホ……

 よもや、こんなあっけない結末を迎えるなんてあまりにも寂し過ぎる。

 まあよく考えてみれば、あそこまで可愛い子が俺なんかに何かしてくれる訳ない。

 とんだ夢物語だ。正に天国から地獄とはこういう事を言うのだろう。

 はー。気が滅入る。


 うん?でも、ちょっと待てよ。

 好意がなかったのなら、なぜ少女は手を握ったんだ?

 普通ならしないハズだぞ。しかも、さっきは寒いくらいに感じてたのに今は体が物凄く熱くてしょうがない。


 何がどうなってんだ?もしかして彼女の行動には何か意味があったんだろうか?

 こら、確かめずにはいられないな。勢いよく外へ出ると、幸運にも玄関の手前を歩いている彼女が目に入る。

 

「すいません。ちょっといいですか?」

「はい」

「どうして俺に触れたのですか?」

「それは……明日になれば分かります。楽しみにしていてください」

 えー。もう終わりか?

 


「では、ごきげんよう」

 笑みを浮かべたまま、彼女が外へ出ていく。


 やっぱり思った通りだったか。なんだ、あの微妙な答えは。

 あんなんじゃ、何も分からないじゃないか。

 くそ。なんて今日は散々なんだ……

 

 何とも言えないモヤモヤを抱えながらも食事と風呂を済ませ、二十一時になる前に眠りに付く。

 翌朝。すずめの鳴き声で六時五十五分に目を覚まし、洗面台へと向かう。


 そういや、昨日の子が言ってた事は本当なんだろうか?

 パンツ一丁となり、体を隈なく見てみる。

  

 おいおい。何も変わった所なんてないぞ。

 もしかして嘘を付いたんじゃあるまいな。

 ちっくしょう。変化がないという事は、残念ながら騙されたと考えて間違いない。

 もう絶対に許せん!今度あったら、イザベルみたく尻たたきをしてやるからな。

 覚えてろよー。どうにかこうにか気持ちを切り替え、朝食と学校に行く準備をパパッと済ませる。

 

 えっと現在の時刻は七時五十一分。しかも、天気は晴れ。

 正に素晴らしい状況と言っていいだろう。まもなく家を発ち、八時三十四分には教室へ到着する。

 やった。ちゃんと時間内にやってくる事が出来たぞ。


「お、今日は早いじゃないか。ついに心を入れ替えたのか?」

「なんだ。誰かと思ったら、太っちょデブ太郎ラースじゃないか。少しはやせたのか?」

「な、僕のぽよぽよ体型を侮辱するとはなんて奴だ。こうなったら、イザベル教官に言いつけてやるからなー」

「はー? 汚いぞ。言っとくがそんな事したら、お前が女子更衣室の覗きをしていた事もバラすからな」

「そ、それは卑怯だぞ」

「そりゃ、こっちのセリフだ!」

「おっと。くだらない話をしている間に鬼教官様のお出ましだ。ひとまず喧嘩両成敗という事にしよう」

「の方がよさげだな」

 席に着いた直後、イザベルがさっそうと中へ入ってくる。


「皆、おはよう」

「おはようございます」

「よろしい。いい返事だ。さっそく出席確認といこう」

 イザベルが出席簿を持ち、教室全体を見渡し始める。

 

 相変わらずコイツは凛々しいな。

 昨日あんだけの事があったというのに平然としている。

 あれで俺達よりたった一つ上の十七歳だもんな。

 なんか、もう同じ世界の住人とは思えない。

 一体、今までどんな教育を受けてきたんだろう?


 ボーっと顔を眺めていると、偶然イザベルと目が合う。

 な、何だよ。とてつもなくガッカリした表情をしてるじゃないか。

 なぜだ?も、もしかしてコイツ……


 俺が来てホッとしている反面、おしおきが出来なくて残念とでも思ってるんじゃないだろうな。

 うわー。ありうる。なにせ、奴は変態だ。昨日だってムチでぶったたいたあげく恍惚の表情を浮かべていたんだからな。


 

 さぞかし今日もふるいたかったに違いない。

 だが、残念だったな、イザベルよ。さすがに何も悪い事をしてない生徒に攻撃は加えられまい。

 

 

「どうやら今日は一人を除いて全員いるみたいだな。オッケーだ」

 くくく。鉄拳を食らう心配がないってだけで何となくいい気分だ。

 今日は快適に過ごせそうだぞ。


「では、今から大事な連絡を伝える。既に知ってるとは思うが、二時限目に魔法戦が執り行われる」

 

 あー。

 そういえば、そうだった……

 昨日はいろいろな事がありすぎてすっかり忘れていた。

 なんて事だ。


「魔法戦は貴様達Eランク魔法師にとっていい勉強になる。しっかり校庭へ行くのだぞ。いいな?」

「はい」

「報告は以上」

 要らぬ情報を伝えると、イザベルはさっそうと教室から去っていった。


 はー。最悪だ。

 せっかく全てが上手くいくと思ってたのに。

 幸先悪ぃ。それからあっという間に一時限目が終了し、魔法戦までおよそ十分程に迫る。

 

 ついに地獄の瞬間の到来か。

 嫌だなー。めんどくさくてしょうがない。

 たっく。誰がどんな理由で一対一のタイマンをやろうと言い出したんだよ。

 授業の一環で戦うなんて普通ありえないぞ。


 とは言ってもまあ、参加届を提出しなければ戦闘に繰り出される事は百パーセントない。

 だが、どこぞの誰かが勝手に届を出した事で今回俺は魔力値Aの強者と戦う羽目となってしまった。

 それもこれも、奴が悪いんだ。イザベル……


 よくもふざけたマネをしてくれたな。

 EランクとAランクじゃ、とても勝負にならないというのに。

 そんなの誰が見ても明らかだ。にも関わらず、何たる事なんだ。

 憂鬱でしょうがない。ただ、ここまで来てしまった以上引き返す事は出来ない。

 もうやるしかないんだ。ま、試合形式とは言っても基本的に魔法のお披露目大会のようなモノだから、命の危険にさらされる事はまずないだろうし、時間もたった十分だ。

 

 ダメだったら逃げ回ればいい。さあ、腹を決めて行くぞ!

 試合用のゼッケンを着用し、いよいよ外へ足を運ぶ。

 すると、中央を囲うように集結しているギャラリーが目に入る。


 


 

 

 



 


 




 


 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ