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第51話 それでも美少女の暴走は止まらない

 おかしい。未だに声どころか何の音も聞こえてこないぞ。

 どうなってんだ?もしかして仕掛けられていた罠にでもハマり、むなしく果てたんじゃ。

 うわっ。妙に現実味がありすぎて怖え。

 正直恐ろしく不安だが、このまま家主が逃げる訳にはいかない。

 覚悟を決め、そっと内部に視線を注いでみる。


 

 あ、あれ?天然娘が見当たらない。

 どこへ消えたんた?ただただ立ち尽くしていると、向かいにあるキッチンから皿を持った赤月が姿を現す。


 な、何してんだ、あいつは。

 パンとシチューが山盛りじゃないか。

 一体、自己紹介はどうしたんだ?まさか、どさくさに紛れて自分だけ朝食を摂るつもりか?

 程なく赤月が向かいにある左端のイスに腰かけると、いくばくもしない間にパンを勢いよくむさぼり始める。

 

 あ、あんのやろー。さては食欲に負けたな。

 くっそ。こうなったら、破れかぶれだ。

 俺も食事をしてやる!思い切りよく、ドアの真正面に移動を行う。


 

 こりゃ、たまげた。ご両人とも食べる事に夢中なのか、顔を上げるそぶりすら見せない。

 ひょっとしてよっぽど腹が減ってたんだろうか?それとも鬼化が何らかの影響を。

 よく分からないが、俺にとっては絶好のチャンスだ。


 

 足音を立てないようこっそり中へと入り、キッチンでパンとシチューを調達。

 続けて天然娘の横に座るも、右斜め前方の麻宮に物凄い表情で睨まれる。

 

 こ、怖え……

 まるで変態でも見るかのような冷たい目をしてやがる。

 たぶん、昨日の事をまだ根に持ってるんだろう。

 こら、想像以上にきついな。とりあえず視線を合わさずに腹ごしらえをっと。


 おー!普段より美味く感じる。

 これは間違いなく絶品だぞ。うん、うん。

 ってよく見たら、いつも食べているのと形が違うじゃないか。

 何なんだ、こりゃ?

 

 そういえば、数時間か前に花崎と麻宮が何か作ってたっけ。

 おそらく二人がこしらえていたのは、パンだったんだろう。

 何だかめっさ嬉しい。正に同棲さまさまだな。

 ムフフフフフ。そうこうしている間に赤月が立ち上がり、キッチンへ移動を始める。

 

 ぎゃー。一体いつの間に。

 こら、まずいぞ。奴がいなくなってしまったら、獣しかいない危険地帯に置き去りにされてしまう。

 一刻も早く何とかしなければ。パンとシチューをむりやり口に入れ、どうにか飲み込む。

 

 うっ。胃が……

 正直かなり気持ち悪いが、もたもたしている暇はない。

 気力で動き出すも、既に皿を洗い終えた天然娘と流し台付近ですれ違う。

 

 ちっ。意外とテキパキしてやがる。

 なんてこった。


「xxxxxx」

 あれ?ちょこちょこと喋る声が耳に。

 一体、誰が発してるんだ?

 顔をあげてみると、鬼状態の花崎に話しかける赤月が目に入る。

 

 な、何やってんだ、あいつは!

 まさか、今更自己紹介か。いや、奴にはとうに名を明かしているのだからそれはないだろう。

 じゃあ、どうして?全く訳が分からないが、とにかく今は鬼の視界に入らないようにしなければ。

 

 ゆっくりとしゃがみ、キッチンカウンターの陰に隠れる。

 ここならとりあえずテーブルからは姿が見えない。

 一方でこっちはというと、少し動きさえすれば奴等の方を観察する事が出来る。

 正に状況把握には打ってつけの場所だ。怖いモノなど何もない。

 と言いたい所だが、この後どんなとんでもない事が起きるのかと思うとさすがに背筋が凍るぞ。

 

 

 不安と恐怖が増す中、どこからかドアの閉まる音が聞こえてくる。

 あれ?同時に赤月の声がしなくなったぞ。とするとまさか。

 恐る恐る身を乗り出し、テーブルの方を見てみる。


 やっぱりか。麻宮と鬼状態の先輩はいるが、肝心の二人がいない。

 おそらくはどこかへ移動を行ったんだろう。状況から考えるにおおよそ察しはいく。

 だが、一体いずこへ?そもそも目的は何なんだ?

 うーん。も、もしかして……

 

 


 こんな所ではノビノビ喧嘩が出来ないから、場所を変えて一戦交えようなんて気なんじゃ?

 うわー。ありえそうで怖え。もはや、隠れてる場合じゃないぞ。

 皿洗いなどすっぽかし、急いで外へ出る。

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