戦士の憂鬱
戦時の砂漠では、厳しい環境の中で戦闘が繰り広げられる。砂漠の広がる地平線には、砂丘や岩山が連なり、一面に広がる砂の海が広がる。
日中の砂漠は、灼熱の太陽の下で炎天下となる。砂丘からは熱風が吹き、砂粒が舞い上がる。砂漠の地面は熱気で輻射し、乾燥した空気が喉を渇かす。
夜になると、砂漠の気温は急速に下がり、砂漠の夜は冷え込むだけでなく、しばしば強風や砂嵐が起こる。砂が舞い上がり、視界が制限されるため、戦闘は一層困難となる。
砂漠の中での戦闘では、熱中症や水不足、砂塵による装備の損傷など、さまざまな困難が待ち受ける。しかし、兵士たちは執念と勇気を持って戦い、過酷な環境に打ち勝とうとする。
砂漠の広がる戦場は厳しいが、その美しさと広大さも同時に感じられる。砂丘の起伏や夕日に染まる風景は、まるで絵画のようである。しかし、戦争の現実と破壊の跡も見受けられ、戦時の砂漠は厳しさと美しさが交錯する場所となる。
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「おい、足付き。そっちから敵さんは見えるか?」
「だから足付きはやめてくださいって。そんないいもんじゃありませんよ。全く、操作しにくいったらありゃしねぇ。キャタピラの方がよっぽどマシですよ」
「その様子じゃ、そっちからも見えねぇんだな。気を付けろよ。敵さんが居ることはセンサーが捉えてて間違いねぇんだからな」
二人乗り用の戦車が一般的であったが、一人でも操縦出来る一人乗り用の装脚車輌、二足歩行ポットを当局が開発したのだか、操作がしにくいと乗組員からはすこぶる評判が悪かった。要するに二人必要だったところを一人で操縦出来るのだから、単純に戦力が2倍になることになる。
新型、最新式とは名ばかりで、そのことを百も承知である戦員達はそのポットのことを「足付き」と呼んで揶揄していたのである。
全く、当局のお偉いさんが机上で考えることと来たらろくなものが無い。
一度でいいから前線に出てみろってんだ全く。
ガシャーン・ガシャーンという駆動部の金属が軋む音と、轟々というディーゼルのエンジン音が砂漠に響き渡る。駆動部やエンジンが砂を噛むと余計にそうだ。
戦車の乗員は、敵の位置を確認するためにいくつかの手段を利用する。まず、戦車の上に搭載された観測装置やセンサーを使用して、敵の存在や位置を探知する。これには、光学式の望遠鏡や赤外線センサー、レーダーなどが含まれる。
また、乗員は戦車の周囲を注意深く観察し、敵の兆候を捉えることも重要である。これには、敵の動きや煙、火の光、音などの観察が含まれる。乗員は経験と訓練に基づいて、これらの情報から敵の位置を推測することもある。
さらに、他の部隊や指揮官からの情報も利用され、無線通信や戦術的な指示により、乗員は敵の位置や活動に関する情報を受け取ることができる。
これらの要素を組み合わせて、戦車の乗員は敵の位置を確認し、適切な対応を取ることができるのである。
そんなこと先輩に言われなくったって分かってるっつうの。
しかし、敵が居るのが分かってるってのに気配すら感じられないというのは厄介なもんだ。
「見えない敵」とやり合うのは文字どおりほんとに厄介だ。
「非番の日くらいゆっくりさせてくれっての」
世がゴールデンウィーク真っ最中の中、明日から仕事の俺はそう心の中で呟いた。
明日から仕事の殿方・姫方も多いことだろう。
戦時の砂漠とは職場のことであり、見えない敵というのは休日に於ける漠然とした不安感である。
そして、「敵」とはまさに仕事のことである。