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妖神学園 改正版  作者: 戯伽
2年生
81/103

3.団子

 電子タバコを吸い、隣で煙管(キセル)を吸う水月にスマホを見せた。



「ヤバない」

「うわキモ」

「マジ信じられん」





 今は吸いたかったので皆のいる場所から結構離れた喫煙所内で吸っている最中。

 同僚の前では子供っぽいことしてるけど普通に飲むし吸うしやる。




「あーそーだこの前の話してたの良かったよ。さすが水月のお墨付きなだけある」

「でしょ〜?」

「またいいの紹介してね」

「外でやる会話じゃありませんね」



 横から声が聞こえ、二人でビクッと肩をはね上げた。


 見ると、月火ちゃん。



「いつからいたの……!?」

「ヤバない辺りから」

「全部聞かれてる……!」

「月火こっち来な」

「兄さん電子に変えたんですね」

「においでバレたらヤバいもん」

「吸わなければよいのでは?」

「依存済みなんでね」



 なんか周囲の吸ってる人も頷いた気がするが、まぁいいや。



「月火マスクは?」

「あ忘れてた」

「出ようか。火光もう十分でしょ」

「んー」



 火光は外に出ると、水月に死ぬほど消臭スプレーをかけた。



 結構換気が強かったので、においはほとんどない。煙全部上に吸われてたからな。




「月火香水ちょーだい」

「どーぞ」

「……首に付けないの?」

「火音さんが嫌がるんですよねぇ」



 そう言いながら手首と、軽くタイツにぽんぽん付けていると水月に肩を掴まれた。そのまま水月の手首に付いたやつを執拗にうなじに付けられるので、脛を蹴っておく。



「やめろシスコン」

「なんなら嫌われてもいいよ?」

「水月」

「廻醒いるしいいじゃん」

「水月」



 火光に諭された水月はとぼとぼと凹み、月火はアルコール消毒で首筋を拭った。




「先戻ります」

「アホ」

「げっか〜」







 月火が皆のいるところに戻ると、火音が後ろに回ってきた。

 廻醒が月火を挟んで掴もうとするのを月火が腕を掴んで押さえる。


「どお」

「退けツキ」

「ゲツです。落ち着いてください」

「落ち着いとるけどこいつは死んでも殺すッ! 鬼殺せッ!」

「喰え狐」



 白葉が廻醒に噛み付き、黒葉は酒呑童子を威嚇した。尾が九本で、だいぶんマジギレで。



「黒葉落ち着け」

「それ以上近付いたら首噛みちぎるわ」

「主様の仇ッ……!」

「下がれ鬼」



 雷神が出てきて、軽く腕を振ると酒呑童子は電撃で消えた。



 目眩と耳鳴りで視覚と聴覚が消えた廻醒は顔を押さえ、月火はそれを須賀原(すがわら)に引き渡した。




「……何やったんですか?」

「ほんとに何もやってない」

「……煽りましたね」

「とんでもない」

「火音さん」

「ちょっと?」

「なんで後輩いじめるんですか」

「楽しいもん」

「加虐性が顕著になってきましたね」

「めっちゃ失礼」

「事実ですよこれはほんとにマジで!」



 よくわからないというように首を傾げている火音に呆れながら、軽く額を小突いた。



「正月までは仲良かったのに……」






 月火は重箱を平らげると、タッパーの餅アソートを皆に出した。桜餅とか三色団子とか草餅、あと今日は涼しいので上生菓子も。




 皆大喜びで取っていく。



 重箱を持って、火音の弁当箱とまとめながら車に戻ると火音が後ろからもたれてきた。






「怒ってる?」

「え? いや別に……」

「喧嘩すんのに」

「いや……なんでいきなり喧嘩するようになったのか心配なだけですよ」



 誰かに見られるとまずい体勢なので、月火は頭を撫でながら車の中に入った。

 七人乗りの最後部席に座って、不安そうに寄ってくる火音の頭を撫でる。



「火音さんがちょっかいかけてるわけじゃないんでしょう?」


 聞くと、火音は頷くのか否定したのかよくわからないように首を動かした。



「自分がやってないと思ってるならそれでいいんですよ。誤解を解けばいいんですから」

「……やってない。黙ってた」

「じゃあ廻醒に原因がありそうですし。火音さんは今のままでいいですよ。いきなり掴みかかられて怖かったでしょうに」

「……別に」

「緊張状態ですよ」



 誰だって黙ってスマホ見てたところにいきなり掴みかかられたら、そりゃ対応できる人の方が少ない。人見知り&臆病な火音なら余計に、相当緊張状態だったはず。




 顔色が悪いまま少し呼吸が早い火音の背をさすって落ち着かせ、膝に寝転ばせた。



「……気持ち悪い……」

「リラックスしてください。もう大丈夫ですから」

「外に出るとろくなことがない……」

「でも外に出れたのは偉かったですよ。無理する必要ないんです。今日は病み上がりですし特に」



 月火が頬を撫でていると、黒葉が出てきた。一本に戻った尾を振り、仰向けの火音の胴体を登ると胸辺りに座って火音を見つめる。



「大丈夫?」

「平気……」

「黒葉、大きくなってそこ埋めてくれませんか」



 大きくなって、黒葉が足元の隙間を埋めると火音は少し体勢を変えた。縦に狭いのはいいが横に狭いのはしんどかったため、黒葉に手足を乗せられて少し楽になった。



「…………お前なんで俺には敬語なん?」

「え癖で」

鬼互(おにたが)にはタメで話すじゃん」

「兄さんたちにもタメ口は使いませんからね。目上の人か友達かって認識です」

「俺にもタメ口使えよ」

「無理ですよ。目上で教師で歳上なのに」

「無理じゃない」

「無理です。今のままが気楽でいいでしょう」



 頬を撫でると、火音は少し不満そうな顔をした。ほんと、表情豊かになったなぁ。



「……気楽ならいいけど」

「火音さんといるときが一番気楽です」

「どっかの誰かといるより?」

「そりゃあもう」

「じゃいいや。……ちょっと寝ていい?」

「もちろん。ゆっくり休んでください」










 炎夏に火音が仮眠中のことを伝え、その間に廻醒と連絡を取る。



 要は、休職してなお月火と一緒にいるのが気に入らないと。



 病状や体質のことはわかってるが、にしても食事以外でも一緒ってのが気に入らない様子。


 とりあえず空気に関する話と、イチャついてるの範囲内で言えば廻醒とやってる時間の方が圧倒的に長いと言っといた。上機嫌に喜んでくれたのでよしとしよう。実際火音とはイチャついてるわけじゃないし。






 んなことを考えながら廻醒の求愛の数々をスルーしていると、スマホに手がかぶった。画面を消されて、取り上げられる。



「なんで俺がいんのに鬼互(おにたが)と連絡してんの」

「突っかかる理由聞いてただけですよ。そんなに怒らないでください」

「怒ってない」

「そうですか? ならよかった」



 頬を撫でたが、火音はその手を払って廻醒との連絡の履歴を確認した。


 毎回求愛されてはスルーしている。完全なる脈ナシなのによくもまぁあんな堂々と。



「きも……」

「シンプルな嫌悪ですね」

「鋼メンタルすぎるだろ。さっさと諦めて折れたらいいのに」

「まぁまぁ」

「ブロックしていい?」

「自分のスマホでやってください」

「じゃ週一でチェックしていい?」

「それは……まぁ、構いませんが……」



 火音は月火にスマホを返すと、また眠り始めた。独占欲で起きたのか、すげぇな。




 頭を撫でると、その寝顔をこっそり撮った。バレてても撮れたのでよし。






 この人の中で月火はどういう位置付けなんだろうなぁと思いながら頭を撫でていると、窓にノックが鳴った。



 鍵を開けると、扉が開く。

 炎夏が乗り込んで、席で後ろを向いた。カメラを構えたのを月火に塞がれたのでおとなしく下ろす。




「月火、何時帰宅予定?」

「知りません。三時頃でいいんじゃないですか?」

「もう三時半なんよ」

「じゃ五時で」

「うぃ」




 炎夏が帰ったあとにすぐ火音が目を覚まして、黒葉を軽く叩いて縮めると抱っこした。黒葉はめっちゃ嬉しそう。



「……ねむ……」

「大丈夫ですか?」

「ん……」



 火音は体を起こすと、壁にもたれて息をついた。


 月火は手を拭くと火音の額に手を当てる。



「……熱出る気がしますね」

「もー……」

「団子食べます?」

「……食べる」



 火音は水を無理やり飲み込むと、団子を初めて食べた。



「……もちもちしてる」

「団子ですからね。餅と似てるでしょう」

「餅と似てるからもちもちか」

「うんまぁそんな感じ」

「飽きるなよ」

「だって」




 二人で団子を食べていると、また来客が来た。


 鍵を開けると、晦と氷麗(つらら)が顔を出す。

 晦は月火を連写していた火音を見ると呆れ、月火に紙袋を渡した。



「お団子ありがとう。めっちゃ美味しかったです!」

「甘党が多いので張り切りました。お粗末さまです」

「あと皆からの差し入れとジュースも入ってるから飲んでね」

「わ〜やった〜!」

「お前ずっとお菓子食いたがってたもんな」

「私が食いしん坊みたいに言わないでください」

「て言いながら開けるな」

「食べます?」

「いらん」




 月火は晦を見送ると火音の団子を一本貰った。



 火音はスナックを抱えながら団子を食う月火を撮ると、スマホを置いて月火の腰に手を伸ばす。



「わッ……!?」

「痩せすぎ。何キロだよ。明らか低体重だろ」

「変態! セクハラで訴えますよ!?」

「どーぞお好きに。綾奈(あやな)に言うからな」

「そッ……それは、ちょっとッ……!」

「ストレス溜めるなちゃんと食え。飯を食え」

「食べてますし……」

「暴飲暴食しろとは言わんけど三食体に合った量を食え。少食すぎる」

「……はい……」




 何故か凹む月火の頬をつまむと、月火を引っ張って膝に座らせた。


「火音さんも痩せすぎですね」

「俺5キロぐらい太った」

「それはむくみかと。太ったうちに入りません」

「脂肪はいらん」

「多少は付けてください」

「付いてる」



 火音の手の甲を引きちぎる勢いでつねると、睨まれたのでぷいっと顔を逸らす。付いてねぇんだから付いてねぇよ。



「体脂肪率何パーセントですか? 体組成計見てるでしょう」

「……九……」

「九!? はぁ!?」

「うるさっ……十とか九とかそんぐらい……」

「九とか八ですね馬鹿正直ッ! 信じらんない筋トレマニアかなんかですか……!?」



 ものすごく不満を募らせた目で睨んでくる火音の耳を引っ張って怒っていると、車に火光と水月が戻ってきた。ついでに炎夏と玄智もついてくる。



「月火鍵ちょうだい」

「おじゃましゃーす。炎夏がオタク語りしそうだったから連れてきた」

「いーじゃんべつに!」

「共通の趣味を持つ仲間とやりな? 反応に困るから」

「引きずり込む気でいたんだけど」

「やめなさい散財癖を叩き込むのは」



 炎夏が玄智の首を絞めていると、火光が火音の耳を引きちぎらんとしている月火に目を向けた。



「どったの月火」

「説教中です」

「火音またやったの。馬鹿だねぇ」

「今回は俺じゃねぇ……」

「いーえ火音さんです」

「何やったの? てか説教ならされたってより火音先生が食生活乱したとかそんなん?」

「体脂肪率十切ってるんですって」



 皆がギョッとした目で火音を見るので、火音は精一杯視線を逸らす。



「……晦呼ぶか」

「やめろッ!」

「少なくとも上二人には報告しますからね。なんで栄養管理してるのに体脂肪率すら増えないんですか。ちゃんとご飯食べて運動してるのに」

「知らんし……」



 拗ねるってか不貞腐れるような火音を見下ろすと、ため息をつきながら耳を離した。



「まぁ無理やり食わせて摂食障害になるとそれこそ入院案件なのでやりませんが。……体調不良が続いたのもそのせいか、そのせいで減ったかはありそうですねぇ」

「めんどくさっ……」

「耳切り落としますよ」

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