夏休みの作文読んでたら教え子が異世界に行ってたっぽいんだが
開いていただきありがとうございます。
月一で更新している短編ですが、今回は書いているのが間に合わなかったため急遽短いものを書いて投稿しました。簡単に読めますので是非最後までお目通しいただけると嬉しいです。
では長くなりましたがどうぞ。
ピクニック
高田ゆう希
『ぼくはなつやすみにいせかいっていうお山に行ってきました。とてもとてもおおきなおやまは人がたくさんいてびっくりしました。
ぼくは一人でまいごでした。そしたら、きれいなおねえちゃんがぼくの手をひいて『これをぬいてみて』とおおきなけんをぬかせてくれました。ぼくはまいごのことをわすれてそのけんをふりまわしたらおねえちゃんにおこられてしまいました。ちょっとびっくりしたけど、すぐにだきしめてくれました。いいにおいがして、安心しました。
『きみはゆうしゃなの』といわれましたが、よくわかりませんでした。たぶん、ゲームの世界をぶたいとしたステージなんだと思います。ぼくは、「ゆうしゃになる!」といってゆうしゃになりました。
すると、おねえちゃんがだきしめたあとに一っしょに山の中に行きました。とっても大きな虫がたくさんいましたが、けんで切るとみんなきれいに消えます。このときぼくはとっても楽しかったですが、おねえちゃんがぼくを見てよくわからない顔をしていました。
どんどん進むと、こわいおじさんたちがでてきました。おじさんはぼくに小さいけんをむけると、『こぞう、そのじょうちゃんをわたせ。ま、かえす頃には孕んであっちのお口はずたぼろだろうがな』と言いました。ぼくは『じょうちゃん』と『孕む』と『あっちのお口』の意味がわからなくておねえちゃんにきいたら、いつのまにかこわいおじさんたちはたおれていました。そのときのおねえちゃんの顔はわらってましたが、ちょっとこわかったです。
そろそろおひさまがお山にかくれちゃいそうな時間に、「われはまおう。そのじょうちゃんをおいていけばこぞうはたすけてやるし、じょうちゃんもそのうちかえしてやる」というよくわからないやわらくてまるっぽい虫がでてきました。
まおうといった虫は「ただし、かえすころにはわが子を孕み、あなというあなががぼがぼになっているだろうがな」といっていました。やっぱり、『孕む』や『穴ががぼがぼ』という意味がわかりませんでした。
だからおねえちゃんにきくと、いいからけんでたたいてみてといわれたのでたたいてみたら、地面にしみこんで消えてしまいました。
ぼくは世界を救ったようです。おねえちゃんと結婚することがきまりました。
二まい目に続く
二枚目
そして十年後。
僕は姉であり姫であったリストアと結婚しました。僕が十八歳、彼女が二十一歳の時でした。
僕はふと家族に会いたいと思いました。それを察したのか、リストアはその世界にあった魔法で送還魔法を完成させてあると言っていました。なので日本に帰ることしました。
だけどそこで問題が発生しました。王が崩御なされたのです。これは深刻な問題となりました。これで僕が王に、そしてリストアが王女から女王になりましたので、僕がここで帰ると王がいなくなってしまうのです。
僕は悩んで、決めました。日本には帰らず、ここで王として民を導くことを胸に秘め、王として立派に責務を果たすことにしたのです。
そこで、リストアが僕に黙って一つの魔法を造りました。僕が知ったのは魔法発動直後です。
リストアは罪の意識があったらしく、因果律を塗り代えるということをやってのけたのです。魔法陣自体は多次元関数で解けますので別紙で書き記しておきます。
僕は因果律の塗り代えがどれだけ大変か知っていました。そして、多次元関数を読み取って何が起こるかわかって顔を青ざめました。
僕は過去の日本に戻り、リストアとあったという事実が消えると書いてありました。
僕は驚きで涙がぽろぽろとあふれてきました。
好きでした。僕はほんと(涙で判読不能 )だからいやでした。
なので、因果律の魔法陣を書きなおして、彼女を連れて帰ってきました。
先生は気づいていないかもしれませんが、高槻里亜、彼女が僕の彼女です。因果律を塗り代えることで、本物である高槻莉海は消え、僕の彼女と入れかえました。
僕は今、夏休みを終えて幸せです。とても楽しいピクニックを終えて、大切な彼女を手に入れました。
(三枚目に続く)
(三枚目)
ぼくの夏休みはいじょうです。
とても、とてもじゅうじつしたなつやすみでした。ぴくにっく、たのしかったです。
終わり』
先生から一言
孕む、という言葉をよく知っていましたね。
夏休みの作文は本当のことを書きましょう。いくら剣が後ろに飾って、里亜ちゃんのことをリストアと呼んでいても、本当のことを書きましょう。たしかにゆうきくんは夏休みが開けてから急に大人びた印象があるので良いことですが、本当の本当に作文は本当のことを書きましょう。
お読みいただきありがとうございます。
おさらい:主人公はクラスメイトを一人、自らの恋路のために消しました。