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妖神学園 改正版  作者: 戯伽
1年生
60/103

60.火神へ

 全然眠れなかった夜を明かし、目を開けた。



 真正面で火音を眺めていた月火と目が合う。


 最近は二人で布団を並べて寝ているが、月火は先に起きると度々火音の顔をガン見してくる。




 火音は寝返りを打つと背を向け、あくびをした。あぁ眠い。



 体を起こし、あくびをしながら寝間着を整えた。


 月火も起き上がり、小さくあくびをする。




「……もうちょっと寝といたら?」

「逃げる気ですね」

「行きたくない」

「正直私も気が重い」



 火音は月火の傍に寄ると、行きたくないと嘆きながら月火にのしかかった。

 月火は溜め息をついてそれに同意しながら火音を剥がす。



「八時半には出ますよ」





 二人で青系統の着物と黒い袴を着て、月火は軽く髪をまとめた。


 準備をしてから朝食の用意をする。



 炎夏と玄智は十時頃に火光と学園に帰るらしい。教師は一応今日からだが、火光は初日早々午前休、火音は三日間有給。廻醒に関しては昨日の夜に祖母と両親と妹に引きずられながら帰ってった。




 あくびを噛み殺しながら、ネックレス忘れたなぁと思っていると火音がふらっとやってくる。



 首にネックレスがかけられて、それを留めてもらった。


「ありがとうございます」

「先に謝っとく。ほんとごめん」

「別にいいですよ。火神と火音さんは別物だと思ってますし」



 火音は月火の腰に手を回すと、深く俯いた。



「大丈夫ですか」

「ほんとにやだ。今日確認するけど」

「火音さんを育てた人間に会うのは楽しみですよ。どうやったらここまでひねくれた根暗になるのか聞いてみます」

「反面教師にでも」

「する相手がいればいいんですけどねぇ」

「幼馴染二人のどっちかだろ」

「ですねぇ。澪菜さんの力量チェックと暒夏さんの適任性……旧水神兄弟には長生きしてもらわなくては」










 火音は上がり框にしゃがみ、月火は卵焼きを焼く。

 火使う時は離れるんだから偉いよなぁ。猫だから逃げるだけだろうか。



 そんなことを思っていると、戸が開いた。



「月火、おはよう」

「おはざまーす」

「変なテンションになってるし。おはよ」

「火音先生もおは」

「何しに来た帰省組」



 玄智は炎夏を見上げ、炎夏は玄智の頭を叩いた。



「……僕も、火神行こうと思って」

「これの護衛で俺も」

「……マジすか」

「絶対月火に迷惑かけるし。まぁ月火が黙らせられる力持ってるのは知ってるけど……」

「あぁちょうどいい。炎夏さん、暒夏さんってどこにいます?」

「学園……」

「……まぁいいや。いや〜ラッキーだなぁ」

「指示送れ」

「はぁい」



 火音は立ち上がるとどこかに行き、月火は上機嫌で玉ねぎを刻む。あぁ目に染みる。



 炎夏と玄智は首を傾げて、土間に降りると月火の方に寄った。



「月火、何? ラッキーって」

「ちょうど澪菜さんと現火神当主と火音さんに当主適正のテストをしようと思ってまして。受けるでしょう? 二人とも」

「う、受ける! なんも知らんけど!」

「俺も受ける」

「水虎さん呼んでください。あの方にも受けさせます」

「マジ」

「私も受けます。水明さんは私がやった時に満点取ってました」

「前もあったの?」

「ずっとあるんですよ、幼すぎる人、周囲から見たら不安な人、次男や三男、腐った家の当主に上げる場合はやるんです」




















 火音と一年ズ三人で火神の屋敷に移動する。

 ここから車で一時間半ぐらい、運転は赤城(あかぎ)で。足元にはケースに入った刀が二本。



 ちなみに玄智と炎夏が十分できたのは神々の近くまで逃げてきていたから。いわゆる家出少年的な。





 火神二人は胃を抱え、月火と炎夏は平然とする。




 赤城の弾丸トークを聞きながら、着いたのは神々よりは小さいがそれでも立派な屋敷。ちなみに水神はここからさらに二時間ほどになるので水虎が来るのはもう少しあと。




「……行くの?」

「えいっ」


 月火はインターホンを押し、にこにこと笑う。

 ちなみに月火が持ってきたのはトランク、めっちゃ大荷物。



『はい、火神です』

「はじめまして、月火です」

『少々お待ちください』



 火音は玄智の鍵で扉を開けると中に入った。玄智も気合いを入れたようで、拳を握る。



 奥から出てきたのはここにいる火神二人とは、いやこの人も火神か。二人とは似ても似つかない雰囲気を持った女性。




「あら火音、玄智も。いきなり出ていったかと思えばさっさと帰ってきて」

「お邪魔しますね〜? 時間が足りなさそうなので」

「火音!」



 月火が奥に進もうとしていると、智里(ちさと)がやってきた方からもう一人やってきた。



「玄智もおかえりなさい。お久しぶりです月火様。どうしましょう?」

「とりあえず腐った当主と無能な補佐を。あと一室貸してください。当主適正テストを受けさせます」


 頭を下げた火音の母、和桜(なぎさ)を見て、月火は足を止めた。



「神戸弁は?」


 前会ったのが幼少の頃だが、その時はバリバリの神戸弁で半分何言ってるか分からなかった記憶がある。なのに、今は完全な関東弁、標準語だ。



 月火が少し驚いたように聞くと、和桜は少し口を押えた。



緋火(あかび)様に直せと言われまして……」

「火音さんの気が弱いのはあなた譲りですね」

「はよ行け」

「照れてるんですか?」

「お前の首に手が行きそうで」



 月火は火音に押されながら奥に進み、和桜もそれについてきた。




 和桜の家は完全な神々派だ。それを、当時水神との繋がりが強かった神々と火神との関係性を持つため嫁いだが、まさかこんなことになるなんてな。





 月火が部屋の中に入って行ったので、和桜は火音の袖を掴んだ。



「火音、貴方何しに来たの? 連絡してくれれば智里様避けられたのに」

「その喋り方変」



 火音は部屋の中に入ると足元に出してもらった黒葉を抱き上げ、月火に資料を貰った。



 月火が昼食を作っている間に指示を貰いながら一応現代風には直したが。

 ま、ここに当主の手本たる少女がいるので大丈夫か。




「簡単すぎん?」

「母親の気遣いをバッサリ切らないであげてください。可哀想に」

「お前は母親を気遣いすぎ」

「なんですか母親じゃないって」

「帰って話す。これ俺も受けんの?」

「どちらでも。私はやります」

「満点取ったらカンニング扱いにされるわ。終わったら来る」

「はぁい」



 火音は和桜を呼んで別室に行き、月火は机に紙を人数分並べた。



 かなり緩いのでまぁ50は取ってほしい。ちなみに200点満点。



「月火、澪菜連れてきた」

「兄さん何やるの……?」

「テスト受けるだけ」



 玄智は澪菜を押すと、その隣に座った。



「水虎様も着いたって」

「優秀ですねぇ」



 月火たちとほぼ同時になるよう早くに出たな。






 炎夏と玄智が水虎を連れてきて、水虎は荷物を下ろすとすぐに炎夏と玄智の間に座った。



「二時間たっぷり悩んでください。タイマーないのでスマホです。カンニング分かった時点で当主の資格は消えるので」

「赤点ある?」

「ありません。時間の無駄です」

「マジ?」

「火神お二人に関しては教育はこれからですし炎夏さんはある程度取れると思いますよ。進捗は水明さんから聞いているので」

「そこまで知ってんのか……」

「ではよーい!」



 月火はタイマーを開始すると、それを机に置いた。



 初めに全体の問題文をざっと読んで、出た答えを暗記して順に書いていく。

 はい、終わり。



 確認をしてから、鉛筆を置いて正座から体育座りになった。


 火音の方に思考を飛ばす。










 月火の思考が止まったのを確認し、少し視線を上げた。




 和桜(なぎさ)の部屋に連れてこられ向かい合って座っているが、和桜は一言も離さない。



 部屋は本棚が三つあって、精神疾患や発達障害、潔癖症、虐待によるなんやらと言うのが並んでいた。その中で、鬱や躁鬱もある。




「……話とは?」

「月火様のテスト終わった?」

「うん……」

「そう。じゃ、話していいよ。もうなんでも聞いて。全部答えるから」

「え俺?」

「……聞きたいことがあったんやないの? 残念、自信あったのに。じゃあ母さんが聞こうかな。火音今月火様と同居しとるんやろ? どんな関係なん? 彼女おるん?」

「そーゆー話……」

「二十二やろ! 恋人いない歴=年齢!」

「作る気ない」

「気になってる子とかおらんのか。跡継ぎいるからって安心しやがって。玄智が結婚せんかったらあんた月火様の男の妾としてやるからな!」


 ビシッと指をさされ、母の相変わらずの滅茶苦茶な言い分に呆れた。あの純粋な月火ちゃんが妾とか作るわけないだろ。



「それが嫌なら母さんにはよ彼女の顔でも見せて。あんたが唯一まともに育ってくれたんやから」

「唯一て……育ってもないだろ」

「なにをー。ヒモでもない限り大丈夫や」



 一瞬火音が動揺して目を瞬くと、いつの間にか母が下から覗き込んできていた。



「ヒモ、やっとらんやろ?」

「してません払ってます。月火の言いなりです」

「あんたはそれぐらいがええわ。自己欲がないに等しいから無償で分け与えてくれる人が必要」



 和桜は元の場所に戻っていき、火音はホッと安心した。この人ほんとに怖い。



 和桜に視線を移し、少し逸らすと和桜は少し困ったような笑みを浮かべた。



「どうしたん? 虐待の慰謝料取りたいなら証拠山ほど残ってるで?」

「いや、それは……いい……かな……?」

「火光様に貢げるやろ」

「……そのことで、話があって」



 少しピリッとした空気に変わって、火音は床に手を突くと深く深呼吸をした。





「……俺、ほんとに実子?」

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