53.初詣
車に乗って、月火と火音が一番後ろに二人、二列目に火光と廻醒、運転手が玄寧と助手席に水月で。
「あそうだ。廻醒さんはいこれ」
「あ、やったー」
「遅くなりました」
水月は興味なさそう。火光はイヤホンを付けてパソコンで仕事中、玄寧は嬉々として反応する。
「兄ちゃん何貰ったん?」
「あ、ボールペンだ」
「教師の必需品なので」
「やった、ありがと」
月火は話の途中でイヤホンを付けると、手を一枚挟んで火音の膝に寝転がって眠り始め、火音は月火が持ってきたショールをかける。
月火が寝たせいで火音も眠い。
初詣の神社に突くと、火音は月火の肩を揺すった。
「起きろ」
「……なんかめっちゃ浮腫んでません?」
「そう?」
「マスクください」
月火は火音にマスクを貰うと車を降りた。
水月は月火の前髪を軽く整える。
「眠いなら車で待っとく? 初日の出までもたないよ」
「我慢するのはいいんですけど……なんせ頭の中で眠い眠い言われるのがうるさくて」
「誰だろうな」
月火は顔を押えながら火音の腕をつねり、スマホでメイク崩れがないかを確認した。自社製品優秀。
「……あ、除夜の鐘聞いてない」
「誰かが鳴らすでしょ。行くよ」
「待って。そろそろだと思うんだけど」
「あここなの?」
月火が兄二人の会話に首を傾げていると、なんか見た事ある車が来た。
着いた瞬間炎夏と玄智が降りてきて、月火に飛び付く。
「あけおめことよろー!」
「いぇーいびじーん!」
「元気ですねぇ」
「えめっちゃ浮腫んでんね」
「やっぱそうですよね!?」
玄智が月火の顔をマッサージしている間に、車から降りてきた水虎がやってきた。ほんとに辛そう。
「お疲れ様です……」
「大丈夫?」
「寝てない……!」
「車で待っといたら? 子供たち見とくよ。運転危ないし」
「でも……」
「大丈夫。教師三人もいるから」
水虎の視線につられ、炎夏と玄智もそちらを見た。
「あ、根暗せんせーだ」
「久しぶりー廻醒」
「よー。お前身長抜かしやがって」
「ども」
廻醒が炎夏の頬をさしていると、玄智が廻醒の前に立った。
「166」
「まだなんにも言ってないッ!」
「負けたな」
「ちょっと伸びたんだよ!?」
玄智は月火と慰めるのか貶すのかからかってくる炎夏に文句を言いながら、むっすーと不貞腐れた顔をした。
廻醒は首を傾げる。
「何……?」
「身長コンプレックスが自尊心保とうとしてんの」
「火音先生うるさい!」
玄智は耳を塞ぐと半泣きで月火に助けを求め、未だ150後半にもなれていない月火は玄智の顔面に手を置いた。
「太れ」
「絞め殺すぞ」
「年明けから物騒だなー。意味をなさない殺害予告」
「あれやった?」
「私終わってるところでしたので」
「あーうるせ」
話題が急転換した三人に大人は置いてけぼりをくらい、火音に通訳を頼む。が、火音は全く興味なさそうに上を見上げていた。
「興味を持て通訳ッ!」
「いやぁ、これ初日の出見えんのかなぁと思って」
皆で見上げると、空には分厚い雲がかかっていた。
月火の部屋で着付けをしている時は綺麗な月明かりが差していたのだが。
「雨?」
「雨雲じゃないみたいですが……」
「まぁ一時間前になってから考えよーぜ。屋敷でも見えるんだし」
「だね〜」
特に気にした様子もなく、一年三人は歩き出した。
火光は一年二人を見て、月火は火音を、水月は意外と人気の廻醒を。玄寧は消えた。
「参拝初めてでしょう」
「昔何回かやった事ある。初等部の頃は任務帰りに初詣だったし」
「意外。初詣とかやるんですね」
「やりたくはねぇけどな」
「お師匠様に振り回されて?」
「まんま」
月火は十円を親指で弾いて回しながら列を進む。
火音の分も月火が投げるので、115円を二セット。
「なんにも起こりませんよーに」
「……え神様が反応するとかあんのかな」
「さぁ? でもそうなったら面白いですね」
「マスク付けといてよかった……」
十分ほど並んでいると賽銭箱が見えてきて、月火と火音は隣に並んだ。
賽銭を投げ、お祈りをする。
その最中に月火はズキッと心臓が痛み、火音からもそれが伝わってきた。
『主様、神様がいる』
「神社か。久しいな」
「出てくんな……!」
小さなまま肩に乗って出てきた黒葉と白葉、火音の腕を掴みながら出てきた雷神を消し、二人でさっさと列から抜けた。
「ねぇ何しました?」
「知らん。お前だろ」
「なんにもしてませんよ」
「俺がやるわけねぇだろ。面白いつってたじゃん」
「まさかこうなるとは思わないでしょう!」
月火が怒っていると、炎夏と玄智と火光がやってきた。
「月火、どうしたの? 喧嘩?」
「またかよ」
「なんでもないです」
脈飛んで失神するかと思った。
動いて頻脈になっている最中での激痛はアドレナリンやらであぁ来たなぐらいにしか思わないが、通常時だとこんな痛いのか。心臓に穴空いたかと思った。
「……火音さん大丈夫ですか」
「飛んだ気がする」
「妖心のせい?」
「そんな感じはなかったけど」
月火は火音を見上げ、火音は自分の手を開いたり握ったりして異常がないことを確認する。
二人の会話に三人が首を傾げていると、水月と廻醒も戻ってきた。
「ツキちゃーん、俳優いたでー」
「ツキちゃん!? ツキちゃんって何!?」
「あだ名」
「可愛い!」
玄智は月火に抱き着き、月火はその勢いに押される。
炎夏は火光を掴むとそれを見に行き、皆でそれについて行った。
「高身長っていいですね。人混みで頭出るの」
「下見たら虫溜りだからなぁ」
「炎夏さんぐらいの身長なら絶対人混みには行きませんね」
「うん無理!」
皆が円の外で炎夏と引っ張られる火光を待っていると、俳優を見終わったファンが今度玄智の方に流れてきた。
巻き添えで月火と火音も、廻醒と水月も囲まれ。
「あーあこうなった。車行く」
「廻醒鍵!」
「はーい」
月火は山なりに飛んできた鍵を取ると火音に渡し、火音は女子を無視すると車に帰って行った。
月火と玄智も逃げ、上手く丸め込んで落ち着いた廻醒と共に出店を回る。
「あの人声優なんだって。炎夏が反応するわけだ」
「オタク魂だ。牛串三本」
「俺五本」
「めっちゃ食うじゃん……」
「肉好き」
月火と廻醒はよく似た姿で牛串にかぶりつき、玄智はその写真を撮った。
二人は牛串や綿菓子、りんご飴、焼きそばとたこ焼きも食べ、廻醒は月火より多く食べる。
ふと玄智が足を止めたかと思えば、廻醒の方に振り返った。唐揚げを咥えると、廻醒の脇下を触る。
「え何。何何何」
「うるさい」
袴の紐上までなぞると、そこから可能性でボディラインをなぞった。
玄智の特殊能力、みぞおちより上の体の形で細さや骨格が分かる。
「……は、死ねよ」
「だから筋肉の付けすぎなんだって」
「最近筋トレ減らしてんの!」
「火音さんにおすすめ聞いてみたら?」
「そーする……」
「今のままでも十分モテるのに」
「ギャップが必要なの! この顔で長身ていう!」
「その顔で毒舌っていう超ギャップがあるでしょ」




