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妖神学園 改正版  作者: 戯伽
2年生
85/103

7.爆

 月火と氷麗(つらら)の問題が色々と起こり、月火が殴るのを制止されたせいで氷麗は五日間の謹慎処分プラス、一ヶ月の部活謹慎になった。



 五日間の初めから部活謹慎が始まるのは月火的には『情け』らしい。情け、ね。










 月火が体育館で体育を見学していると、火音がやってきた。



 完全に顔を伏せて寝落ちていた月火の頭を叩き、気付かせる。



「……眠いんですが」

「薬ちょうだい」

「はい……」



 月火は薬箱のファスナー開けると、あくびをしながらそれを確認する。


 薬系を火音に持たせているととにかく乱用して無理やり抑えようとする癖というか、使えば使うだけいいみたいな思考を持って危険極まりないのでだいたいは火音の周囲にいる人が持っている。




「今日はもう運動はしないでくださいね。外に出る時はマスクも」

「うん」



 基本的に月火のいない室内でマスクをしていたらマスクの内側に虫や内臓等が入り込むような幻覚というか感覚を感じることが多いのでマスクは付けないのだが、外にいる時は砂埃や花粉の方が天敵なので。



「今日部活どうするんですか?」

「明日顔出すし今日はいいや。仕事溜まってるし」

「あまり根詰めすぎないように。あと金曜は休ませますからね」

「……マジ?」



 月火が薬箱の蓋を閉めていると、火音が驚いたような声を出した。月火は少し眉を寄せる。



「元々週四日の約束だったでしょう? 四月は三日だったのを火音さんが休養明けの意味がないとか意味不明なこと言うから四日に伸ばしたのに」

「あーはいはいそーだったそーだった。薬もらっていい?」

「駄目に決まってるでしょう人の話に興味を持ちなさい明日も体調悪かったら明日と明後日休みですからね」

「無理」

「無理?」

「すみません」



 月火に薬を取られた火音はおとなしく月火の隣にしゃがみ、月火の小言なのか心配なのかボケなのかよくわからない独り言を聞き流す。



 つまり、火音が心配だから心配させたら容赦しないって話。




 あくびをしてまた薬を吸っていると、綾奈がやってきた。



「おう問題児揃って」

「何の用だ養護教諭」

知紗(ちさ)探してるんだけど」

「さっき職員室にいたのに」

「マジか? どっかですれ違ったかな……。連絡入れても既読付かないから授業中かと思ったんだけど」

「一、二年とも体育だし」

「業務連絡なら放送で呼び出しては?」

「そーするかー」















 放課後、火音が廊下を歩いていると後ろから足音が聞こえてきた。


 そっと横にズレると、二人が勢いよく頭から突っ込む。



「うわ……」

「なんで避けんの……」

「避けるだろ巻き添えくらったら確実に折れる」

「水月退いて邪魔」



 水月と火光は二人で立ち上がると、火音を見下ろした。



「月火は?」

「もう寮に帰ってるだろ」

「いなかったんだよ。連絡も付かないし」


 まさか。



 火音は何回か電話を鳴らすが、月火は出ない。



 呆れて溜め息をついていると、二人が首を傾げた。



「心当たりあり?」

「たぶん……」






 三人で体育館に向かうと、あほらやっぱり。



 体育館の、昼間いたそこで横になって寝ている月火を見下ろした。何十人てか何百人から上着やらウィンドブレーカーやらタオルかけてもらって。ちゃんと枕まで。



「あは寝てる」

「寮帰れよなぁ……」

「かわいー」

「月火がこんなところで寝落ちするの珍しいね」

「体育中ずっと暇そうだったよ?」




 火光は荷物を持って、水月は大量の上着たちを剥がすと月火を抱き上げた。軽ッ。



「ちゃんと食べてんのかこの子」

「最近食う量増やして頑張ってるって言ってた」

「さらに増やしてんの!?」

「普通の食事の時は食べんの俺より少ないからなー」

「……マジかー……」



 目的地に行かせてもらえない火音が二人の話を聞き流してスマホを見がてら月火を頭で叩き起していると、その甲斐あってか月火が目を覚ました。



 うつらうつらとしてから火音に叩き起されてハッとする。


 水月を見上げると火光も見上げて、一瞬真顔に戻ってからダイジェストを見てハッとする。忙しい表情だこと。



「降りますすみません」

「まだ寝てていいよ?」

「寝るなら帰ります。下ろしてください」

「嫌がられてるよ水月君」

「そう言って手伸ばしてこないでください」


 月火は火光の手を叩き落とすと水月から滑り落ちた。火音の後ろに逃げて、髪を整える。



「なんで火音の後ろに行くのさー」

「身だしなみを整えるためです」

「壁にすんな」

「助かりました!」

「壁にすんな」


 火音は後ろからひょっこり顔を出す月火の頭を押さえ付け、そのまま後ろから引っ張り出した。


「痛いです……」

「お前帰って風呂な」

「わかりました……火音さん火音先生仕事は……?」

「お前のせいで拘束されてたんだよ」

「すみません行ってらっしゃいませ」



 火音はさっさと歩いていくかと思ったら、二歩目で止まった。何かと思えば火光の首根っこを掴んで、引きずる。



「え?」

「手伝え」

「僕まだ終わってないッ……!」

「今日は残業だははは」

「終わる目処立ってたのにィッ!」




 そう言うと、二人は角に消えていった。



 月火はそれを見送ると水月を見上げる。



「用事なしで回収してくれたんですか?」

「あ、そうそう。あれの費用リストできたよ」

「あ、ありがとうございます。じゃあ早いうちにデータ回しときますね」

「ゆっくりでいいからね。しっかり休むんだよ」

「ありがとうございます」



 水月に頭を撫でられた月火は軽く頭を下げると、少し機嫌がいいまま教室に荷物を取りに行った。






 火音が帰るまで食堂で軽食を挟もう。お腹空いたし、太れって言われたしいいよね別に。




 月火は上機嫌で食堂に向かうと、いつも通り食券を買って注文をした。


 学生証をかざせばいくらでも買えるやつ。ただし請求はされるよと言う。




 月火はキョロキョロと部屋を探すと、一番角の座敷に入った。入口がすごくわかりにくいがこの角にも二人用の座敷がある。




 扉の外に番号付を差して、パソコンを広げて仕事をする。



 準備は着々と進んでいるし特に問題も起きていないし、このまま順調に進むかな。てか進めてやるよゴリ押しで。





 あくびをしながら待っていると、部屋にノックが鳴った。



 ワゴンを押した食堂の人が机に並べてくれる。



「わぁ……!」

「月火さんはすっごく綺麗に食べてくれるから作るの楽しいんですよ! 皆この量は月火さんだってもうやる気満々で作りましたので!」

「ありがとうございます……! いただきます」

「ごゆっくりどうぞ〜」




 机に八個並んだ定食たちを色々な角度から撮ると、冷めないうちに食べ始めた。










 音楽聞きながらむしゃむしゃ食って、メニューを眺めているとまた部屋にノックが鳴った。今回は一回だけ。



「どーぞー」



 扉が開いて、火音が入ってくる。



「お前食いすぎだろ! まだ食う気かよ……!」

「早かったですね」

「もう八時前だぞ」

「……わぁ」

「別にゆっくり食ったらいいけど。よぅ食うなぁ……」

「晩ご飯はパスタですね。ボロネーゼフェットチーネ」

「……えお前帰っても食うん?」

「え、おやつ」

「いやいやいやいやいや」



 火音が唖然としていると、月火は美味しすぎて最後に残しておいたカツを口に放り込んだ。



「何食べたんだよおやつって……」

「トンカツ、ミルフィーユカツ三種盛り、カツ丼、天ぷらうどん、カレーうどん、寿司御膳、クリームコロッケ、サワラの塩焼き定食!」

「聞いてるだけで胃もたれる……揚げもんばっか」

「ここの揚げ物美味しいんですよ、油っこくなくて。店より美味しいです。うどんは麺とつゆ別に入れてくれますしご飯と味噌汁には蓋してくれるし寿司もネタ乗せない状態でくれますし、神ですね」

「そうですか」

「卒業したら一人本家に連れて行こうかなと」

「いーけど俺の飯はお前が作れよ?」

「……そっかそれがいんのかめんどくせぇな」

「すみませんねぇ!?」

「お、怒らないでください……」



 驚いて肩を震わせた月火はびっくりすると、少し顔を逸らした。



 火音は口角を下げると頬杖を突いてお盆をまとめる月火を見上げる。



「飯作れよ」

「わかってます。さっきのは冗談ですよ……」

「ならいいけど。お前ガチで面倒になったら自分の代わり探すとか言い出しそうだし」

「そこまで無責任じゃありません」

「責任感は誰よりもあると思ってるけど。それから逃れるために代わりを探す」

「言ったでしょう。死ぬまで私が面倒見てあげますって。無理なら殺すって」

「……じゃー月火が無理になったら俺がお前殺して自殺する」

「何故」

「天下の月火様を殺人罪に問う訳にはいかないだろ。ヤンデレの暴走でいいじゃん」

「別に関係ないと思うんですが」

「俺を殺したとしてお前狐で死ねなかったらトラウマでおかしくなるだろ? だから俺が殺す」



 何がヤバいって、そういうことを平然とした澄まし顔、なんなら薄ら笑いで言ってくる。

 頭の中は殺す方法だらけだ。たぶんミステリーかサスペンスか殺人館か一本かける程度には殺し方持ってる。




「……確実に死ねる方法にしてくださいね。ただ体に傷作っただけじゃ不名誉なので」

「もちろん」



 にこやかに笑う火音に少々恐怖を覚えながら、お椀や皿が重なったお盆を持つと火音が代わってくれた。



「お前は転ばないように精一杯歩いてろ」

「どういう意味ですか」

「盲点でつまずくぞ」



 そう言うと、月火は早速何かでつまずきかけた。



「危ない……!」

「つって眼帯外そうとすんな。二週間は付けろって言われたんだろ」

「だって危ない……」

「だから気を付けろって」



 火音はそれを返すと、帰ろうとする月火を見下ろす。



「もういいの?」

「だって八時ですよ?」

「俺別に何時でもいいけど」

「…………ほんとに?」



 火音が頷くと、月火は上機嫌にまた券売機に向かった。


 今度はスイーツを爆買いする。散財癖はこういうところで現れるんだな。




「やっぱ〆は甘いもので!」

「幸せそうでなにより」

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