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妖神学園 改正版  作者: 戯伽
2年生
98/103

20.嫌夢とパニック

 うなされ声で目を覚まし、月火がそばにいることを確認した。




 病院のベッドで一緒に寝たが、うなされたのか。



 目を触ろうとしている手を狐が押さえていて、月火の頬に触れると涙で濡れている。




「黒葉退いて」

「目触るの」

「いいよ、大丈夫」



 黒葉が退くと月火は白葉も押し退け、小さく丸まった。



 火音は月火の頬に手を当て、ブランケットで包むと背をさする。



 そのうち収まったのか、小さく丸まりながらまた眠り始めた。















 明け方になるとまたうなされ始め、四時半頃になると悪夢で目を覚ました。





 包帯を嫌がる手を押さえて、包帯を解く。



「大丈夫、すぐ解くから」

「……ん……」

「寒い?」



 月火は首を横に振り、火音にしがみついた。



 火音は月火の頭を支えると包帯を解き、ガーゼも取った。



 月火はパッと目を開け、ちゃんと火音であることに安心する。



「……ぎゅー」

「よしよし」



 月火は火音にしがみつき、火音はそのまま月火を抱き起こした。



 膝に座らせて、背をとんとんと叩く。




「もう大丈夫。夢は夢だから」

「……んん」

「んな心配しないで。なんかあっても俺が守るから」

「……はなれないで……」

「一生離れんよ」





 夜中のうなされた悪夢でかなり汗をかいたようで、風呂に入りたいと言うが入れるわけもないのでタオルを水で濡らした。




 病衣を脱いで、半袖のTシャツになる。



 腕や首を拭いている間に髪を上げてくれて、少しほっと息をついた。



「……背中拭いてください」

「マジ?」

「変なことしたらぶっ叩きます」

「狐に頼むんじゃ無理?」

「え引っ掻かれますよ?」

「そんなことしないわ!」

「シー」

「もー……」



 火音は月火にブランケットを渡すと視線を外して目を閉じ、月火はその間に服と肌着を脱いだ。



 ブランケットで前を押さえ、何となく体育座りになった。




「はい」

「……白」

「うるさいです」




 火音は背中を拭くと首や肩の届かないところも拭いてくれて、すっきりした月火はちゃっちゃと服を着た。



 髪も濡れタオルで軽く拭く程度。




「拭くだけでもちょっとすっきりしました。タオルって偉大」

「人生最大の度胸試しでもした気分」

「どうゆうことですか?」



 月火が聞いてもため息しかない火音に疑問を感じたが、火音はまたタオルを濡らし直して戻ってきた。



「目閉じて。顔拭く」

「これが一番面倒臭いです」

「だから俺がやってんの。お前やったら絶対雑にやって目擦るだろ」



 ぐうの音も出ない月火はおとなしく目を閉じると、火音に顔を拭いてもらった。





「はい」

「……ありがとうございます」

「待ってタオル片付けるから」




 なんかちょっと違和感のある火音に疑問を感じて、月火は早くとベッドに呼んだ。


 火音は呆れながら戻ってきて、月火の前に座った。





























 そこで、目が覚めた。




 意味が分からない、悪夢なのか吉夢なのか、予知夢なのかなんなのか。



 夢を疑問に思ったあとに、すぐに、目を開けているのに真っ暗という状況にびっくりして目を押さえた。



「もうこれやだ……!」

「待って月火ストップ……!」

「もやだぁ……!」

「すぐ解くから、ちょっと待って。起きれるか」

「もー……」



 月火は火音に掴まって起きると、夜中の間に外れないよう結ばれた包帯を取ってもらう。




 その間、ずっと火音の服の袖を掴んでいると、突然その手が取られた。



 じんわりと温かみが伝わってきて、背筋がゾッとした。


「何!? 何誰何!?」

「わっ……」



 瞬間手を引っ込め、火音にくっ付く。


「待て待て待て落ち着けどこ行く気だ」

「もやだぁ! なんで誰かいるの……!?」

「寝坊したのはお前だろうが。暴れんな」



 火音の腕が腰に回って、ベッドから降りて逃げようとしていた月火の包帯を解いた。


 ガーゼも取ると、月火はいきなりの眩しさで目をキツく瞑った。それから当然のように目を押さえようとするので、それをされる前に火音が目に手を当てる。




「冷たい……」

「黙れ万年冷え性」




 火音は片手で包帯とガーゼを棚に置き、ゆっくりと月火の目から手を離した。



 さっき恐怖で驚いたせいで、ちょっと半泣き。




「はい。ずいぶん楽しげな夢見てたようで」

「殴ります」

「だから擦るなって」

「だって……」

「主治医に殴られるぞ」



 火音は暴れて少し斜めを向いていた月火の頭を掴むと、足元側の横に並んだ女医を見せた。



 壁にもたれた知衣はバインダーに色々書き込み、綾奈と知紗はそのちょっとかっこいいポーズを嬉々として真似している。



 その他に、部屋には兄ペアと廻醒、二年ズもいた。



 なかなかに殺風景だった部屋が賑やかになっている。




「綾奈、どう思う?」

「なかなかの重症ですね。まさかここまでパニックになるとは」




 医者たちの話し合いの合間に、月火と火音は小さな喧嘩を二つして、火音は月火に無理やり目薬をさした。

 いつもと逆パターン。




 小さな喧嘩ってのは、目擦るなってのと、火音が夢からかったかなんかで月火が怒ったのと。


 結局目擦るなに戻ってきて、目薬さしたあとは収まった。




「これいつさすんですか?」

「一日三回。あと二種類」

「めんどくさ……」



 火音がタオルを用意する間に月火は皆に背を向けて片手で目薬をさした。




「目が大きい上にまつ毛が上がってるんだから目薬はさしやすいなんてもんじゃないよね」

「まつ毛の意味なさそうなぐらいだよね」

「下まつげまでカールしてるってなんだよ超人かよ」

「天使だよ天使」

「エンジェル!」



 二年ズが話している間に、零れた目薬を拭おうとして目を擦りそうな月火を火光が止めていると火音が戻ってきた。




「上向いて」

「ん?」



 火音は雑に月火の顔にタオルを置き、月火はそれを取ると火音を叩いた。



「もなんで今日そんな情緒不安定なん……」

「今のは火音のせいでしょ……?」

「もー……顔拭いて。目は俺やるから」



 夢での火音は全部拭いてくれたのに。



「そりゃすごい。それにやってもらったんならもういいだろ」

「嫉妬だ」

「はいはい」




 ブチギレた月火が火音に掴みかかるべくベッドから降りようとするので皆で止めていると、綾奈が近付いてきた。


 月火の額に手を当てて、手首を掴んで脈を測る。




「なんですかこれ」

「黙れ小娘」

「ちょっと綾奈」

「……火音手首出せ」



 綾奈はどっからかなんらかの機械を出すと二人に順に付けて、火音は普通、月火は少し脈は早いものの、他は問題がないことを確認した。


 脈が早いのはたぶん、寝起き一番にパニックになってハイテンションになったからだろう。



「火音、今テンションは?」

「……特にこれと言うのは何も。たぶん一昨日まで躁状態だったけど落ち着いて自己嫌悪とか抑鬱もないし」

「……月火も再発かなぁ」

「今日のは月火的にも怖いってわけじゃないと思うけど。妙にリアルっぽかったけど」

「あとで聞かせろ。とりま寝坊助のせいで予定時間が目前だから。話は午後だ。全員解散! お前らは飯食えよ」

「姉さんもうちょっと丁寧な言葉遣い使ったら?」

「え貴族がいいって? いいですわよ?」

「ちがう!」

「はーい出ようねぇ」




 知衣は妹たちを押し出すと、手を振って出て行った。



 一番に、火光が火音に目を向ける。



「何の話?」

「夢の話。最近悪夢をよく見るから何かなって言う」

「火音先生、自分で躁状態とか分かるの?」

「分かる時は分かる。今は平常だから記憶思い返したらだったなって振り返り形式だけど」



 月火は皆をベッドから退かせると布団を被って、火音の膝に寝転がった。




「……月火までこうなってくるといよいよ心配になってきた」

「私のはたぶん一時的な吹っ切れモードなので午後には収まります」

「あそう? ならいいや」

「健康児が病んだら二年は救いが消えるから」

「私もいるよぅ!?」



 結月のアピールに、炎夏と玄智は目を丸くすると、肩に手を置いて微笑みながら頷いた。



「そだね」

「何ッ!? 先生何この二人の微笑み何!?」

「はーい静かにね。一旦出て午後にまた来よう」



 火光は皆を部屋から出すと、最後にひょこっと顔を出した。



「またなんかあったら呼んでね」

「……あ、月火の昼の足し買ってきてほしい」

「おにぎりとかでいいんでしょ? 分かった」

「助かる」












 昼食が終わって、二人きりの部屋で月火は机に顔を伏せた。




 昨日の夜のどこが夢でどこがリアルでどこが妄想なのかが分からなくなって、火音に下手なこと言えないしと悩んでいる最中。




「声発さなくても分かるってのに」

「……ぎゅーしたい」

「何いきなり……」

「ぎゅーしてください」



 月火がとても真っ直ぐな目で腕を伸ばしてくるので、適当に払うわけにもいかず、ベッドに片膝を突くとハグをした。



「ちなみに一回目の朝からは全部夢だから。夜中のなんかに拘束されてる感覚があったんならそれはたぶん俺が起きたやつ」

「……起きたんですか?」

「めっちゃうなされてたから。狐が腕拘束してたの外したらすぐなくなったけど。心配してたん」



 月火の火音を掴む力が少し強くなって、火音は月火の背をさすった。





 月火は目を切られて、即失神したわけじゃない。



 雷神が回収したあと、何言か話していた。それも全て、失敗してごめんなさいと、まだ戦えるからというものだったはず。


 自分の目の見えない恐怖を痛みを押し殺してそれを言っていたのだから、突然何かで塞がれるようになったらそりゃ怖くなるのも当前。



 視界と体の感覚がマッチしないというのは、それが視界の情報に頼っている月火ならなおのこと、混乱は大きいだろう。




「ちょっと慣れたあとはすぐなくなるから。大丈夫」

「…………痛い」

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