表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖神学園 改正版  作者: 戯伽
1年生
71/103

71.誘拐

 月火は机に顔面から突っ伏し、玄智は頬杖を突いたまま半寝、炎夏は顔面を押さえるように肘を突き、結月はパーカーを被って寝ている。




 そんな現状を火光は真顔で見下ろし、とりあえず一枚撮った。




 月火は緋紗寧(ひさね)の訓練と火音の世話で夜遅くまで起きているようだし、炎夏と玄智は当主教育が急ピッチで行われているので瀕死。結月は昨日大会があったので疲れてるんだろうな。


 学級崩壊もいいところだ。





 我が生徒の寝顔をにこにこと眺めていると、窓にノックが鳴った。


 見ると、真顔の綾奈と、珍しく知衣も。



「どしたのー?」

「ここ学校じゃねぇのかよ」

「見るからに学級崩壊してるけど……」

「可愛いでしょ、僕の生徒たち」

「お前も休め。月火、起きろ」

「なんか用?」

「月火借りに来ただけだ」

「月火、ほら起きて」



 何度か声をかけると、月火はゆっくりと体を起こした。


 机に手と腕を突いて、まるで何か重圧がかかっているような状態で。



「はい……」

「ひっどい顔! 寝てるか!? ちゃんと! まともに!」

「綾奈落ち着いて。どおどお」

「なんですか……?」

「あ、火音が診察すっぽかしたから寮に行ったら居留守された」

「……聞いてませんが」

「言ってないんだろうな。お前に言ったら連れてかれるから」



 月火は顔を押えて盛大な溜め息をつくと、数分間呻いた。




「……行きます」

「お前マジ大丈夫か?」

「行きますぅ……」

「声だけかけてもらったら大丈夫だから……」

「今日の学校終わりだ。月火、帰っていいよ。皆も起こして帰らすから」

「あざます……」

「ちゃんと寝るんだよ」



 月火はふらふらなまま立ち上がると、そのまま寮に向かった。






 寮に帰ると、もうここでやるらしいので綾奈達をリビングに行かせて部屋に篭っている火音の布団を剥がした。狸寝入りだ。



「火音さん! 綾奈さんたち来ましたから!」

「寝てる」

「寝てんなら喋んな! ほら起きてください」

「や」

「子供化しないで……!」

「やーだー」

「ほんっとに……!」



 月火が苛立ち始めていると、部屋にノックが鳴った。


 綾奈が入ってきて、火音の首根っこを掴み引きずっていく。強い。




 月火は綾奈と知衣に飲み物を渡し、黒葉に火音を任せると学校に忘れた教科書やらを取りに向かった。






 本来なら飲み続けなければならない薬を治ったからと自己判断で薬をやめ、挙句再発し、現在有給がないので普通に休んでいる。


 確実に再発済みなので麗蘭には知衣から休養長期休暇を頼んでおいた。金銭面まで月火に迷惑かけられんし。




 足を抱えて意地でもこっちを見ない火音に呆れ、月火からの報告記録を見た。


 毎日毎日記録で火音のその日の体調や行動、テンションを記録してもらった。

 最近は躁と鬱を繰り返していて、さっきの言動と口ぶりを見るに今は混合状態か。


 火音は昔から波の変化がかなり激しい。しかも短期間で。


 稀に見る状態ではあるが、一日で何度も躁と鬱を繰り返したり、一日ごとにコロコロ変わったり。

 そのせいで脳と体が混乱し、体は動かないが気分はいいような状態だろう。前が鬱状態だったらしいので次来るのは躁か、混合で躁が終わってまた鬱か。




 とりあえずこんな頻繁に変わられては躁と鬱の薬をわけて出せないので安定剤だけだな。






「……お前、八条(はちじょう)の履歴探してるらしいが」

「………………月火が、居場所が分かったら、連絡が取れるからって」

「ようやく喋ったな」

「結局どこにいるか分からんままだけど」

「誰、八条って?」

「火音の師匠みたいな人。知紗がたまに見かけてたらしいけど」

「どこにいるか分からないって、失踪?」

「なわけ。前医院長が無理だからってどっかの病院に飛ばしたらしい」

「どっかって、どこよ?」

「分かんないから所在不明。さすがに生きてはいるだろうけど……」



 綾奈がそう言うと、火音は綾奈を睨んだ。

 綾奈は口を塞ぎながら、知衣を見下ろす。



「どうしたの?」

「飛ばしたって言っても紹介状はあっただろうし、記録探せばあるかも。火音の心の安定剤一号でしょ?」

「まそんなもん」

「変なレッテル貼んな」

「履歴探してみるよ」

「さっすが医院長ッ!」

「うるせー……」



 火音が顔を逸らすと、どこからかバイブ音が聞こえてきた。


 見ると、机の上に月火のスマホが置かれている。



「アイツ忘れてったのか」

「月火遅いね。小一時間経つのに……」


 火音はスマホを取るとそれに出た。



「はい」

『あ!? 火音!? 月火は!』

「教室に荷物取りに行っただろ?」

『あ? 来てないよ?』

「寮にスマホ忘れてって荷物取りに行ったと思ったけど……」



 自分の思考が散漫しすぎて月火の思考が感じ取れない。



 電話の向こうの火光は傍にいるらしい炎夏や結月に話を聞くが、誰も知らないと。



「水月は?」

『知らないって。いつも電話出ないから半分諦めでかけたんだけど』

「嫌われすぎだろ」

『うるせぇな。月火どこにいるか分かんないの? 視界見れるんでしょ?』

「できたらとっくにやってる。なんで分かんねぇんだ……」

『はぁ? 何それ嫌味?』



 火音は電話を切ると黒葉を見下ろした。黒葉はこてんと首を傾げる。



「なぁに?」

「喋った……!」

「月火は?」

「さぁ?……どこかで、寝てるみたいだけど」



 まさかどっかで倒れてるわけでもあるまい。倒れてたら白葉から通達が来るはずだ。それとも寝てると判断されているだけだろうか。



「白葉にどこにいるか聞け」

「……………………白葉も、分からない」

「あ?」

「どこにいるの?」



 火音は月火のスマホをいじると麗蘭に電話をかけた。




『はーい』

「防犯カメラで月火探せ。狐が見失った」

『火音!? なんで月火のスマホ!』

「アイツが忘れてった」

『げ、月火だな? 校内にいるのか?』

「分からん」


 火音は自分のスマホをポケットに入れると、黒葉を連れて月火の部屋から刀を二本取った。



 一本を大きくなった黒葉に咥えさせ、寮の外に出る。




『……特に、月火らしい人物は見当たらない。思考がないのか?』

「ない」


 あるのかもしれないが、今の火音では気付けない。

 いつもこんなことになったら月火の思考が流れて火音の頭は空になるのに、ほんっとに不愉快だ。



『お前が最後に見たのはいつだ』

「一時間三分前に寮を出た。教室に向かったはず」

『確認しよう』



 火音はいつも月火が教室に行く道を辿る。


 一時間も前だ。上から他人の妖力や感情が充満して、足元は虫や死骸で埋め尽くされ月火の足取りなんて分からない。




『……途中で消えてる』

「は?」

『職員室前の階段上の廊下途中で消えてる。階段のカメラには映ってない』



 ちょうど火音がいる場所。

 前にも階段にも行ってないなら、何らかの理由で窓から外に降りたか。いやここの突き当たりが教室、教室の奥が校庭だ。窓は片方、そっちに行っても何もない。ましてや怪異が現れれば鬼互(おにたが)が気付く。



 階段の窓から降りたら必ず高性能防犯カメラに映るし、避けることも可能だがわざわざ天井スレスレまで飛ぶ必要はない。月火ならそんな筋力もないだろう。妖力強化したなら狐が気付いて火音に知らせる。


 妖心術や身体強化をした場合も不安がりな狐ならすぐに知らせるだろう。となれば、普通の行動して忽然と消えたか。




「……黒葉、誘拐された場合、反応するか?」

「誘拐?って……主様が怖かったりしたら、怒るけど……」

「寝たまま連れ去られた場合は?」

「……分からない」



 妖心術の類なら、あるいは。


 怪異はカメラに映らない。妖心は映るが、妖心術は妖力が人に与える幻覚だ。カメラには映らない。



「麗蘭、どうやって消えてる?」

『カメラとカメラの間を狙われて……』

「右側の窓映ってるカメラは?」

『ある。でも映ってないぞ?』

「誰も?」

『誰も』


 ビンゴかな。





 頭が回ってきた。月火の思考は微妙。でも、何かはある。



『火音、どう……』

「何となく状況は分かった。じゃ」

「火音、白葉が……」








 職員室に降りると、緋紗寧と景と水虎、火光と月火除く一年ズが立っていた。



「火音! 月火見付けた?」

「検討はついた。緋紗寧手伝え」

「いいけど。何すんの?」

「神通力で月火のいる空間に移動する」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ