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妖神学園 改正版  作者: 戯伽
2年生
79/103

1.花見

 新二年ズのグループメールで喋っていると、火光(かこう)がやってきた。


 ちなみに火音(ひおと)は風呂。





「げっか〜」

「どうしました?」

「何見てるの?」

「クラスメールで」

「いーなー僕も入れてよ!」

「入ってるのあるでしょう……」

「だって皆使わないじゃん!」

「教師の前で使う必要ありませんし」

「ひどーいー!」

「別に酷くは……」

「さみしーぞー!」

「うるさいですね玄智(げんち)さんか結月(ゆづき)にでも絡んどけば適当に相手してもらえるでしょう」



 火光が月火にすりすりしていると、火音が上がってきた。


 暑いのか珍しくジャージの前を開けて、さらに珍しく髪濡れたままオールバックで。ドライヤーしてこないの珍しい。



「……火音ストップ」

「あ?」



 二人で連写しようとすると、雷神を盾にされた。



「全部防がれた」

「残念……」

「あそーだ。今週末(つごもり)が花見行かないかだって。一、二年の親睦会」

「いいんじゃないですか? 酒を出さないというなら出席します」

「さすがに出さないでしょ……」

「酒豪ども止めてくださいね、先輩」

「はい」



 火光はそれだけだったようで、水月(すいげつ)の部屋に電話しに行った。



 月火はソファに座った火音の髪をタオルドライする。



「週末どうしますか」

「動けたら」

「お、前向き」

「最近調子いいし」

「今週は予定ありませんし週末まで休憩ですね」



 月火が火音の髪を冷風で乾かして、軽くオイルを付けて水分を飛ばしているとインターホンが鳴った。



 火音にドライヤーを片付けさせ、炎夏(えんか)と玄智を中に入れる。




「……火音先生の髪が艶を増してる」

「ドライヤーしたばかりです」

「お風呂入ってたの?」

「寒いもん」

「……そんな寒い?」

「この方代謝最悪で基礎体温低いんですよ」



 三人はダイニングテーブルにパソコンを並べると、仕事を始めた。


 まだまだ遅いがおじたちや月火のカバーがありながら、少しはこなせるようになっている。



「……火音さん手伝ってくれません?」

「何?」

「これ」

「……パソコン取って」



 火音はソファに寝転がりながら三人を手伝う。



「そーいや火光の靴あったけど」

「水月兄さんの部屋にいます」

「出てきてないの?」

「今病み期ですから」

「あーね」

「先生って病むんだ」

「そりゃ火神の血だし」

「え?」

「色々と引きずってるのとトラウマとかフラッシュバックとかありますからねぇ」

「火神の血って病むの?」

「俺の知ってる二人は確実に病んでる」

「ちなみに澪菜(みおな)さんも病むときは病みますね」

「喋ってねぇで手動かせ素人二人」



 二人が必死にかじりついていると、月火が顔を上げてパソコンを閉じた。



「終わり」

「早くない!?」

「お前らが遅いの」

「うぅッ」

「飲み物淹れますよ」

「糖分をくれ」




 炎夏と玄智はシリアルバーを咥えながら必死に頭を回転させる。


 やっぱり、月火と共鳴するのは火音じゃないと他人だったら地獄を見てたんだろうな。一人の思考で頭が痛そう。




「火音さん、入りましたよ」

「これ作って」

「いいですけど。珍しいですね」

「すんげぇうるせぇのがいる」


 作っても食えねぇくせに。



 火音は執拗にスマホを覗いて腕を振る幽霊の紫月(しづき)を見上げ、盛大なため息をついた。



 月火は苦笑いをしながら、火音に所望された抹茶のブッセの準備をする。








 少しして、火音が羽毛布団にくるまって意識があるまま寝ていると月火に叩き起された。



「寝ないでください」

「……眠い……」

「顔触りますよ」



 月火は火音の額に手を当てると、熱を確認する。微かに、汗をかいてる気するな。



 一応体温計で測らせて、スポーツドリンクを作った。水に粉溶かすやつ。




「……あ」

「安定しませんねぇ」



 七度六、熱。


 今週頭に微熱が一瞬出て収まって、今週はゆっくりしようねと話していたのだが。



 風呂入る前から寒いと言っていたし、発熱自体朝からあったのかもしれない。




「週末どうなりますかね」

「うーん……」

「とりあえず今日は要安静です。頭痛とかがないのはいいんですけど」




 火音の頭を撫でると、体温計を消毒してから片付けた。
















 週末一歩手前で火音の熱が下がり、代わりというかなんというか、火光がガチ病み期になった。最近ずっと水月の部屋に引き篭っている。


 水月が過度に構うので面倒臭そうに追い払うのが、多々見られる。




「火音さんが一気に離れたので寂しいんですよ。代わりを見つけないと」

「俺のせい?」

「火音さんのせいじゃないんですけど、そういう性質の二人なので仕方ないですね」



 火音に膝枕している月火はスマホを眺める。かまってちゃんが病んだ時の対処法。



 火音は羽毛布団の中でスマホをいじり、頭に月火の手を置く。






 この兄弟、扱い辛い。
















 花見の日になり、月火は水月の部屋にノックをした。



「火光兄さん、そろそろ準備してください」

「……んー?」

「起きて」

「ん〜……」

「うぇッ……!」



 火光を揺すって、布団に巻き込まれた月火がなんとか抜けようとしていると布団が剥がされた。



「火光、二年ズに弁当作ってもらえるんだろ」

「……そなの?」

「そうですよ。昨日の真夜中に決まりました」

「まじ? 僕の生徒神じゃない?」

「神の首を、絞めないでっ……!」

「月火も作ってくれるの〜?」

「えぇ……」

「やったァ!」



 火光が月火を愛でていると、月火が火光の隣に寝転がった。


 仰向けでピースすると、月火に抱き着く火光ごと火音が撮る。そのまま無言で出ていった。




「……なんで撮るの?」

「晦先生にでも見せるんじゃないですか? 今日の火光先生つって」



 火光が飛び出して行ったので、月火は起き上がると床でスマホを見ていた水月を見下ろした。



「兄さんも準備してください」

「……え僕も行くの?」

「え行かないんですか? 学園に高確率で出現するくせに」

「一、二年でも教師でもないよ」

「え、行かないんですか?」



 月火が驚いたように二回目を聞くと、水月に追い出された。







 先に火音の弁当を詰めて、教師陣の重箱も作っているとインターホンが鳴った。


 火音が対応してくれて、二年ズが揃う。



「やほ〜来たよ〜!」

「おっはー!」

「おじゃましまーす」



 皆から紙袋を受け取ると、それを重箱に詰める。

 うちのキッチンは基本的に立ち入り禁止。火音はたまにふらっと入ってくるようになったけど。




「あそうだ見てこれ月火、僕さぁ」



 玄智が火音と火光の顔について、火音は塩顔ではなくしょうゆ顔、火光は似てるけど系統が違う砂糖顔だというのを力説し始めた。

 誰も興味なさそうだけど、玄智が嬉々としているのでよし。



「てことで先生は全く別系統のイケメン部類なんだよ!」

「よかったですね兄さん、イケメンですって」

「全部端折(はしょ)ったね」

「見て火音先生! イケメンの分類分け!」

「見せなくていいもう……」

「私火音さんは勝手にマヨと思ってたんですけど」

「えーなんで?」

「イケメンと童顔」

「……なるほどね? なるほどね!?」



 月火が火音の隣に座り、芸能人たちを見せていると水月が出てきた。





「かこーおいでー」

「やだー」

「こーい僕のおとうとー」

「死ぬッ!」





















 花見の会場に着くと、鬼互(おにたが)と同期の須賀原(すがわら)紅野(こうの)が場所取りをしてくれていた。


 大人数のせいでシートがめっちゃでかい。




「こんにちは〜」

「こんにちは! あ、火光先生がイケメンになってる……!」

「僕は元からイケメンです」

「よくゆーよ」



 火光は水月の足を蹴ると、シートに座って同僚と話し始めた。



 新一年生はまだ来ていない。




「ね〜動画撮ろ」

結月(ゆづき)これ知ってる?」

「うん! 前撮ったことあるよ」

「顔出しいいんでしょ。華が増えると再生回数増えるんだよね」

「なんなら今日周り花まみれですよ」

「そういうじゃなくてね」




 四人が動画を撮り始めたのを火光が眺めていると、少しして新一年生と晦、他の教師たちもやってきた。


 皆イケメンになった火光を見て驚いている。と言っても、水月が軽く髪をいじっただけでメイク等は一切していないのだが。


 火光はでこ出しの方が似合う。



「見て晦、今朝の火光」

「やめてッ!」

「なんですか?」



 火光は火音の腕を掴むとスマホを取り上げ、それを削除した。火音は月火のスマホでそれを見せる。



「あら」

「ねぇッ!?」

「コイツのやつ水月がいじって消しても消せないようになってるじゃん。共有フォルダ入ってるもん」

「なんで共有フォルダ作ってんの」

「火光さん苦しいです」



 火光が火音の首を絞めて火音が死にかけていると、晦が火光の肩を叩いた。


「火光先生、テレビ映りますよ」

「……あー、有名スポットだから来てんのか。やば」



 火光は月火からマスクを貰い、水月の方に寄った。


「隠してねおにーちゃん」

「可愛いねぇ」

「やめて邪魔」



 顔を撫でられた火光は顔をしかめると、水月の隣に座った。



 水月の写真を撮って、少し加工しておく。





 そんなことをしているとテレビレポーターがこちらにやってきた。

 動画を撮っている四人目当てだったようだが、御三家と気付いてびっくり。



「もしかしなくても月火社長ですよね……!?」

「そうでーす。こんにちは〜」

「玄智さんと、炎夏さんも……!」

「はいマスク」

「顔出したらいいのに」

「ただでさえナンパが多い」


 カメラに背を向けていた炎夏はマスクを付けるとようやく正面に向いた。結月は玄智の後ろに隠れ、月火が引っ張り出す。



「今日は、お花見どんなメンバーで?」

「学園の高等部の親睦会です。あと兄二人と。水月兄さんもあっちにいますよ」

「み、神々(みわ)社と月火社副社長の!」

度々(たびたび)学園に出現するので連れてきたんです。あと高等部の妖輩コース生徒と教師陣ですね。お弁当とかは二年生が作って」

「おかず持ち寄ってね」

「あのでっかい重箱な」

「美味しそうだったよね〜」

「そりぁあもう! あと桜餅楽しみ」

「お前は糖分が欲しいだけだろうが」

「桜餅が楽しみなんだよッ! 花より団子!」

「花を見ろ」





 四人と水月に少しインタビューしてからレポーターは去っていった。




 月火は立ち上がると火音の方に移動する。



「お前よくあんな考えれんな」

「ニュースで下手なこと言えませんからね」

「俺映ってた気すんだよなぁ」

「えぇ確実に映ってる画角でしたね」

「下手に移動できないし最悪」



 皆が散り散りいるので、火音は少し離れたここが唯一座れる場所だ。他の客が近かったりするし。



「あぁほらイケメンすぎる背景」

「映ってんじゃんッ……!」

「火光兄さんは映っててもモザイクでしょうが火音さんはガッツリでしょうね」

「処理頼んでや」

「図々しいかと思って。炎夏さんと違って映ってても映ってなくても囲まれて騒がれるんですから大丈夫ですよ! 引きこもりですし!」



 笑顔で励ましたつもりがスコンと殴られた月火は患部を押えた。

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