Ep10 そんだけ?
「炎のファイターがお前なように、風のファイターもいるんだよ。」
勇太はもったいぶるのが上手い。 亮介はイライラして来た。
「で、風のファイターがどうしたんだよ!」
勇太は何秒か黙ってクスクス笑った。
「すっげー強いらしいな。アハハ…」
勇太が真顔に戻った。
亮介は唖然とした。
「そんだけ?」
「もちろん、そんだけ。」
勇太が意地悪そうに笑った。
「そんだけのためにオレの見動き止めてまで話したの!?」
「あぁ、お前すぐ騙されるから面白いんだよ」
勇太がワハハと笑った。そして拘束をといた。
亮介が立ち上がって腕をブンブン振り回した。
「まぁ、風の奴倒したら鼻が高いけど、お前倒したって嬉しくないし〜。」
亮介がカンカンに怒る。 勇太が亮介をチラ見しながら
「まぁ、オレの目標は遥か高みに向いているからねっ」
と付け加えた。
*
亮介がなにげに炎を放出した。
「よし、再開しようよ、戦い…」
指先から炎を出し、真顔で勇太に向かった。
勇太も負けずに剣を振った。
玲衣は今度こそ失神している。
もう救世主は現れないという中で、亮介は必死に戦った。
しかし…勇太は強かった。
「わぁっ」
亮介は吹き飛ばされ、もろに塀にぶち当たった。 頭から流血する。
それでもめげずにファイアーボールを発射する…が、勇太の盾に跳ね返されてしまうのだった。
「しつこいねぇあんた。 オレもイライラして来たよ。」
勇太のセリフを聞いて、亮介はふと思った。
――あいつ、イライラしてくると“お前”から“あんた”に変わるんだな。
しかし、それはどうでもいいことだ。
「サイバーソード」
剣が残像を残して大きく振られる。亮介のファイアーすらも掻ききられる。
何度も技を掻き消され、亮介は精神的に参ってきてしまった。
「オレ、もういいかも…」
そんな弱気なことを言ってしまった。
「アハハ。あんた、正直でいいねぇ。」
勇太が武器を持ちかえた。 その時…
――驚くヒマさえなかった。
一瞬何かが目の前に広がったと思った瞬間、亮介は地面に這いつくばっていた。
レーザーガンを打たれたのだ。 一瞬にして亮介の腹を打ちぬいた。
「カハッ…」
亮介は血を吐いて倒れた。
もう、立ち上がる力さえ残っていなかった…。
つづく




