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妖神学園 改正版  作者: 戯伽
2年生
80/103

2.休職

 親睦会と言いながら新一年生と全く話さず、火音と会話になっていない会話ばかりしているといきなり後ろからのしかかられた。



「ツキちゃぁん」

「あらいたんですか」

「ひどぉいよぉ! 彼女に振られてん慰めてーや」

「ざまぁ」

「ひどぉいよぉ!?」

「彼女以外にこんなことしてたらそら振られるな」

「別腹や!」

「なにが」

「愛が!」

「恋愛と結婚は違うとか言いそう」



 廻醒がブチギレて、火音を押し倒して喧嘩を始めたので月火はそっと離れる。





 一人で花の動画を撮っていると、晦が寄ってきた。



「ちょっと月火さん、火音先生連れて来れない?」

「できますけど」

「一年生の氷麗(つらら)さんがね、陸上部で火音先生とは面識あるみたいで。ほら去年の秋に転校してきた子」

「あぁ〜。今の一年生転校多いですからね」

「そうなの?」

「初等部一年からいた子一人しか残ってないはずですよ。元は六人ぐらいいたんですけど」

「多ッ!?」

「ほら、御三家の」



 奇跡的に御三家の時代たちが同じ年代に収まった。だから、まぁ妖輩のベビーラッシュじゃないけど。この世代の妖輩は多い。なんで三年がいないのか不思議なほど多い。





「火音さん遊んでないで」



 月火が声をかけると、下になっていた火音は瞬間廻醒の肩と首を掴んで体勢を逆転させた。


 そのまま放置すると月火の方に移動する。



「疲れた」

「お疲れ様です」



 火音が月火の隣に座ると、晦が氷麗を連れてきた。


 火音はこう見えて、というかこんな人望でも陸上部顧問だ。休養中は火光や他の教師が交代で見てくれていたらしいが。妖輩コースの全学年教師の中で唯一主顧問を受け持っている。



「あ、氷麗(つらら)

「お、お久しぶりです……? 火音先生……」

「あーお前今年一年か。他学年としかつるんでないだろ。クラス大丈夫かよ」

「が……頑張ってます……!」

「頑張っても実は結ばねぇんだよ」

「なんてこと言うんですか!」



 晦と火音と氷麗で話しているので、その間に月火はその他の一年に話しかけに行く。



 二年ズも呼んで、和気あいあいと。





「そーいや一年の担任誰になったの?」

「まだ秘密です。クラスが変わらないので担任はドキドキワクワクを」

「神々先輩は知ってるんですか!」

「月火でいいですよ。神々が三人か四人かなんかいっぱいいるので」

「げ、月火先輩……!」

「基本的に決めるのは校長ですが私にも結果資料は回ってきますからね」

「月火は学園内の全情報を把握してるもんね」

「ふははッ!」

「魔王みてぇ」



 月火が炎夏の首を絞めていると、火音が寄ってきた。


 炎夏に何かを見せると炎夏はそれに食い付き、自ら首を絞められる。



「氷麗さんは?」

「晦と話し始めたから抜けてきた」

「そうですか……」

「新一年?」

(ばく)琶音(わね)です!」

「漢字は?」

「麦と琵琶の琶に音です!」

「麦でばくなんだ……」

「今の一年生で唯一初等部からいた方ですよ」



 残りの一年三人も挨拶すると、火音は頑張って名前を覚えようとする。が、既に名字以外は抜けてった。琶音だけ、琵琶の音で覚えれそう。覚えてるかな。





「……まいいや。部活入ってる奴多いんだっけ」

「陸上部勧誘ですか?」

「これ以上増えたら副顧問が付くからもういらん。もーいらん!」

「そんな声を大にしなくても。安心してください我々全員今の部活から抜ける気はないので!」

「あっそう」

「えすっごい冷たい。会話する気ありますか」

「ないです」

「じゃあなんで話しかけたッ!」



 麦と火音の相性も良さそうなので、月火はいそいそと立ち上がると靴を履いて道に出た。隣は小川、ここは桜見の季節になったら通行止めになるので歩行者が多い。





 写真を撮り、一人でふらふら歩く。


 今日は火音に髪を編んでもらって、色味的にもちょうどいいので簪を付けてきた。なかなかに好評。



 火音は会社で働きたくないと言っていたが、教職辞めたら月火社で雇って家で働かせようかな。デザイナーとして。あれはほんとに社会に認められるべき才能だと思う。







 そんなことを考えながら歩いていると、火音の思考が伝わってきた。人が川に落ちた、と。

 一年生に対応させとけと伝えて、道を抜けた先にあるコンビニでアイスとドリンクを爆買いした。



 食べながら帰ると、落ちたらしい人たちが晦の手当を受けていた。




「ただいま」

「お前食うのやめろ復讐すんぞ」

「でも食べないと溶けますよ?」

「かこー! 月火から差し入れだって〜!」

「あッ」

「わーい!」



 月火は自分が好きなやつを三つ選ぶと火音を恨みがましそうに睨みながらアイスをかじった。


 火音はふるっと身震いして、腕をさする。



「風邪引く……」

「面倒見てあげますよ。なんで落ちたんですか?」

「知らん。自転車避けた人と酔って自転車ごと落ちた人」

「見てて無視したんですね」

「助ける義理なんかない」

「助けたら食べるのやめたのに」




 月火は色んな人からタオルを借りてる男の人と酔っ払って知り合いに叩かれてるおじさんを見ると、男の人のそばに座った。



 肩に手を置いて、神通力で乾かして傷を治しておく。乾かすのは、熱と風の組み合わせでできるようになった。



「不運でしたね。メイクは崩れてませんよ」

「メイク用品ならあるよ?」

「どちらかと言うとヘアセット用品」

「えんかーアイロン持ってるー?」

「あるけど」

「私コテあるよ! ミニだけど」



 二年ズが男性を囲んだので月火はそれを任せると、やってきた警察にもよろしく頼んだ。好感度アップ、と。



「一年生、助けたあとに対応できる程度のコミュ力は付けてくださいね」

「は、はい……!」

「じゃ、あげます」

「車戻ろう。マジで凍死する」

「先戻っててください」



 月火は火音を見送ると水月から鍵と、火音の昼ご飯も持って車に戻った。





 エアコンを入れて、火音の隣に戻る。



「はい弁当」

「寒い……!」

「アイスは一年にあげましたから」



 火音は月火を引っ張り寄せると、後ろから抱き着いてカイロにした。



「あ、除菌液ない」

「俺持ってる」

「抜かりない」

「除菌液よりお前昼は?」

「あまりでいいかなぁと」

「……もうちょっとしたら戻ろう。お前ちょっと痩せただろ」

「何故」

「軽くなった」



 月火に顔面を押し返された火音が謝っていると、窓にノックが鳴った。



「月火、お昼どうする?」

「この変態の息が止まり次第戻ります」

「りょ」



 玄智は去っていき、月火は火音を殴るとエンジンを切って引きずって戻る。



「寒い……」

「黙れ」









 ウィンドブレーカーが一枚増えた火音と月火が戻ってきて、皆は重箱を開ける。



「先に食べててよかったのに」

「製作者がいなきゃさ!」

「食べよ」


 炎夏と玄智に肩を組まれた月火は火音を放置すると手を拭いて消毒をして重箱を開けた。



 皆がそれを覗き込み、スマホを構える。



「すげぇキャラ弁だ……!」

「すごー!? キャラ弁ってこんないっぱいできるんですか!」

「詰めながらバクバク食ってたん切れ端か」


 月火は炎夏の顔面を裏手打ちすると写真を撮った。我ながら力作。案は火音だけど。




「食べましょ食べましょ」

「広げていい?」

「もちろん」





 紙皿や割り箸を配ると飲み物もない人は注いで、皆で相当大きい重箱をつつく。



「にしてもお重箱大きいね」

「うち三人のうち二人が掃除機だからさ」

「一人じゃないの?」

「これめっちゃ食うよ?」



 水月がそう言って火光を指さすと、黙々と食べていた火光が首を傾げた。



「何?」

「火光この重箱半分は食べるよねー」

「うーん……まぁ余ったら? 月火めっちゃ食べるからさ」

「甘いものを毎日5キロ食うんだよ」

「んな食わねぇよッ!」

「でも食べれるでしょ?」

「無理に決まってんだろ大食いファイターじゃねぇんだから」

「いけると思うよ?」

「無理無理無理。月火に言って」

「自分で食え」



 月火は二人をぶった斬ると、卵焼きを食べた。甘いのとしょっぱいのと、両方にしたがしょっぱいのはもうちょっと醤油減らした方が綺麗だな。だしに塩入れたら綺麗な黄色になったのに。いつも甘いのしか作らないので失敗した。




 と思っていると、氷麗が火音を指さして晦と話し始めた。途端、目の敵にされる。すんげぇ睨まれてる。こわ。



「月火恋敵多いね」

「恋敵の意味知ってます」

「え敵でもないって?」

「恋じゃねぇっつってんだ唐揚げ丸飲みさせんぞ」

「やめて死ぬ」



 玄智は月火から顔を逸らし、月火は箸を止めると一人で食べている火音の方に寄った。




「寒いのは治りましたかドクズ」

「うん。あとさっきのに他意はない。ほんとに悪かった」

「別に許してあげますが」

「ホーム画面楽しみにしといて」



 腰をつねられた火音はその手を払い、まだ文句を言おうとする月火の口に唐揚げを突っ込んだ。



「物で釣ろうとしてるわけじゃないん」


 いや今な流れは絶対許しを乞うただろホーム画面で。



「許してくれてありがとうホーム画面頑張るねで捉えろよ性根腐ってんぞ」

んん(はぁ)!? んんんんん(ふざけんな)んん(この)んんんんんんんんん(変態クソ野郎)

「あー痛い痛いです痛い」



 月火が唐揚げを口に含みながら火音の背中を殴って蹴っていると、廻醒がやってきた。



「ツキちゃーんクズより俺と話そーや〜」



 月火は廻醒の顔に手のひらをかざすと、頑張って唐揚げを咀嚼した。

 火音に水を貰えて、それを飲んで丸飲みする。



「……ふぅ」

「大丈夫?」

「大丈夫じゃないから水飲んだんだろ」



 廻醒が火音の余計な一言に苛立っていると、月火が頭を撫でてくれた。


 すりすりと擦り寄って、それを堪能していると頭を叩かれた。



「げッ」

「げじゃねぇ。せめてプライベートでやれ学校関連で近寄るなセクハラで訴えるぞ」

「火音先生はやってるじゃないですか!」

「そいつは休職中」



 火光が火光を引きずっていき、月火はそれを見送ると火音を見上げた。



「ですって火音せんせ」

「やってない」

「え?」

「ほんっとにごめんなさい」

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