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第31話 ベネットの懊悩

 翌日、ベネットは国王夫妻に「本当の王太子」の選定をできるだけ早く行ってほしいと要望を述べた。


「はやく隠棲生活に入りたいのです」


 理由を聞いた国王にベネットは答えた。



 ベネットの言葉によって、第二王子のオーブリーと第三王子のクレールの競争が激化した。


 王宮内でどちらを推すかの判断を家臣それぞれが強いられるようになり、勢力は拮抗する。


 おそらく国内でも有数の実力者であるメルの実家の侯爵家の娘エメ、彼女を射止めた方に大きく天秤が傾くだろう、との推測が重臣たちの間に広まっていた。



 王宮内でのこうした動きについては正直言って、ベネットもメルも関心がなかった。


 ただベネットは、メルの実家の冷たさについて甘く見ていたのかもしれない、と、考え直していた。


 自分自身、容貌のせいで家族から白眼視されてきていたが、それはあくまで呪いのせいで、普通の家族においては多少問題があってもそこまでひどいものではないという認識であった。

 しかしそれも改めなければならない。


 そして、自分の影響力についても少々うぬぼれていた。


 確かに今は自分が強く出れば、王族やメルの実家の者たちがメルに非情な振る舞いをするのを辞めさせることができる。だが、その影響力は王太子の座を辞した後にも保ち続けられるわけではない。


 自分の代わりにメルを守ってくれる者を早急に見つけなければならないな。


 でもそんな人物がいるだろうか?


 しっかりしろ、ベネット。

 メルの幸せのためだ。


 ベネットは自分を奮い立たせた。


 しかし、ばあやからメルがひどい目にあわされたと報告を受けるたびに、当事者に抗議に行った時のような高揚した気分はなく、それを考えるたびに鉛のように重苦しいものが心の中にたまった。



 自分はなんて勝手な人間なんだろう。


 そもそもメルは自分のことを「優しい」と言ってくれたがそんな立派な人間ではない。


 おそらくだが、自分と同じように家族に冷たくされている娘を守り虐めている連中を非難することによって、自分も少なからず溜飲が下がるような思いをしていたのだ。


 純粋に彼女のためじゃない。


 私のようなものよりもっと彼女を大切に思ってくれるような相手を。


 とはいっても心当たりは全くない。


 ベネットはばあやに相談してみることにした。


「アホですか」


 ベネットから話を持ちかけられたばあやの開口一番のセリフである。


「……っ!」


 ばあやの率直すぎる暴言にベネットは息をのむ。


「まあ、その……、不敬とおっしゃられるなら後でいかようにも罰をお与えくださいまし。だけど、どこの世界に妻の後添えを自ら探す夫がいるのですか?」


「私とて好きこのんでそういことをしているわけではない。しかし……、事情は分かっているだろう。私がいなくなった後、メルを守れるような相手を……。そうだな、私以上にメルを大切に思い、メルがひどい目にあっているときは即座に駆け付けてその者を排除し、それが可能なぐらいの腕っぷしと権力を持って、容貌も私以上に優れた者が……、いや、容貌の方は問題ないな。私以上のものなどいくらでも……」


 ベネットの注文にばあやのサモワはめまいを覚えるのだった。



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