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妖神学園 改正版  作者: 戯伽
2年生
93/103

15.朝

 火音の怪我を神通力で治したもののまだ違和感は残るようで、同じ布団の中にいる月火にすがりついた。


 さっき風呂から上がって、髪を乾かさなかったので濡れている。





「まだ痛みますか」

「もう痛みはないけど、気持ち悪い。嫌なのが取れない」

「感情をぶつける思いで殴ったせいですね」



 月火は患部だった場所に手を置くと、ずっと辛そうな顔をしている火音の頬を撫でた。





「寝てる間によくなりますよ。私が一緒にいるんですから大丈夫です。明日は一緒に頑張りましょうね」




 黙ったかと思えば、火音は少し下に下がって月火の手を自分の頭に持っていった。


 水月のせいでおとなしく撫でてと言えないんだろうな。




「よしよし。私がそばにいますよ」

















 翌朝になると月火が腕枕してもらっていて、いつもの月火(小さい方)が腕の中にすっぽり収まる形になっていた。




 いつもは同じ向きだが、今日は向かいあわせで起きたので、もぞもぞと動いてその向きのまま火音にハグをした。





 うとうと眠たかったのが少し目が覚めてきた頃、火音も目を覚ました。



 月火がいるのを確認して、頭に手を置く。


 そのまま、上に引っ張り上げると月火を抱き締めた。




 夜の間に頬や首筋の違和感もなくなったようで、ちょっと上機嫌だ。




「……何時?」

「まだ五時前ですよ。私お風呂入ってきます」

「はい」




 部屋に一人か二人か三人ぐらいは入れそうな露天風呂があるので、月火はそこに入りに行った。




 火音は昨日の夜に頬の違和感を流そうという思いで入ったが結局意味なくて、ただ違和感が全身になっただけ。夜の間になくなったんでいいけどな。





 月火が浸かっている間にドライヤーとヘアアイロンで髪を整えた。



 やっぱ乾かさないと寝癖がヤバいと思いながら、鏡を見ていると浴室から月火の声が聞こえた。



「火音さん、水取ってください」

「持って入れよ」

「思ったより熱かったです」

「ペットボトルでいい?」

「なんでも〜」



 火音が取りに部屋に行くと、部屋の襖が開いた。



 ひょこっと、琶音(わね)と火光が顔を出す。




「おはよー」

「おはよ。どうした」

「月火は?」

「風呂」



 火音は水と、ジュースも取ってと言われたので昨日の行きに買っていたジュースも取った。



 脱衣所に置き、また部屋に戻ると風呂から月火が上がる。




「にーさん、サンドイッチ買ってきてください」

「えー」

「私行ってきますよ! 水買いたいですし!」

「火音さんお願いします」



 月火は言うだけ言うとまた風呂に戻り、火音は不服そうなまま立ち上がると、ため息をついた。



「準備するから待って」

「……火光先生通訳をお願いします」

「財布に連れてけってことだよ」





 久しぶりの特級戦なので、火音は袴に着替えた。


 刀はあとでいいや、邪魔だし。



 火音が妖楼紫刀と紅陽秘刀太(こうようひとうた)、月火が白黒魅刀(はっこくみとう)と腰刀。腰刀に関しては水明が水神の屋敷にあったものを貸してくれた。


 火神の屋敷に置かれていた武器等は全て水神の屋敷に移されたので神々に収集する予定らしいが、いったいいつになるのやら。





 羽織りを肩にかけ、スマホを充電器から取った。ワイヤレス充電できるモバイルバッテリー。安定の神々製品。




「行くか」

「袴かっこいいです!」

「そっか」

「もうちょっと会話を続けるよう努力してもいいと思います!」

「うん」

「サンドイッチ何がいいんでしょう! 私昨日結月先輩と一緒に一番に売店行ったんですけど、色んなの置いてありましたよ! 食パンもなんですけど、バゲットとかソフトフランスとか、クロックムッシュとか!」

「……クロックムッシュってなんだっけ」

「サンドイッチですね!」

「声抑えろ」






 二人で一階の無人売店に降りると、そこの窓から見える駐車場に炎夏と玄智がいた。二人で走っている。



「特級戦前なのに……」

「特級戦前だからってルーティン崩すなよ。体の調子は死亡率に直結すると思え」

「月火先輩は朝風呂派ですか?」

「あいつは危険な戦いの日は朝にも風呂入るってルーティンがあんの。体慣らしの代わり。風呂入ったら筋はストレッチの時より伸びるし」

「ほへぇ。火音先生はいつも袴なんですか?」

「俺はルーティンが消えても問題ないって分かってるし。刀差すからそれ用」

「ルーティンなくても戦えるのはいいですね。いつでも本気で戦えそう」

「ルーティンがあって最強になるならそれでいい。人間の感覚なんて一人一人違う」



 自動販売機で水とサンドイッチと、火光が好きそうなチョコケーキを買って、月火のミルクレープも買った。



「なんか食べるか?」

「ザッハトルテ! 私チョコは世界を救うと思ってます!」

「めでたい頭だ」

「火光先生だって玄智先輩も結月先輩もチョコ好きなんですからねッ!」

「お前の根拠はその三人かよ……」

「火音先生は例外ですよ。月火先輩のしか食べないから。私の中で世界を救える人達は二年の先輩と先生ですから!」





 全部琶音に持たせて、部屋に帰る途中、ふと琶音が足を止めた。



 窓から朝日が差し込んで、火音は日の当たらないところに逃げる。




「……泣くな。せめて感動の再会の時にしろ。俺帰れるから」

「……もうちょっと情緒というものを学んでください」

「もうちょっと忍耐力を鍛えろ」






 二人で部屋に戻ると、部屋では月火が風呂から上がってきていた。



 ジャージ姿で柔軟をしている。



 余裕で床に足がベタっとついているので、調子はよさそう。




「髪乾かさんの」

「サンドイッチください」

「起きて」




 月火は起き上がるとサンドイッチを食べ始め、火光と琶音もむしゃむしゃと食べ始めた。



 火音は月火の荷物を漁ると、ヘアセットを持ってきて月火の髪を梳き始める。




「そいや駐車場で炎夏たちが走り込みしてたけど」

「ここ最近は枚朝校外走ってるみたいだからね。それじゃない? たぶんすぐ走りに出ると思う」

「火光先生のルーティンはありますか?」

「んー……なんかあるかな。強いて言うなら……えー……」

「兄さんは常に常人より強くないといけなかったのでいつでも最強ですよ」

「そんな感じ!」

「火光は褒めたら調子上がるから」

「お兄ちゃんのことよろしくお願いします!」

「任せなさーい。僕の可愛い生徒が出るんだもん」






 火音は月火の髪を乾かし始め、月火はその間にストレッチをする。








 ポニーテールにして、前髪を巻いて、月火も袴に着替えた。



 結局今日の午後から祓うので、まぁ怪我の具合によっては明日には帰れるかなという感じ。特級なんでどうかな。


 特級はその上の級がないので、ギリ上がったなったドベと成長し続ける青天井とだいたい二種類いる。

 普通の特級なら、特級四人にうち一人が最強なら全くもって余裕だよねという感じ。







 脱衣所から出ると、水片手にアニメに没頭している炎夏と片手にエナドリ持ってそれを覗いている玄智がいた。いつの間に帰ってきたんだか、早すぎんだろ。



「あ、月火おっはー!」

「おは。朝から太るもん飲んでんね」

「ねぇぶん殴るよ?」

「できたらどれだけ有難いことか」



 琶音が慌てる中で玄智が月火に突っかかっていると、アニメを見終わった炎夏まで玄智に突っかかった。


 玄智を押し倒して、二人でうつ伏せに倒れる。



「何……」

「……死んだ」

「あんだけフラグ立ててたらそりゃ死ぬわ。逆によくここまで生き残ったね!」

「もー……!」



 炎夏に絞め殺されそうな玄智が発狂し、月火は玄智という魔の手から逃れると隅にいる琶音の隣に座った。



「不安ですか? こんなアホな人たちにお兄さんを任せるの」

「え!? あ、いや! 全然、そういうわけじゃ……」

「まぁ分かりますよ。どっからどう見てもふざけているようにしか見えませんもんね」

「……まさかルーティン……!?」

「いや気の向くままにボケ倒してますね」



 真顔になった琶音は前を向くと、膝を抱えた。




「……正直、不安じゃないかって言われたらうんとは言えません。……けど、それは誰だってそうです。……私の不安は、頼れるのが先輩たちだからこそこの程度で留まってるんだと思います。……私が思う世界を救えるのは、先輩と先生ですから」

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