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第3話 お前を成敗する ギャー

「なあ、どうしてお前はいつもマニアックな格好をしてるんだ?」

「ほー。失態を犯した分際で質問とは。全くふざけた奴だ。貴様には私のとっておきをくれてやる!」

 突如イザベルが移動を始めたかと思いきや、教卓に手を突っ込み、何かを探し始める。



 おいおい。もしかしておしおきの道具でも取り出すつもりなんじゃ……

 ありうる。なにかと暴力的なコイツなら、とんでもない行動に出る可能性は十分だ。

 先週なんて授業中ちょっと居眠りしただけにも関わらず、ロープでぐるぐる巻きにしたあげく、木に吊るしやがったんだからな。それに三か月前なんて……

 

 あー。思い出したくもない。

 何だかとてつもなく憂鬱だ。

 というか、俺の質問はあっさり無視かい!

 不平不満は大いにありながらも万一の事態に備え、ドアへと一歩一歩近付いていく。

 よし。奴は探し物を見つけるのに夢中らしく、移動に気付いていないみたいだ。

 今のウチにとっとと外へ脱出しよう。




「フフ。あった」

 イザベルの不気味な声がちょうど耳に入ったその時、背中に強烈な痛みが走る。


 いってー。まるで感電したかの如く鋭い衝撃が、思考までをも停止させる。

 一体、何をしやがったんだ。

 

「フフッ。どうだ、私のムチは。気持よくて背筋がゾクゾクするだろう」

  

 こんのド変態女が!案の定、危険物で攻撃してきやがったな。

 畜生。覚えてろよ。いつか復讐してやるからな。


「そういえば、貴様。どさくさに紛れて私の事をゴリラ呼ばわりしていたよな」

  

 ぎくっ。どうしよう。めちゃくちゃ怒ってるぞ。

 こりゃ、さっきにも増して厳しい状況だ。一刻も早く打開策をひねり出したい所だが……

 

 気持ちだけが焦って全然頭が働かない。もはや、万事休すだ。

 制裁を覚悟した次の瞬間、偶然にもチャイムの音が聞こえてくる。

 するとイザベルが突如、教室からもの凄い勢いで飛び出していってしまう。


 えー。これはどういう事だ。全くもって訳が分からん。

 ひょっとして急な用でも思い出したのか?すっかり頭が混乱してるが、まあいい。

 キツい仕打ちを受けなかっただけでも良しとしよう。

 程なくクラスの人間が続々と戻り始め、何事もなかったかのように授業が始まる。


 よーし。数人のクラスメートには好奇の目を向けられたが、気にする事はない。

 さあ、頑張るぞ!気合いで三限四限を乗り切り、あっという間に昼休みを迎える。


 へへ。どんなもんだい。

 普段は寝てばっかの俺だが、机にもたれかかりもしなかったぞ。

 人間やれば出来るもんだ。

 

「えー。こちらはイザベル。我が一―Eクラスの遅刻魔、I,Sに告ぐ」

 おい。そら、丸っきり俺の事じゃないか。

 わざわざ校内アナウンスまで使ってどんな用件だ?

 

「貴様には醜態を晒した罰として放課後に魔法演習を受けて貰う。以上だ」


 えー。おしおきはもう終わったんじゃなかったのか。

 何なんだ、この時間差攻撃は。まじでへこむ。

 

 やりきれない気持ちを抱えながらも何とか授業を受け終え、いよいよ放課後となる。

 はー。ついに時間になってしまったか。出来る事ならサボりたい。

 だが、そんな事したらさらにしごかれるに決まってる。もはや、選択の余地はない。

 というかそもそも、あいつは俺にだけ厳しすぎるんだよな。

 足取りは重いながらも、ひとまず外へ移動を行う。

 すると、さっそく校庭の隅に突っ立っている中年男性が目に入る。

 

 げっ。あのツルツル頭に細身の体系。そして青色の軍服は……

 間違いない。あれはハゲ教官、デビット・ロウだ。

 また彼の演習を受けるのか。

  

「こんにちは。ご足労かけてすいません」

 気が進まないながらも、おもいきって声を掛けてみる。


「なんだ、誰かと思ったらお前か。一体、これで何回目の居残りだ?」

 うぜー。タコのくせにガミガミうるさいんだよ!

 

「確か、三度目くらいですかね」

「まあいい。では呪文を唱えてみろ」

「はい。出でよサンダー」

 直後、何かが光ると同時に破裂したような音が聞こえてくる。


 お。なんとなくいい感じだ。

 もしかして今日は調子のいい日なのか?

 期待を胸に待望の瞬間を待ちわびるが、一向に魔法が発動される気配はみられない。

 

 あれ?どうしたんだんだろう?

 もしや、さっそく失敗をやらかしたんだろうか?

 訳が分からん。それにいつもであれば、タコのどぎつい怒号が飛ぶのに。

 今日はやけに静かじゃないか。


 うしろを振り返ってみると地面に頭を突っ込み、盛大にずっこけている教官が目に入る。

 えー。なぜこうなった?理解に苦しむぞ。

 うわっ。眩し。てちょっと待てよ。

 まさか、つい何秒か前の光は太陽がハゲ頭に直撃した事で発生したんじゃ。

 実に怪しい。


 てか派手にずっこけてる所を見ると、おそらくさっきの音はこけた時に生じたと考えて間違いないだろう。全くなんて紛らわしい事をするんだ。

 

「あー。いたたたたた」

 それから数秒後、倒れていたロウ教官がようやく立ち上がる。

 

「もう何やってるんですか! いいかげんにして下さいよ!」

「馬鹿もん! それは、こっちのセリフだ」

「え? 俺、何か悪い事しました?」

「はー。お前という奴は。ほとほと飽きれてしまう。いいか? 先日も言ったが、雷魔法を発動するには我が敵に雷を下さんと唱えるんだ」


 あ、そういえばそうだった。

 すっかり夢と現実が逆になってしまっていたようだ。

 

「すいません」

「全く。こんな事はつい三日前に言ったばかりなのにどうしてお前は……早く詠唱しろ!」

 

 うわ。どうやら、完全に怒らせてしまったみたいだ。

 なるべく迅速な行動を心がけよう。

 


「我が敵に雷を下さん」

 ただちに呪文を行うと、快晴だった校庭中央部分の空が曇り始める。

  

「よし。やっと発動の手前まで来たみたいだな」

 ふー。よかった。

 どうも、少しは機嫌を直してくれたみたいだな。


「さすがの私も少し安心した。だが、イザベルからの話によるとお前は一般科目の出来も悪いみたいじゃないか。もうちょっとどうにかならんのか。前々から思っていたが」


 ちっ。何だよ。すっかり気が収まったと思ったら、ここぞとばかりに説教かよ。

 このタコボウズ。


 そうさ。確かに俺は魔法のみならず、すべての教科が五十点未満のダメ生徒さ。

 それでもちょびっとくらいは努力しているつもりだ。

 なのに、さっきからガミガミ、ガミガミ。もういっその事、地獄に落ちればいいのに。

 怒りだけがただただ増していく中、中央上空に漂っていた雷雲がゆっくり移動を始め、ちょうど教官の頭上で止まった。


 え?なんだ、こりゃ。

 まるで心の声が、魔法に影響を及ぼしたみたいではないか。

 こんなの普通ありえないぞ。なぜこうなった?

 

 

「そもそも頭が賢くない連中はだな」

 

 たく。いつまで話してんだ。被害を受けても知らんぞ

 仕方なく声をかけようとした瞬間、雷が雷鳴を轟かせながら教官めがけて落ち、視界を塞ぐように砂煙が舞う。

 

 ひー。なんちゅう迫力だ。

 まさか、死んでないだろうな。

 




 


 

 

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