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第2話

 それは前触れもなく、突然の事だった。


 太陽系の守護の要であるはずの海王星軍が反旗を翻し、配置していた大艦隊が地球に向けて侵攻を始めたのである。

 そして、瞬く間に天王星を制圧した。

 しかし、天王星軍も彼らとグルであった。


 地球軍と海王星軍を除く各惑星軍の戦力は、ほぼ均等が取れていた。

 連邦軍の軍というのは、主に艦隊の事である。つまり各種戦闘艦や輸送艦、各種工作艦、宇宙空母に搭載された艦載機などの集まりだ。

 地上のように、陸海空軍があるわけではない。ざっくりと言えば海軍だけである。

 もちろん、それを運営する部門。他に補給、整備や修理、兵を訓練する部門や基地や軍港などの施設もある。

 (戦闘艦は、宇宙戦艦、宇宙巡洋艦、宇宙駆逐艦、宇宙空母など。呼称は現代の軍艦に由来する)

 当然、地上を制圧する兵や兵器など、現代で言う陸軍のようなものもあるが、それは軍と言うよりは警察組織や警備隊、傭兵のようなものであり、現在、他惑星国家を制圧するような大きな組織はない。そういう規模の争いがないので、必要がないからだ。


 しかし近年、天王星軍が艦隊の戦力の増強を要求してきた。

 それは、辺境の守護の要である海王星軍のバックアップのため、という事だった。

 確かに、外宇宙からの侵略があった場合、海王星軍が敗北したり、また最初の侵略が陽動で、海王星軍がかかりきりになったところに敵の本体の侵略があった場合、天王星軍は丸裸となる。


 連邦軍総司令本部も理解出来るものであったため、それを許可した。

 そのため現在の天王星軍の戦力は、他の惑星軍の2倍である。

 しかし、こういう事(反乱)のためだったのだ。


 各惑星軍の戦力(艦数)は。(艦数についてはおおよそ。「約~隻」という表記は省略しています)

 水星軍:なし

 金星軍:1万

 地球軍:4万(連邦軍の本拠地のため、海王星軍、天王星軍を除く他の軍より多い)

 火星軍:2万

 木星軍:2万

 土星軍:2万

 天王星軍:4万 ※反乱

 海王星軍:6万 ※反乱

 である。


 つまり裏切った海王星軍と天王星、合わせて10万。

 地球軍を含め、それ以外を合わせると11万となる。

 このまま海王星軍と天王星軍が侵攻し、土星軍と交戦して土星軍が敗北、壊滅すると、10万対9万となり、地球軍側が不利になる。

 海王星軍、天王星軍対土星軍は10万対2万なので、恐らく土星軍は一瞬で壊滅、海王星軍、天王星軍の被害はほとんどないだろう。


 これは単純過ぎる計算である。

 なぜなら、海王星軍、天王星軍は既に集結しているが、その他の各惑星軍は分散している。

 そのため各個撃破されると相手にもならない。

 空間跳躍(ワープ)で集結する、という方法もあるが、万単位の戦闘艦が一気に行うと空間が歪んで何が起こるか分からない。

 ワープアウトポイントでブラックホールが形成されるかもしれない。


 逆に言えば海王星軍、天王星軍が、突然地球付近などに現れない、という事でもある。

 連邦軍総司令本部はこの事態について、緊急の作戦会議を開いた。

 海王星軍と天王星軍(以下反乱軍と表記する)の声明を要約すると、独立のための軍事行動との事。

 つまり、反乱軍側の言い分としては、様々な権利が地球に集中しているのが問題、という事であった。


 しかし、それは歴史的にやむを得ない。

 全ては地球から始まったからだ。

 では、今更どこに?というのが地球側の考えであるし、実際分散させる方が問題である。

 従って、この事態は反乱軍の言いがかり、というのが本質であろう。


 恐らく「反地球派」のような組織、または宗教的なものだろう。

 地球から一番遠い、というのもあるのかもしれない。

 要するに「何故、我々が外敵から地球を守る盾にならなければならなければいのか」という思想だ。

 地球側からすれば、そのために大戦力を配置した。そして、守るのは地球だけではなく、他の惑星も含む太陽系だ。


 結局のところ、人類の故郷は地球である、という考えも、ただの歴史の一つ過ぎないという事である。各惑星国家で生まれ育った者はその惑星国家こそが故郷であり、この話に決着はつかないだろう。実際地球から移住したのは遥か昔の事なのだから。

 要するに、極端に例えるなら、人類の発祥の地はアフリカ大陸であろうとされているが、日本で生まれ育った者がアフリカ大陸が自分の故郷と考えるようなものである。


 とにかく、対策しなければならない。

 まず、ゲートを反乱軍が使えないようにする。

 天王星に反乱軍が集結したのもゲートを使ったからだ。

 各船には認識コードが付いているため、ゲートを使用した履歴が残る。


 奇襲のような侵攻であっても、海王星軍6万が移動すれば、直に察知する。

 ゲートで少しづつ時間をかけて集結していたわけだ。

 ゲートが使用出来ない、というのも問題なので、審査は厳しくなり、反乱軍以外は許可制にはなるが、使用出来るようにした。


 まず、優先すべきは艦隊が集結する事である。

 現在反乱軍は、天王星から堂々と全艦が地球に向かって移動している。

 各惑星を侵略する事はしないだろう。目的は地球だけだ。

 それこそ彼らが「正義」を主張する事が出来なくなるわけだから。


 それなら、連邦軍も堂々と、しかし急いで集結しなければならない。

 特に反乱軍の侵攻ルート上でなくても良い。

 連邦軍が集結すれば、彼らの方からやってくるはずだ。

 目的が地球であろうが、連邦軍の大艦隊は反乱軍も放置することはできないのだから。


 並行して、戦闘艦の建造も急ぐ。

 火星は、木星との間にあるアステロイドベルト(小惑星帯)から採掘される鉱物資源によって、太陽系一番の工業国家となっていた。

 人口も50億を超えている。


 そして、火星国全力で戦闘艦などの製造をする事が決定したわけだが、いくら急ごうが、戦闘艦が直に完成するわけもなく、また、無計画に製造するわけにもいかない。

 どう考えても年単位の計画である。もちろん、1隻だけ、ならばかなり早く完成するが。 

 とにかく、今はやれる事をするしか無い、との結論となった。


 そして、集結、決戦場所は交易路など民間人がいない所が望ましい。

 とはいえ、反乱軍も輜重部隊は随伴しているが、移動基地のようなものは無いので、こちらは補給や修理が充分に出来るようにしてアドバンテージは確保したい。

 集結時間も考慮して、木星の公転軌道上にあるハブステーションゲートの近くに決定した。

「ハブステーションゲート」と言うのは、進路を分岐する施設である。これは、現代の列車の主要駅ハブステーションとは異なり、多少の宿泊施設やそれに伴う施設などはあるが、街が発展していたり、観光するところでもなく、ただ単に複数のゲートに向けて分岐するだめだけの施設で、木星の公転軌道上にポツリと浮かんでいるのである。

 移動する事は可能であるが、基本的に同じ場所に存在している。(木星と同様に公転しているわけではない)


 ゲートがあれば補給や修理が大幅に容易となる。

 また、戦略、戦術的にも利用できる。

 ハブステーションゲートの前方であれば、ゲートの守りも兼ねる事が出来る。

 こうして、集結、決戦場所が決定。土星軍も含め、各惑星などの守備軍などを除く全艦隊に集結、迎撃命令が通達されたのだった。

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― 新着の感想 ―
海王星と天王星の勢力が反旗を翻しましたか。 これは厄介な事になりましたね。 何しろ侵略を受けた時に真っ先に対処する事になる辺境や国境線には強力な戦力を配置する必要がありますからね。 いわゆる辺境伯が強…
[一言] あわわわわ……!!
[良い点] 連邦軍の形成過程、戦力配分、火星、どれも想像力をかきたてられます。 ゲートでどうなるのか! [一言] ありがとうございます。 引き続き楽しみにしています。
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