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00 プロローグ 紅蓮の再会

去年書いた「生まれ変わったらまた逢いましょう」の続編です。

短編のつもりで書いていたのですが、長編の方が見やすいと思いますので、長編として更新します。


甘さもある数奇な恋愛ものですが、ダーク寄りで流血もあるので、苦手な方はお気を付けて。




 やつらが用意した食事だと理解していても、あがらうことなどできなかった。

 喉は悲鳴を上げるように軋み合い、息が通る度に痛みを走らせる。何日も何日も続いたこの痛みからの解放と、オアシスの水を求めるような切望から、罠に足を踏み入れた。

 横たわる学生の少女を抱き起こし、ブラウンの髪を退かして首筋に唇を近付ける。

 彼女に毒が仕込まれていると理解していても、止めることなどできない。

 牙で肌を突き破れば、果実のように甘い汁が溢れた。口の中に広がる血は、今までで最高に甘美なもの。とろけてしまいそうな舌で、キスをするように堪能する。欲する喉に押し込んだ。それが喉を潤わせるはずだった。

 途端に血はマグマのような熱を放ち、喉を焼き始める。体内の血が焦がされるようだった。今までで一番、強烈な毒だった。不死身の身体が死に追いやられる感覚。それがなにを意味するのか、わかった。

 抱えていられず落とした彼女が、俺の下で目を開く。ブラウンの瞳を、知っている。

 ずっと、ずっと、捜していた最愛の人。


「……ジェレン」


 久しい聞き慣れた声が、俺を呼ぶ。

 嗚呼、俺の愛しい人。再会する日を、どれほどの時間待ち望んだことか。

 彼女のかつての名を呼んで、返事をしようとした。しかし彼女の愛が宿る心臓を、"あの男"が杭で貫く。声は、出なかった。

 彼女の隣に倒れる。彼女は、目を閉じていた。

俺は起き上がれない。再生するために、血を巡らせる心臓は停止した。それがなくとも、彼女の猛毒がもうじき俺を殺すだろう。

 これはなんの因果か。

やっと再会した彼女を目の前にして、彼女の毒で、最期を迎えるなんて。

 最期に、彼女を傷付けてしまうなんて。

 "あの男"は全てを知っていて、彼女を罠に使ったと言うのか。地獄で焼かれるよりも恐ろしい苦痛を与えることができると、知っていたというのか。


 俺が愛した人は、猛毒の花だった。

 死に至らしめる猛毒。

 彼女の猛毒の血に溺れ、彼女を傷付けた罪に溺れ、彼女への愛に溺れて、俺は死ぬ。


 ただ君と再び巡り逢うためだけに生きていたのに。

 最期に、愛していると伝えることも出来ず、俺は死ぬ。

 喧騒の中、心臓が再び動き出したのを感じた。紅蓮の炎が灯り、彼女を照らす。俺は彼女を目に焼き付けるように見つめて、死の淵へと意識を沈めた。






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