第36話 メルの告白
「あなたが解釈しているベネットの気持ちは実は全然違っていたってこともありえるんだから」
テティスにそう言われてメルは送り返される。
秘密の通路をとおって王太子夫妻の部屋に戻ると、ばあやがおかんむりであった。
「メル様、出かけるときは一言おっしゃってくださらないと……」
腕組をして仁王立ちになっていたばあやの姿を見て、メルは平謝りするしかなかった。
そしてばあやの不機嫌がおさまってからメルは言った。
「今日は夕食前にベネット様と二人きりで話したいことがあるから、帰ってこられたら皆席を外してくれる?」
その発言を聞いて、ばあやは、まあまあ、と、感嘆の声を上げた。
そしてベネットが夕刻部屋に戻ってくると、言われた通り自分も含め使用人をすべて下がらせた。
「二人きりでとおっしゃるからには、これからのことを何か相談されるのかもしれない。でも楽観できないのがもどかしいですわね」
王太子夫妻の部屋の扉を振り返りつつばあやがつぶやくのであった。
「お疲れのところわざわざ時間を取っていただきありがとうございます」
ソファーに向き合って座りながらメルは深々とお辞儀をした。
ベネットの方は、ばあやにもかなりこき下ろされたし、メルが何を言うか戦々恐々である。
「実はテティス様に相談したところ、実家に帰るのが嫌なら、国王陛下から屋敷や領地を賜る方法がある、と、言われました」
なるほど、その手があったか!
ベネットは目からうろこのグッドアイデアだと思った。
「でも、気が進まないのです」
それに対してのメルの意外な答えにベネットはいぶかった。
「おかしいでしょう。そうやって私を不快にする家族を遠ざけ恵まれた形で平和に生きる方法もあるってわかってもなお、ベネット様と一緒に他国で平民として暮らすと言う道の方が心に弾みがつくのです」
「メル殿、それはどういう意味……?」
ベネットはメルの真意をつかみかねていた。
「あの……、ベネット様が王太子の位を辞した際には『離婚をしてもかまわない』といわれました。『かまわない』ってことは『しなければならない』ということではありません。私が、その……、離婚をしたくないとおもわなければ……」
メルもベネット同様、幼いころから家族に冷遇されていて、自分の希望することを意識し、口に出すのが苦手であった。
「でも……、ベネット様は、やはり『離婚』をご希望なのでしょうか?」
いいたいことがグルグルまわって、ベネットにまっすぐ伝わっていない、おそらく……。




