Ep12 インテリファイター
亮介はキズだらけの体で玲衣を担ぎながら歩いた。
大伴駅に行くまで、どれほどかかった事だろうか…。
とりあえず、駅についた亮介はホームの椅子の所へ行き、玲衣を寝かせてその隣に座った。
リストバンドを交換した時と同じ席に、あえて座った。
亮介はため息をつく。 まだショックが抜けないようだ。
手を目に当てて“あ〜”と叫んだ。
「どないしはりましてん?その怪我。誰かとケンカしたんやおまへんやろな?」
いきなり知らないオバチャンに声をかけられた。
そりゃ高校生の男女が二人で傷だらけでいたら、誰だって怪しむだろうが…。
「あ〜はぁ。ちょっと色々ありまして…ハイ。」
亮介があいまいに答えると、オバチャンは顔をしかめた。
「まぁ、近頃の中学生はケッタイやな〜。恐いわ〜」
それだけ言って去っていった。
――ケッタイかよ…しかも中学生!?失礼な…
それにしても、オレらそんなに目立つかな…
それから、何分か経った。
「うわ〜どーしたの君ら」
次は大学生ぐらいの茶髪のニーチャンとネーチャンに声をかけられた。
――わぁっ。こんな人たちにまで…
なんて答えようかな…
「ちょっと事故に会ったんです…」
亮介が話し終わるや否やニーチャンが亮介の頭をぐわしっとつかんだ。
「気ぃつけろよ。高校生は調子乗るとこがあるからな〜」
「あ〜はぁ。スミマセン…」
「別にオレに謝んなくてもいいけど、ちゃんとそいつに謝っとけよ」
「あ〜はい。では…」
なんか勘違いしてるニーチャンとネーチャンは、そのまま慌てて改札口へと走っていった。
――本当…いろんな出会いがあるな。
傷ついて得ることもあるのかぁ…
亮介がしみじみしていると玲衣が目を覚ました。
傷はだいぶ氷のパワーで治したらしい。 こんな事ができるのもファイターの特権だ。
「…僕須は…?」
玲衣の貴重な発言が出た。 でも、少し悲しげなセリフだ。
「アイツ…勝利して、余裕ぶっこいて帰っていった。」
玲衣は何も答えなかったが、悲しげな目をしていた。
それから、さらに何分か経った。
そろそろ、家に帰る支度をはじめた時だった。
「君たち…すごいオーラを感じますねぇ」
変な奴に声をかけられた。 ついでに言っていることも意味不明だ。
「あの…この傷なら心配には及びませんけど…」
「そんなことを聞いているんじゃありません」
そいつは年のころは亮介と同じくらい。
少し茶色がかった髪が、きれいにセットされている。
手には国語辞典や参考書を持っていて、勉強家と言う感じだ。
「君達、ファイターでしょう。」
そいつがいきなり聞いて来た。
「え?君もしかして…??」
「察しがいいですねぇ。そう、僕はファイターですよ。かなり率直にバラしましたが。」
そいつが超意外な正体をバラした。 インテリでもファイターになれるんだなぁと思った。
「僕は倉前隆。湖高校在学中、土のファイターです。」
隆は眼鏡をクイクイッと動かした。
「…闇風玲衣。立花高校、氷のファイター」
玲衣も軽く自己紹介をした。
「玲衣はかなり無口だけど、いいやつだよ。 あ!オレは松浦亮介!!桜谷高校、炎です!!」
亮介は、自己紹介&玲衣の補足紹介をした。
「よろしくお願いしますよ。」
隆は2人と軽く握手を交わした。
そして、玲衣からリストバンドをもらった。
「今日一緒に帰ろうぜ!!」
暗い気持ちだった亮介は、一気に吹っ切れた。
新しい仲間が出来た今、もう恐いものは無い!!という感じで…。
つづく




