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第12話 あの女の子は魔女?

「お疲れ様です。許可なくソファーに座ってすいません」

「いや、構わん。楽にしてくれ」

「なら、お言葉に甘えて失礼します。ついでといっては何ですが、ちょっといいですか?」

「なんだ? 何か用でもあるのか?」

「ええ、まあ」

「いいだろう」

 手荷物を大事そうにテーブルの隅に置き、校長が向かいに腰かける。

 


「じゃあ、さっそく。この人物は誰なのでしょうか? 是非とも教えて下さい」

「…………」

 

 あれ?どうしたんだ?

 途端に顔が険しくなったぞ。

 ひょっとして愛人かなんかなんじゃ。

 さすがにそれはないか。


「なぜそんな事を尋ねる?」

 謎だ。極めて訳の分からない状況だが、何か重要な事を知ってるのは間違いなさそうだ。

  

「実は昨日、彼女に会ったんです」

「な……」

 おいおい。今度は体が震え出したぞ。

 何だってんだ?もしかして相当な重犯罪者なんじゃないだろうな。

 こっちまで怖くなってきたぞ。

 

「そうか……一体、何をされたのだ?」

「両手を強く握られました。正直その時は訳が分からなかったのですが、しばらくして体が熱くなってきたのを覚えています」

「なるほど。では、君にはワシが知っているすべてを話そう。心の準備はいいか?」

 

 

 よ、よし。ようやく正体が露わになるのか。

 不安だが、いよいよ謎が解けるぞ。

 

「はい」 

「彼女の名はルテス・カウラ。オスフェリアの十代目校長で……魔女だ」

  

 は?創作の世界でもあるまいし、いきなり何を。

 もしや、からかってるのか?言い返したいのは山々だが、顔は至って真剣だ。

 ちゃかせる雰囲気ではない。ならば、洗いざらい聞いてやろうじゃないか。


「でも、俺が会った子はかなり若かったですよ。もし数百年前の校長なら、とっくに亡くなってるハズですよね?」

「残念ながら魔女は、十代の時の姿を永久に維持出来る。寿命は千年。よって遭遇したとしても不思議はない」


 まじか……

 初めて知った。実に驚きだ。


「もちろん魔力に関しても強大な力を秘めてるのだが、彼女達は自らがみそめた人間の体内にマナを受け取る為の器、ゲートを発生させる事が出来る。そして自分自身の体とゲートを特殊な魔法でリンクさせ、常にマナの供給を行うのだ。それらの過程を経て対象者は極めて大きな力を有する事が可能となるのだ。しかも、ただ相手に触れただけでな」



 そうか。だから、手を強く握ったのか。

 さすが、校長、よく知ってるな。

 うんうん……

 

 っておい!早くものめりこまれてるじゃないか。

 そんな話がある訳ない。俺は絶対に信じないからな。


「が……力を得たとしてもマナから発生する強大な魔力に体が耐えられず、いずれ死ぬと言われている」


 な、何だってー。

 ただ病人を助けただけなのになんで……

 


「そう落ち込むな。希望さえ持ってれば、どんな苦境でも乗り越えられるハズだ。決して下を向いてはならんぞ」

 あーん。一切の光すら見えない状況でよくもぬけぬけと。

 調子こいてんじゃないぞ、コラ。



「ほれ。飴でもやるから、元気を出せ」

 ちっくしょう。なめやがって。

 もうあったま来た!


「ふざけてんのか、じじー。こっちは何も喉を通らないってのに」

 とうとう我慢の限界を超え、校長の胸ぐらを両手でつかむ。


「く、苦しい……頼む、離してくれ。死を回避する方法ならある」





 



 



 

 


 

 


 

 




 

 



 

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