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第58話 あんのクソ校長。余計な事をベラベラと話しやがって

 いやー。快適、快適。

 太陽の光を浴びてるだけなのになぜか心地よい。

 まるで朝の悪夢が嘘のようだ。それはそうと、あれから学校はどうなったんだろう?

 おそらく、校舎の修繕は魔法で行えるからさして心配はしていない。

 しかし、いくら魔法が優れていると言えど、魔物の発生は防げない。

 頼むから、二回連続でモンスターに襲われてるなんて状況は勘弁してくれよ。

 しばらくすると、前方にいよいよ校舎が見えてくる。

 

 ここから見た感じ、モンスターはいなさそうだ。

 ひとまずは安心と言った所だろう。だがその代わり、校門付近にシルバーの

鎧をまとい、脇に剣を携えた屈強な男達がいる。


 あいつ等はたぶん、騎士だ。

 きっと校長が緊急事態に備え、警備を頼んだんだろう。

 振り返ってみれば、グランダールにも騎士の格好をした奴等がいたようないなかったような。

 ハッキリとは覚えていないが、彼等がいれば安心だ。

 足取りもすっかり軽くなり、あっという間に校門付近に到着する。


「おはようございます」

「お、おはようございます」

 校門のちょうど隅っこにいた騎士にあいさつをされた為、慌てて返事を返す。


 おー。いきなりでびっくりした。

 コイツ等はちゃっかりあいさつをしていたんだな。

 感心、感心。さすが、騎士だ。

 

 単純な強さだけではなく、礼儀正しさも兼ね備えている。

 実にお見事。俺も彼等を見習おう。


「ちょっと待ってくれ、石野すざく君」

 いい気分で校門を通過しようとしていた所、突然背後から呼び止められる。

 

 え?誰だ、俺を呼んだのは?

 聞くからに爽やかな男の声だったぞ。

 とりあえずうしろを振り返ってみる。

 すると、シルバーの鎧に身をまとった高貴そうな金髪男が目に入る。


 はて?左手に手帳のようなモノを持ってるが、あれは何だ?

 もしかしてメモ帳かなんかか?というか、どうしてコイツは俺の名前を知ってるんだ?

 俺はこんな奴知らないぞ。

 

「失礼ですが、あなたは誰なんですか?」

「申し遅れて済まないね。私はレイキシス騎士団に属するディノ=ハーディスと言う。よかったら、覚えておいてくれ」

 爽やかな笑顔を振りまきながら、男が名を名乗る。


 ほう。レイキシス騎士団か。

 全く知らん。


「分かりました。ちゃんと覚えておきます。ところでハーディスさんはなぜ俺の名前を知ってるんですか?」

「実は、私達がここに来たのはモンスター襲撃事件の調査を行う為だったのだが、たまたま校長と話をする機会があってだな。その時に君の名前を知ったんだ」


 なんだ。彼等は校長の依頼で来た訳じゃなかったのか。

 少し予想が外れたな。


「しかし、名だけ知っていても肝心の顔が分からないのでは話にならないのだが、今さっきこれを拾った」

 ハーディスが左手に持っていた謎の物を掲げ、中身をめくる。


「ホラ、見てくれ。君の名前が書いてあるぞ」

 あー。ホントだ。あれはたぶん、生徒手帳だ。

 どうやら、知らぬ間に落としてしまったらしい。


「それは俺の生徒手帳ですよね?」

「ああ。そうだ。君が手帳を落としたのに気付き、声をかけさせて貰った。驚かせて悪かったね」

 終始笑みを浮かべながら、ハーディスがゆっくり左手を下に下げる。

 

 たく。相変わらずドジだな、俺は。

 さっそくやらかしてしまった。

 

「いえ。拾って貰えるだけでもありがたいのに声までかけて頂いて。ありがとうございます」

「いや。私は騎士として当たり前の事をしたまでだ。気にしないでくれ。それより、君は大量のモンスター達を一気に退治したと聞いたが、どのように奴等を葬ったんだ? 校長曰く、君の魔力はつい数日前まで平均を遥かに下回るレベルだったと聞いたが」

 

 あんのクソ校長。

 余計な事をペラペラ話しやがって。

 家の奴等以外に秘密がバレたらどうするつもりだ?

 最悪全校生徒全員に疑いのまなざしを向けられる可能性だってあるんだぞ。

 全く。なんて人だ。つくづく信用に足らない男だが、どうやらハーディスは俺が魔女の力でパワーアップしたとは知らないようだ。


 ならば、適当にごまかすのが得策だろう。


「確かに俺はEランクの魔力しか持ちませんから、強力な魔法は使えません。ですが、あの時はすこぶる調子がよかったんです。だから、自分でも信じられないような事が起こったんだと思います」

「なるほど。魔力とは体調によっても変化するモノなんだな。いい事を聞いた。では、だいぶ時間を取らせてしまったみたいだし、ここらへんで話を止めにするか」

 さっそうと近付いてきたハーディスに生徒手帳を手渡される。


「ありがとうございます」

「以後気を付けるように」

「はい」

 ただちに手帳をカバンの中へとしまう。

 

 ふー。よかった。

 とりあえず大事な物を無くさなくて済んだし、秘密もバレなかったようだ。

 正にラッキーと言えるだろう。さーて、そろそろ教室へ行こう。


「フフ。嘘を付くなよ、石野すざく。お前は魔女の力で私達の同志を皆殺しにした。この借りは必ず返させて貰う」

 校舎の方を振り向いた瞬間、耳元で囁くような声が聞こえてくる。


 な、なんだ、今のは。

 もしや、ハーディスが発したのか?

 

「おはようございます」

 うしろを向いてみると、十数メートル前方で生徒達にあいさつを行うハーディスが目に入る。


 あれ?ずいぶん遠くにいるな。

 おそらく、普通の人間があそこまで行くには五秒はかかるハズだ。

 少なくとも、会話が終了してからすぐ移動を開始しなければ到達できない距離と言える。

 よってハーディスが至近距離で声を出した可能性は低い。

 とすると他の誰かが怪しい事になるが、周りに不審人物は見当たらない。

 一体、どうなってんだ?声の主は確かに俺の秘密を知っていたし、同志を皆殺しにしたと言っていた。

 考えれば考えるほど謎が深まるような状況だが、分からない事を気にしていてもしょうがない。

 教室へ向け移動を進め、まもなく校舎入口付近に到着する。

 

 さすがに校門まで来ればもう大丈夫だろうとは思ってたが、案の定校庭には一匹の

モンスターもいない。


 フフ。

 なんて素晴らしいんだ。

 たった二日前なんて。


 う……

 途端にめまいと頭痛がしてきた。

 あの日の事を思い出すのは止めておこう。

 気を取り直し、いよいよ校舎内へ入る。


 お、割れ放題だった窓がちゃんと修繕されてるじゃないか。

 感心、感心。きっと、校長や教官達がいろいろと頑張ったんだろうな。

 ご苦労さん。今日ばかりは俺も、授業を真剣に受けて彼等の頑張りに応えるとしよう。

 珍しく気合が入った状態で教室へ足を踏み入れる。

 

 

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