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妖神学園 改正版  作者: 戯伽
1年生
61/103

61.母

「俺、ほんとに実子?」




 火音と母の和桜(なぎさ)の話し合いで、意を決した火音が恐る恐るそう聞いた。



 和桜は頬に手を当てると、こてんと首を傾げる。




「ううん、別の家の子」



 火音の頭と月火の頭に少しズレた衝撃が走って、火音はやっぱりかとうずくまる。

 月火からはやっぱりってなんだとかふざけんなこの野郎とか流れ込んでくるが、一旦無視。




「双子なん?」

「うん、同じ顔のお兄さんおるよ」

「……なんでずっと黙ってた?」

「いや昔何回か言うたやん。あんたにはもう一人お母さんおってお兄さんもいるんやよーって」

「………………それそういう意味かッ!」



 てっきりもう一人の親は父の妹の智里(ちさと)、歳の離れた姉の夫を兄と言っているのかとばかり思っていた。

 あぁ、なるほどね。



「血繋がってないって言ってほしかった」

「血より濃いもので繋がってるで! 時間と愛で!」

「うるせぇ。……ネットの動画で火神に子供を一人取られたって言う人のまとめがあって。公開してない誕生日とかまで知ってたからなんでだろうって思ってて」

「……本物のお母さんね、あんた産んだ時十六やったんよ。父親不明、数年男の人と交際もない。子供が妖輩やって分かって、愛知から東京に来て。必死で御三家回って預けたんがよりにもよってうちやってん。聞いて泣きそうになったわ」



 母親は父親不明のまま妊娠、ほぼ同い歳の水虎が調べた結果、父親は元彼の執念による怪異であろうと断定された。



 当日はまだ子供だった水虎では匿うことはできず、先代が亡くなり荒れていた神々にも断られ、助けたのは火神。


 母親はボロボロで、妖力の多い次男を火神に預け、就職先が決まり頼れるところが見付かったら迎えに来ると。だから、その子には母と兄のことは絶対伝えてと言われ和桜が預かった。




「でも全然迎えに来んし、もう忘れてんのかなと思ったり。今さら来ても火音を託児やとは思えんし」

「……住所とか名前は分からんの?」

「名前は知ってるで、双子(ふたば)(けい)さん」

「火音ってのも偽名」

「火音は火音や! 火音と緋紗寧(ひさね)君!」

「本人から聞いた?」

「……緋火(あかび)さんから。あの人ヤバいやん……」



 膝立ちになった和桜はすとんと腰を落とし、唖然とした。

 火音は額を押え、溜め息をつく。



 興味半分で動画を見て、本家に飛んでみた。

 動画で実名とされる名前は隠されていたが、本家の方には兄がその緋紗寧(ひさね)という名前、弟が火継(かつぐ)


 苗字から分かるように、上層部長や人事部長、学校長を務める双葉五つ子と同系の血筋。必ず、双子以上が生まれるという血筋。




 頭を抱え、盛大な溜め息をついた。




 大事に育てられなかったことへの納得と、ずっと守ってきた火光となんの繋がりもないこと、御三家の血でもないこと、母親の消息不明、父親は怪異。


 他家の血により年々力が弱くなっていた中で突然月火に並ぶ妖力を持った自分に少し納得したと同時に、あぁやっぱりいらない人間なんだなぁと。

 納得ではないが、そう悟れてしまう何かがある。




「……火光は?」

「火光は私の子や。智里(ちさと)様に取られたけど絶対私の子」

智明(ちあき)が養子なのは俺と関係あんの?」

「あれは智里様が気に入って持って帰ってきてん。私あの子を自分の子やとは思ってない。智里様の子供預かってる気分や」



 上から火里(ひさと)、火音、火光、智明。

 火里とは十幾つ離れているため、火音の当主教育途中で火里夫婦に当主の座が。火里が退くつもりはないと宣言し、火音が月火の寮を見つけたため本来なら火音が継ぐはずだった家督はそのまま火里夫妻が持っている。


 それでも、火音を母親の元に返さないための策略だったのだろうか。

 生後数日で火神に取られたため戸籍は火神にある。病院で産んでいないため親子を証明するものはない。常に物事を天秤にかける月火なら当主として仕事をする火音は火神と思うだろう。火光の容姿を見たら確信に至るだろうが。



 智里は今も火音を当主に押し上げようとしているはずだ。

 あの兄妹は仲がいいから、兄の所業は妹も知っているだろう。知ってなお、それに嬉々として加担する人。




「はぁ…………」



 我慢していた何かが一気に崩壊した気分だ。

 火光を可愛がってきた。唯一仲のいい家族だと思ったから。

 当主を取られてなお当主の仕事はこなしてきた。当主以外の道を知らない、否定され続けた家に必要とされていると思ったから。

 ずっと月火の傍にいた。御三家で、いつか当主になった時に補い合えるように。御三家だから、いてもいいと自己暗示を分かっていながら。



 十二月末に知って、月火に知られないよう隠してきたがもう無理だ。変な誤解を与えないようにやってきたのに、事実と確定してしまった。




 ほんとに不運てか、ただの不幸体質なんだろうな。






 頭を抱え、全てに絶望していると、和桜が傍に寄ってきた。

 火音の頭を撫でて、和桜こそ泣きそうに心配そうな顔をする。



「確かに血は繋がっとらんけど、火音は母さんの子供や。母さんは火音が当主にならんくて良かったと思っとうで。当主になって親子らしさがなくなった神々様を見てきた。もし火神の血を引いてない当主として火音が破門にされたら母さんは神々に怒鳴り込む気がしてた。……だから、当主になる前に話せてよかった。私は先代補佐よりも神々派の娘よりも、火神火音の母親として火音を育ててきたから」



 母は母になって母になる。



 和桜は火音を抱き締めると、最後に抱き締めた頃よりも大きな手を背で感じながら、それでもまだ小さく幼い息子の頭を撫でた。

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