第11話 校長は寛大だった?
へぇー。どんな感じかと思ったら、意外と暗いな。
一見した所では、どことなく怪しさが漂っている。
と言っても何か変なモノがある訳でもなく、右隅には本棚。
左横には、背の低いテーブルと横長のソファー。
そしてちょうど数メートル前方には、机と奥にはどっしりと腰掛けた校長がいる。
しっかし毎度見る度に思ってるが、この人……
何となく顔もうさんくさいし、ハゲで肥満だから印象がめっさ悪いな。
お世辞にもいい見た目とは言えん。まあ余計な事はいいとしてはたして何の目的で呼び出されたんだろうか?まさか、退学を勧告するつもりなんじゃないだろうな。
「君が石野すざく君か。話は聞いている。生徒を黒こげにしてしまったそうだな」
やっぱ、そういう事になってるのか。
最悪だ。ただ、俺が魔法を唱えた後にいろいろ起きたのは事実だ。
納得はしてないが、とりあえず謝っておいた方がいいだろう。
「すいません」
「良い。気にするな。君も反省してるみたいだし、若いウチは誰にでも過ちはある。今回は水に流そう」
えー。うっそー。
インチキ臭い見た目の割にずっと寛大じゃないか。
もしや、前世は神だったのか?直後、校長が肩をぐるぐる回し始める。
「もしかして凝ってるんですか?」
「ああ」
よし。こら、恩を返す絶好のチャンスだ。
「よろしければもみましょうか?」
「ありがたい。是非頼む」
うしろに回り込み、さっそくマッサージを開始する。
「かなり固まってますね」
「実はもともとなんだ。大変だろうが、しばらくよろしくな」
「分かりました」
ありったけの力を込めて肩こりに勤しみ、あっという間に数分の時が経過する。
「ふっ。いいぞ、いいぞ。だいぶ楽になってきた。すっかりリラックスしたら、何かお菓子でも食べたくなってきたな。すまんが、しばらく待っていてくれ」
「ちょ、ちょっと」
嬉しそうに椅子から立ち上がり、校長がそのまま外へ出ていく。
あーあ。行っちゃった。何してんだよ。
誰かが訪ねてきたらどうすんだ?全く困った人だ。
と言っても、手がちょうど疲れてきたから良かったんだけどな。
ささ、ほんの少し昼寝でも。
うん?床に黒い本が落ちてるな。
見た所、さほど分厚くはないみたいだが。
そっと手を伸ばし、表紙を確認してみる。
おっ!歴代の校長写真集と書いてあるな。
こりゃ、退屈しのぎにはもってこいだ。どれどれ
さっそく中身を開き、ページをめくってみる。
ほうほう。基本的に男性が多いが、女性もいたんだな。
あれ?この銀髪でつぶらな瞳の女性。どっかで見た覚えがあるぞ。
うーん。誰だ?なかなか思い出せない。
もしかしてただ勘違いだったのか?
いや。確かに記憶がある。それもずいぶん昔ではなく、ここ数日の間でだ。
そう。たった一日……
あー。アルバムに載っている謎の人物は、昨日具合悪くしていた彼女だ!
なんて偶然なんだ。普通こんな事ありえないぞ。
もしや、赤い糸で結ばれてるんじゃ。
フフフフフフ。めちゃくちゃテンションが上がってきたぞ。
ありゃ?でも待てよ。
顔があるという事は、ひょっとしてオスフェリアの校長だったのか?
なら相応の年齢に達していてもおかしくないハズだが、フードの子はどう見ても十代だったぞ。
何がどうなってんだ?とりあえず現校長に聞いてみるとするか。
それから何をする訳でもなくじっとしていると、両手いっぱいに菓子を抱えた当人が戻ってくる。




